第三十九話・おっさんの不幸の連鎖
「あははは。さっきは参っちゃったねぇ♪まさか助けた美女二人が、
王家の血筋のものだったなんてさ♪」
俺が高所恐怖症であたふたしているのをよそに、ルコールが呑気な顔で
ケタケタと笑いながら、先程の状況を語っている。
「全然笑いごとじゃねぇっていうの!ったく...こんな事になるんだったら、
助けなきゃよかった......とまでは、まぁ言わないけどさっ!」
もし助けてなかったら、あの美人さんとあの生意気娘、きっと亡きモノか、
慰みモノにさせていた可能性が大だろうしな。
でも勘違いとはいえ、あの仕打ちはいくらなんでもないよな......。
俺は渋い表情をしながら先程のいざこざを思い出し、愚痴をこぼす。
「しかし何か俺って、事ある毎についていない気がするぞ......」
だってさ、勇者召喚されたと思えば、勝手に召喚した分際で中年だ、老害だと
下されて迫害されるし...
やっとあの城を脱出できたと思えば、落とし穴に落ちるわ、ドラゴンと
遭遇するわ...
そしてせっかく盗賊から助けてあげたっていうのに、その恩を仇と返して
拘束してこようとしてくるし...
それから逃げる為に高所恐怖症だっていうのに、こんな上空高くを飛ばされる
羽目になるし...
もう、なんだよこれっ!?
ここまで不幸が続くと、俺のこの先行きが本当に不安全開なんですけどっ!?
「ハァ...大丈夫かな...」
今まで自分に振りかかった数々の火の粉を思い出すと、この先も何か嫌な
予感しか浮かんでこない事に、俺は渋い顔をしながら嘆息を洩らす。
そんな俺の心証など、全く知らないルコールが、
「それでこれからどうするの、レンヤ?やっぱり予定通り、今からリタイの町に
移動しちゃう?」
ニコニコ顔で次の行動予定を聞いてくる。
「う~ん、そうだな...。あの城から追っ手が来るとしても、まだまだ時間は
かかると思うし...」
何せ、あの城から脱出する際に、あの場にいた殆どの兵士、騎士、神官達を
ボコボコにしてやったからなぁ。
「あ、でも俺と一緒に召喚されたあの勇者達が、俺の討伐へ乗り出して来るかも
しれないな?」
もしあいつらが来るとなったら、かなり厄介だぞ。
あの少年少女って俺と同じ勇者だし、きっと戦闘に特化した、とても性能の良い
チートギフトを貰っているに決まっている。
「それにあの子達と戦う事になったら、やっぱ躊躇してしまうだろうしなぁ......」
「ん?だったら、あたしが代わりにその勇者達を殺っちゃおうか?」
「はは...それはさすがにやめてと言っておくよ。だって、お前のその台詞の
ニュアンス、絶対あの子達の事を跡形もなく消し去りそうだから!」
そんな想像が頭の中に鮮明に映ってくるので、俺はやんわりとルコールに
お断りの言葉を入れるのだった。




