第二百七十八話・あんた、あれを使っちゃったのっ!?
「おや、レンヤじゃん?その感じからすると具合の方はもうすっかり
良くなったみたいだね?」
食事室に入ってきたレンヤ一行に気づいたルコールはクルッと身体を
振り向けて声をかける。
「はは、まぁ何とかな。そんな事よりも腹が減ってここに来たんだがよ、
食事って一体どうやって注文するんだ、ルコール?」
そんなルコールに俺はお腹を手を擦りつつ食事の注文ルールを問うと、
「あ、それはわたしが説明しますね!えっと、それはですね、レンヤ様。
食べたい物をそこのテーブルに置いてある紙に書き、それを隣の厨房室に
いるコックさんに渡すんですよ♪」
ルコールが答える前に、アーニャが代わりにレンヤの問いに答えを返す。
「なるほど...これに書くんだね。王家の船っていうからさ、てっきり
マイクとかでここから厨房に直接伝達するのかと思ったけど、意外に
アナログな仕組みなんだな。んじゃ早速、食べたい物を書くとするかな♪」
俺は何を食べようかと考えてながら、テーブルに置いてある注文紙を
手にサッと取る。
そして、
「ホノカとアーニャちゃんは何を食べるか、もう決めた?」
ホノカとアーニャちゃんに何を食べたいか、その注文品を聞く。
「我の食べたい物か?我は主と一緒でいいぞ!」
「わたしもです!わたしもレンヤ様と一緒が良いですわ!」
すると、ホノカもアーニャもレンヤと一緒の物で良いと口にする。
「俺と同じものか......」
俺的には、辛い系を食べたい気分だったけど、
しかし二人の事を考慮するとそれは却下の方向か......だとすると。
......オーソドックスに肉料理系...かな?
「二人が俺に合わせるって言うなら、アーニャちゃんの国で一番ポピュラーな
肉料理を注文してみようかな?アーニャちゃんがお奨めする肉料理って何か
あるかい?」
「わ、わたしのお奨めですか?う~んそうですね...わたしの国でレンヤ様に
お奨め出来る肉料理といえば.......はい!でしたら、あれがいいですわねっ!」
自分の国でレンヤにお奨め出来る肉料理は何か、アーニャは首を傾げて
しばらく思考した後、あれしかないと手のひらをポンと叩く。
そしてアーニャがキラキラ瞳をレンヤに向け、
「ではレンヤ様はお客様ですので、わたしがその肉料理を厨房に注文しに
行ってきますねっ!」
レンヤにそう告げた後、足取り軽く厨房のある場所に向かってスタタと
駆けて行く。
「あ!ちょっと、アーニャちゃん!?そんなスピードで走るとさっきの
ホノカみたいに転けちゃうから、もうちょっとスピードを落として安全に
行かなきゃ駄目だぞ~!」
「はぁあ~~い、わかりましたぁぁあ~~~♪」
アーニャがレンヤの忠告に耳を傾けると、走るスピードを落とし、足元に
注意しながら改めて厨房のある部屋へと駆けて行った。
「ははは♪アーニャちゃん、殆どの時間をベッドで過ごしていたらしいから、
元気に駆けられるのが嬉しいんだろうなぁ♪」
元気に駆けて行くアーニャを見て、レンヤがホッコリしていると、
「あ、主よ!さ、さっきのあれはだな、転けたわけではないぞ!あ、あれは
な...そう!足の筋肉が吊っただけだ!だ、だから決して!決~して転んだの
ではないのだっ!」
ホノカが懸命な口調で先程転んだ言い訳をしてくる。
「あはは。はいはい♪」
「うう......」
そんな可愛い言い訳をしてくるホノカにレンヤがニコッと笑顔を見せると、
ホノカの頭上にポンと手のひらを置き、そしてゆっくりと頭を撫でていく。
そんな俺達を横で眺めていたルコールが、
「ねぇ、レンヤ。随分親しい感じだったけど、あの子は一体誰なのよ?
何かあの子、ミナルの奴にとっても似ていた気がするけど?」
さっき食事室から出ていった人物...アーニャちゃんは一体誰かなのと
聞いてくるので、
「アーニャちゃんの事かい?そりゃあ似てて当然だよ。だってあの子、
ミナルお嬢様の妹さんだしね!」
俺はアーニャちゃんが誰かをルコールに教える。
「え?ミナルの妹?だって、ミナルの妹は......」
「ああ、お前もアーニャちゃんの置かれていた事情は聞いているんだな?」
「うん。さっきミナルから聞いた。でも何であの子、完全回復しているのよ?
ミナルの話じゃ、かなりの重症状態の筈なんだけど?」
「ああそれね。それはな、俺がアルティメットポーションを使ってアーニャ
ちゃんの重症を治しちゃったからさ!」
「はああぁあっ!ア、アルティメットポーションを使ったぁぁぁあっ!?
あんた、あれをあの子に使っちゃったのっ!?」
レンヤがアルティメットポーションをアーニャに使用した事を告げると、
ルコールは嘘でしょという表情で目を丸くして唖然としてしまう。




