第二百八十四話・ヒールとダークネスのギフト・スクロール
「死に去らせぇえいっ!不届き旋盤ものがあぁぁあっ!!」
「ちょっ!?ホ、ホノカ―――のわぁぁあぁあっとっ!?」
レンヤはユキをサッと抱き上げ、ホノカの攻撃を素早く
仰け反り、何とか寸での所で躱す。
「おい、主!なにうえにそいつを庇うのだっ!!」
自分の攻撃が躱された事で軽くが舌打ちを打つホノカが、
不満気なプンプン顔でレンヤ達を見てくる。
「ア、アホか――っ!庇うも何も、避けなきゃ俺も一緒に
斬られていただろうがぁぁあいっ!!」
そんなホノカに俺は目をクワッと大きく見開き、そして
怒る様に説教をする。
「......ふ、何を言うかと思えば。我が主を斬る訳がなかろう
っ!だから安心しろ。そいつだけをキッチリスパッッと叩き
斬るっ!!という訳だからそこを動くのではないぞぉお、
主ぃぃいぃぃいっ!!ダリャァァアァァァ―――ッ!!!」
ホノカは反省の色を全く見せずそう言い放つと、メラメラと
燃え盛る炎を纏わせた大剣をブンッと大きく振りかぶった
体勢で、再びユキとレンヤに向かってジャンプしてきた。
「いやいやいやっ?!その勢い、絶っっ対に俺も一緒に
叩き斬られる勢いぃぃいいぃぃいっ!!」
怒りの形相で斬りかかってくるホノカに、俺は後退りし
つつ表情を青く染めて恐れ戦いていると、
「―――はいはい。ケンカはそこまでねっ!」
「――はぐ!?」
ルコールがやれやれといった表情で、攻撃してくる
ホノカの顔を右手でガシッと鷲掴む。
「ほれ、あんたもレンヤから離れなさいっ!」
「――んにゃ!?」
そして間も入れず、ユキの首根っこを掴み、俺の懐から
ヒョイと取り上げる。
「お、おい!止めるんじゃない、竜女!こいつを殺せない
だろ―――」
「そうっす!ボクだってまだ満足してないっす!だから
邪魔をする――」
「――うふふ♪あたしはねぇ、飯が食・べ・た・い・の♪
だ~か~ら、席にさっさと着きなさい......分かったかな♪」
「「はひぃい!?は、はいぃぃいぃぃいいっ!!!」」
ニコニコ顔から迸る威圧感を放つルコールに、ホノカと
ユキがその身を一瞬でブルブル震わせると、了解とばかりに
ビシッと直立し、急ぎ慌てて各々の椅子に早足で帰る。
「ほれ!あんたもそこでボッとしてないで自分の席に着き
なさいっ!」
「イ、イエッサァァアッ!!」
ニコニコした、然れど瞳の奥が全く笑っていない笑顔の
表情で自分の席に座れとお願いしてくるルコールに気絶
レベルでビビった俺は、了解と敬礼した後、ホノカとユキ
同様、自分の椅子に大慌てで座る。
「―――おっと、そうそう忘れる所だったっす。そういえば
おじさんあの魔法部隊とかいう連中からこれを貰ったから
渡しとくっすねぇ♪」
クルッと振り返りユキがそう言うと、懐から白いリボンで
括られたグルグル巻きにされた羊皮を取り出してレンヤに
手渡した。
「ん?魔法部隊から?......!?こ、こいつは!?これって
もしかして魔法を習得出来る【ギフト・スクロール】じゃ
ないのかっ?」
「そうみたいっすよ!」
「おお!マジでかぁあっ!?でかしたぁぁあ、ユキッ!」
レンヤがご機嫌全開の笑顔で、ユキの頭をガシガシ撫でる。
「うへへ♪あ、因みにそれ【ヒール】の魔法を習得する事
が出来ちゃうギフト・スクロールらしいっすよ?」
「ヒ、ヒール!?ヒールて、あの定番の回復魔法の事か!」
「何が定番かは知らないっすが、そうっすね。精霊界で
お世話になっていたヒール姉が回復属性だったっすから、
多分その認識で合っていると思うっすよ?」
「せ、精霊界!?」
ま、前も出たな、その精霊界っていうパワーキーワード。
「な、なぁ、ユキ。その精霊界っていうのは、一体なん
なん――――」
「――――ズ、ズルいぞぉぉぉお、白いのぉぉぉおっ!!
貴様ばかり主から褒められよってえぇぇぇええっ!!」
レンヤが精霊界の事をユキに聞こうとするが、だがしかし
ホノカの猛烈抗議の言葉によって遮られて打ち消される。
「お、おい、アーニャよ!お前、何かしらの魔法を習得
出来るギフト・スクロールを持っておらぬかっ!!」
ホノカが焦り顔で横にいたアーニャに、魔法のギフト・
スクロールを持っていないかと聞いてくる。
「え?魔法を習得出来るギフト・スクロール...ですか?
でしたら今回の旅でわたしを治す為に入手したていう
ギフト・スクロールが船の宝室の中にありましたわよね、
お姉様?」
「ええ。回復系の魔法や回復系のアイテムが駄目でした
ので、ならば精神を操る魔法だったらと思い入手した
【ダークネス】という闇系の魔法を習得する事の出来る
ギフト・スクロールがこの船の宝を保管しておく部屋に
置いてありますわ!」
アーニャの言葉にミナルがそう答える。




