第三十七話・勘違いをどう晴らす?
「あ、合図ってなんだよ!そんな事、ひと言も言ってませんけどぉっ!?」
「ええ!何度も言ったじゃん!「絶対」を何度も連呼してさ!あれって
「殺れ」っていう意図返しだったんだよね?昔、誰かからそう聞いた事が
あるもんっ!」
た、確かに、そんな意志疎通はある事はあるけどさ、
「で、でもね!今回のこれはマジで殺っちゃ駄目だったやつだったのっ!!」
「え...マジで殺っちゃ駄目だったの!?」
「マジで殺っちゃ駄目なやつだったのぉおっ!!」
俺の真面目な言葉に、ルコールのまぶたがパチクリと何度も動きながら、
問うてくるので、俺は静かに頭を縦に小さく振って「そうだ」と同じく、
何度も肯定の答えをルコールへ返す。
「そっか...マジの方だったのか......。こりゃ、すまん事を!たはは!」
「いや、笑い事じゃないからねっ!」
だって完全に敵意丸出しの騎士や兵士が、こっちを睨んでいるんだもん。
「しかし参ったな...。こりゃもう御褒美のチューどころの話じゃなくなって
きているぞ...」
取り敢えず、頑張ってこいつらを説得してみるか?
いいや...それはもう手遅れで無理だろうなぁ。
それじゃ、勇者の名を使ってみるか?
ステータスを見せれば、俺が勇者だってわかるだろうし。
いや...これも駄目だ。
あの城の事もある。ここで勇者を名乗ったら、絶対に何か録でもない事が
起こる予感しかない。
なら、思いきってこいつらと戦うか?
いやいやいや...それこそ駄目なやつだ!
それをやったら、完全にドロ沼へと一直線じゃんっ!
「一番いいのは、皇后様と皇女様から誤解を解いてもらう事なんだけど...
あの将軍って言うのが、ガッチリ二人を守っているからなぁ......」
俺は考えがまとまらないと、溜め息混じりの愚痴をこぼしながら、唯一の
希望であるキサリ皇后様達の乗る馬車へ目線を向けるが、そこには完璧の
防御陣を取っている、将軍とその部下達が見えた。
「ならさ。もういっその事、この場を逃げたらいいじゃない?今の状況って、
この連中の誤解からきている訳なんだし、何も言わないで逃げたとしても、
後できっと皇后達がその誤解を解いてくれると思うんだ!」
「なるほど...お前の言うように、この危機的状況はこいつらの誤解から
きているわけだし、ここを離れさえすれば、後は多分なんとかなるよな!」
ルコールの案に聞き、現状の打開策が見えてきた事に俺は、満面の笑みを
浮かべて安堵する。
「でもどうやって、ここから脱出するつもりだ?」
「それは......こうやって、だよ♪」
「へ!?ちょっと、ルコール!何をする――――ムギュッ!」
ハテナ顔をして脱出方法を聞いてくる俺の身体を、ルコールがニコッと
微笑んだ瞬間、両手でガバッと掴んで自分の懐へと抱き寄せた。




