第二百七十四話・魔法擬人達の生まれた場所
「ひ...光が...瞳の奥の真っ黒な景色が......真っ白な景色へと変わっていく!?
ま、真っ暗だった、どこに目線を動かしても真っ暗で暗黒だったわたしの
両目に光が......光が.......ああ、ああぁぁ!」
まぶたの上から射し込んでくる光を感じる度に、アーニャは歓喜に震えて、
そして涙がポロポロと落ちる。
そしてアーニャはしばらく振りの風景を両目に見せるべく、ゆっくりと
目を開けていく。
「あ!待つのだ、アーニャ。いきなり目を開けるのは危険だ。しばらく光を
感じていなかった目にはダメージが大きい!そういう訳だ、主。この部屋の
カーテンを閉めるのだ!」
目を開けようとするアーニャの目をホノカが慌てて遮りとめると、レンヤに
部屋のカーテンを閉めるよう指示する。
「お、おう!わ、わかった!カーテンだな!」
そしてレンヤはホノカに言われた通り、部屋にある窓のカーテンを急ぎ
慌てて次々と締めていく。
「......これでよしっと!しかしホノカ、よくそんな博識な事を知ってたな?」
「ふ。随分昔の事なのだが、サン・ライトの奴がそういった話をしていたの
を、ふと思い出したのだ!」
「サン・ライト?」
「サン・ライトというのは、光の魔法擬人だぞ、主!」
レンヤの疑問に、ホノカが答えを返す。
「ほへぇ~光の魔法擬人かぁ~♪」
.........ん?
「あ、あれ?お、前達っていうか、魔法擬人化っていうのは、その場で
誕生するんじゃないのか?」
「いや、それは間違った情報だぞ、主。我々魔法擬人は『精霊界』という
場所に居ん......おっと!こんな話よりも、主よ。アーニャの目をそろそろ
開けさせても大丈夫だと思うぞ?」
レンヤが更なる疑問をホノカに問おうとしたその時、アーニャの目が
順応した事を伝えてくる。
「え!そ、そっか、わかった!」
ホノカの話に出た『精霊界』というワードがめっちゃ気になる所では
あったが、しかし今はこっちの方を最優先するべきと動く。
「......コホン!じゃ、じゃあそういう事ですので、アーニャお嬢様。
ゆっくりゆっくりと目を開けて見て下さい!」
「は、はい。で、では......」
レンヤの言葉に、アーニャは気を引き締めながら、静かに慎重にと
まぶたを開いていく。
「あ、ああ、あああぁぁ......こ、これは...み、見えます!見えてきますっ!
わ、わたしの左目が...右目が......風景を捉えて映し出していますわっ!」
瞳に映ってくる久しい世の風景に、アーニャはウルウルと瞳を潤ませて
感涙に浸っている。
「ふふ。それは良かったですね、アーニャお嬢様!」
「そ、そのお声は......もしかして、あなた様がレンヤ様ですね!」
「はい。草臥れたしがないおっさんで大変ガッカリしたでしょうが、
私がレンヤですよ、アーニャお嬢様♪」
俺に気づいたアーニャお嬢様に、ニコッと微笑んでそう答える。
「いえいえ、トンでもございません!とても素敵で......格好良いナイスな
おじ様ですわっ!」
「フ...我の主なのだぞ!素敵で格好良くてナイスガイなのは当然至極で
あろうがっ!」
レンヤの発言を否定する様に頭を左右に振って、瞳をキラキラと輝かせて
いるアーニャに、ホノカがフン反り返って鼻息をフンスと鳴らし、当たり前
だというドヤ顔を見せる。
「そ、そのお声?あなたがホノカ様ですね!」
「おう!我こそが最強魔法擬人化と謳われし、ホノカ・フレイ・シロカワ
だぞっ!」
そんなアーニャの問いに、ホノカは先程よりもドヤ顔でフン反り返って
そうだと返事をアーニャに返す。




