第二百八十七話・百パー思ってたけどねぇ~♪
「あ!そういえば!なぁ、ルコール。ヒールの魔法ってさ、
HPが減っていなくても発動するのか?」
ヒールの魔法を発動しようとした瞬間、頭の中にこんな
疑問がふと浮かんできたレンヤは、その事をルコールに
訊ねた。
「ふ~む、そうだねぇ~?多分発動するとは思うんだけ
ども...ヒールの魔法が発動したかの確かめはちょいと
難いかも?お、そうだっ!あたし良い考えを思い付い
ちゃったよ♪」
「良い考え?」
「うん、ヒールの効果が出てるかどうか、それを確かめる
のに、うってつけで手っ取り早い一番の方法だと思うよ♪
「へぇ~そんな方法があるんだ?でどんな方法なんだ?」
「くふふぅ~♪それはねぇ...こいつであんたのHPを減らし
ちゃえば良いんだよ♪」
「ちょ!?待て待て待てっ!?な、な、何で手のひらを
俺に向けてワキワキしているのかな―――――ハッ!?
ま、まさかお前!?スス、ストォォォォオオップッ!?
そ、そそ、それは止め―――あいだだだぁぁああっ!?
いだだだだたぁああぁぁぁぁあああああぁあああっ!?
ぎゃいだただぁああぁぁあ――――――っっ!?!?」
ルコールが良い案があると口にすると、右手を前にスッと
突き出し、満面の笑みをニコッと浮かべながらレンヤの
顔面を思いっきりガシッと鷲掴みにしてギリギリと力強く
締め上げていく。
「......うっし。大体これくらいで大丈夫かな?」
ルコールはレンヤの顔面をアイアンクローでしばらく
締め上げた後、レンヤの顔面から右手をパッと放す。
「あいだだあ......あ、危うく意識がぶっ飛んで気絶する
ところだったよ。おいこら、ルコールゥゥウッ!それは
やめろって何度も何度も言ったよなぁぁああああっ!?
くぅうぐ、ぜ、顔中が締め付ける様に痛いぃぃぃいっ!!」
俺はルコールに怒り顔で文句をこぼしながら、痛みを
取れろと顔を高速で摩る。
――――数分後。
「ふう、やっと落ち着いたぜ。ったく...相変わらずの
脳筋やろうだな、お前はっ!まぁ良い...目的のHPを
減らすという目論みを果たしたみたいだしな...コホン!
では改めてヒールの魔法を詠唱しよっとかぁぁあっ!!」
―――すうぅうう!
『癒しの聖なる光ぃい、ヒィィィイィルッ!!』
レンヤが気持ちを落ち着かせた後、ダメージを受けた
顔の前に手のひらを置き、回復魔法ヒールを詠唱して
発動させた。
すると、聖なる光が手のひらの中からドンドン溢れ出し、
顔の周りにその聖なる光が集まりだす。
ドンドン、ドンドン集まりだす。
......あ、あれ!?
なんか、この光...少しおかしくないか!?
な、何でこんな大きな光になっているんだ!?
.....っていうかこの感じ、
「メチャクチャ見覚えがあるんですけどぉぉぉおっ!?」
俺の頭の中で嫌な予感が駆け回っていると、顔を覆って
いた聖なる光が俺から離れ移動し、目映い輝きを放ち
ながら大きな光の球体をドンドン精製していく。
「な、なぁ...ルコールさんや。つかぬ事を聞いちゃうん
だけどさ......ヒ、ヒールってこんな感じの技で正解......
なんだよね?この後、HPを回復するんだよねっ?」
目の前で起こっているデジャヴァ的な現象を見て、俺は
恐る恐るルコールに顔を向け、そんな問いを投げた。
するとルコールはやれやれといった表情をして、首を
何度か左右に振り、
「......いやいや、レンヤさんよ。現実拒否したいのは
分かるよ。けどさ、どこをどう見てもそれ『あれら』と
一緒の現象じゃん?」
ルコールは少し離れた場所にいる、ホノカとユキに目線を
チラッと向ける。
「まあたし的にはこうなるだろうなぁと、薄々...いや、
百パー思っていたけどねぇ~~あははは♪」
そしてルコールは肩を竦めながら、ケラケラ笑いをこぼす。




