第二百八十話・レンヤの隠しギフト?
「......なるほど、そういう事でしたか。まさかオークションで噂されて
いたアルティメットポーションの持ち主がレンヤ様でしたとは......」
レンヤから簡素ながらも、アーニャに起ている事情を聞いたミナルは、
驚きの表情をこぼす。
「あはは。ま、まぁですが知っての通り、結果的にオークションへの出品は
お流れになってしまったんですけどね。このアイテムは大事に取って置いた
方が良いとルコールに進言されてしまいまして」
「それはルコール様の言う通りですわよ、レンヤ様。アルティメット
ポーションという物は、希少なアイテムの中でも更に群を抜いて希少な
アイテムなのです。ですからアルティメットポーションの噂を聞けば、
例えその噂が真実味ない話だろうとも、その場所が例え危険とされる
場所であろうとも、アルティメットポーションを欲しい人々が我先にと
動くのですから!」
レンヤの言葉に対し、ルコールの助言は至極当然な助言ですと矢継ぎ早の
口調でミナルが説明していく。
「マ、マジですか......そ、それほどまでに希少なアイテムなんですね、
アルティメットポーションって......」
ルコールやギルマス。それにアーニャちゃんから、そんな感じの情報を
それとなく聞いてはいたけれども、おもやそこまでとはな。
「はい。ですからアルティメットポーションを手に入れる為には、先程の
説明の通り、誰よりも早く誰よりも臨機応変な行動で動かないと手に
入れる事が難しいんですよ。だというのに、そんな希少なアイテムを
見知らずのアーニャに使っていただけるなんて......」
「い、いえいえ!ミナルお嬢様がそこまで申し訳なさそうにする必要は
ございませんよ。お、俺がアーニャちゃんを助けたいと思い、俺の判断で
アルティメットポーションを使ったんですから!」
「い、いいえ!そういう訳にはいきませんわ、レンヤ様!こんな凄い施しを
受けたというのに、気にしないなんて事...王家の者として出来る訳ないでは
ありませんかっ!」
「そ、そうだよ、レンヤ様!ミナルお姉様の言う通りだよ!こんな感謝で
大きな恩を気にしないでは済ませられないよっ!」
「い、いやいや!ほ、本当!マジの本当に気にしないで良いですからっ!」
心の底から本当に申し訳ないという表情で頭を下げてくるミナルお嬢様と、
そしてそれに続くアーニャちゃんに、俺は慌て口調で自分の判断だから
気にしないでいいと諭す。
「で、ですが!」
「ホ、ホントホント!本気の本当に気にしないでいいですからお二人ともっ!
そ、そういう訳ですので......もうそこら辺でその土下座、おやめになられて
いただいてもよろしいでしょうかね......」
......そうなのだ。
先程ミナルお嬢様が食事室に戻って来てアーニャちゃんに起きた事情を
聞くや否や、勢い良く両手と両膝を床にバンと突き付けて平伏す様に
顔を深々と下げて俺に向かって土下座をしてきたのだ。
更にそれを見たアーニャちゃんも慌ててミナルお嬢様の横に移動すると、
同じ様に両手と両膝を床に突けて俺に向かって深々と頭を下げてきた。
そして未だに二人は土下座をやめず、その体勢で俺と会話をしていたのだ。
「お、俺の事を本当に恩人と思うのでしたら、取り敢えず、その土下座は
やめて下さい!平民のおっさんとしては、王族...まして女性二人に土下座を
させているポーズにはとても耐えられませんのでっ!」
「い、いいえ、そういう訳にはいきません!」
「そうだよ、レンヤ様!それではわたしのこの感謝の気持ちが......!」
「そ、そう言わずに、俺に恩を感じてというのなら、何卒今すぐ土下座を
やめて下さいませっ!お、お願い致しますぅううぅぅうっ!!!」
「そ、そうですね、レンヤ様をこれ以上困らせては、不義理も良い所ですね。
分かりました......アーニャ」
「う、うん」
ミナルがレンヤの嘆願を聞き入れると、アーニャと一緒に土下座をやめて
立ち上がる。
「く...お、俺はさ。姉妹二人の織り成す感動のハグを見ながら、心の底から
良かった!本当に良かったという表情でホッコリとしかったというのに、
まさか土下座を敢行されようとはな......」
「くくく。いやしっかしホント、レンヤへの感謝の意ってば、毎度毎度
土下座のオンパレードだよねぇ~♪もしかしたらレンヤには土下座関係の
隠しギフトがあったりして♪」
「―――なっ!?」
い、いやいや。
そんなギフト、あるはずが......
......な、ないよね、そんなギフト。
「お、おい、主よ。そろそろその辺で話を切り上げないか?折角の料理が
冷めてしまうぞ?」
土下座ギフトの存在という可能性に、俺は訝しむ顔で眉をヒクヒクさせて
いると、ホノカが俺の袖を軽く数回引っ張ってきて、テーブル上の料理を
指差す。
「おっと!そうだったそうだった。アーニャちゃんご自慢する肉料理だ。
熱い内にさっさと食べなきゃな!ほらミナルお嬢様アーニャちゃんも自分の
席について料理を食べましょうよ!」
ハッと我に返った俺は、ミナルお嬢様とアーニャちゃんに熱い内に料理を
食べましょうと促すと、
「そうですね。この肉料理は熱い内に食べるのが美味しいですから!」
アーニャちゃんはニッコリ顔で早足で自分の席へと戻って行く。
「ミナルお嬢様もアーニャちゃんも自分の席に座ったね。コホン!では
改めて...いただきま~すっ!」
ミナルお嬢様やアーニャちゃんが席についた事を確認すると、俺は両手を
パンと軽く叩き合わせ、そしてその後フォークとナイフを手に持ちテーブル
の上に敷き並べられているアーニャご自慢の肉料理を口にしていく。




