第二百五十九話・勝手に召喚
「おっと!そうだった、そうだった!レンヤがいたのをつい忘れてたよ。
メンゴ、メンゴ♪」
ルコールがレンヤの存在に気づくと、ウッカリしてたといわんばかりに
テヘペロをいて苦笑いをこぼす。
「忘れるんじゃねぇよ!落ちたら大惨事なんだぞぉぉぉっ!はぐぅう...っ!?
し、下を見たら具合が悪くなって......きた......うぐぐ......」
下に目線を向けた事で頭がフワッとなったレンヤは、その後顔色をドンドン
青白く変えていく。
「おい!そんなとこで吐かないでよねっ!ふう...そんじゃま、レンヤから
吐かれちゃう前に、ちゃっちゃとあいつらの攻撃を無効化するとしますか♪」
『スウゥゥゥ―――竜の......雄叫びいぃぃぃぃいいっ!!』
ルコールは大きく息を吸い込んだ後、口からカッと開くと、稲光が迸る
衝撃波を前方に発射する。
すると襲いかかってきた魔法攻撃を全て掻き消した。
「――へ!?な、なんだ、今の技は!?」
「あ、あの魔法攻撃を...す、全て掻き消した......というのかっ!?」
「う、嘘だろ!?お、俺のありったけの魔力を込めた一撃だったんだぞ!?」
「お、俺だってそうさ!だ、だというのに、それをあんな衝撃波程度で!?」
ご自慢の魔法が呆気なく掻き消された事に、魔法部隊が目を大きく見開き、
信じられないといった表情で喫驚してしまう。
「く、狼狽えるなっ!つ、次だっ!次の魔法部隊達、スタンバイしろっ!!」
「ハッ!」
「りょ、了解です!」
「任務遂行しますっ!」
隊長の号令と同時に、先行の魔法部隊達が後ろに素早く下がって行き、
後方でスタンバっていた魔法部隊が前へと出てくる。
そして列を連ね、各自が杖を前に次々と突き出して身構えていく。
『い、いくぞ!フレイム・カッターッ!』
『凍てつく氷の刃、アイス・カッターッ!』
『穿け、ストーン・エッジッ!』
杖を構えた魔法部隊が魔法を素早く詠唱すると、ルコール達に向かって
一斉に魔法を放った。
「くくく...我の前でフレイム・カッターを使うか......不届き旋盤なりっ!」
前口上が聞こえると同時にホノカがレンヤの目の前に現れると、炎の大剣で
飛んでくるフレイム・カッターの炎の刃を全てバラバラに斬り刻んだ。
「...ったく~。ボク以外のアイス・カッターをおじさんに見せないで
欲しいんっすけどぉ~~っ!」
次に飛んでくるアイス・カッターの氷の刃の前にユキが苛立った口調で
立ち塞がると、ホノカと同様、氷の大剣で氷の刃を全て粉々に粉砕する。
「―――なっ!?ホ、ホノカ!?ユ、ユキ!?え?な、何で!?な、何で
召喚していないのに登場しちゃってんのっ!?」
「ふっ!みなまで語らせるな、我が主よ。例え呼ばれなくとも、主のピンチと
ならば颯爽と参上仕る......それこそが主と従の心構えなりっ!」
「ボ、ボクは別におじさんと主従の関係じゃないっすけど。で、でも~そこの
赤いのが言う様に、おじさんのピンチにはちゃんと助けてあげるっす!だって、
い、一応ボクも、お、お、おじさんの魔法っすしねぇ~~っ!」
レンヤの問いに対し、ホノカはドヤ顔の表情で、そしてユキは顔中を真っ赤に
染めあげながらあたふたしつつ、レンヤの為に自主的に駆け付けたと口にする。
「そ、そっか...二人ともありがとう......って、言いたいけど!まだ魔法の
攻撃が残っていますよぉぉぉおっ!?」
「ああ...あの尖っただけのショボい岩どもか。それなら安心しろ、我が主っ!」
「そうそう。ボクに抜かりがある訳ないじゃないっすか~♪」
ホノカとユキがそう述べた瞬間、残っていた魔法...ストーン・エッジの
無数の尖った岩礫が炎に焼かれ灰となり、そして氷に包まれてパリンッと
砕け散った後、残骸が甲板にパラパラと落ちていく。
「そ、そんな馬鹿なぁあっ!?お、俺達の魔法部隊の魔法攻撃が何ひとつ
効かないだなんて......っ!?」
自分達の魔法が全く相手に通じない事実に、隊長が愕然とした表情で
よろよろと後退っていく。
そんな隊長の側にいた部下が、
「た、た、たた、隊長っ!も、もしかして、あ、ああ、あの子ども達の
現れ方って!ま、まま、魔法擬人化ではありませんかぁぁあぁあっ!?」
顔色を悪くした震える口でそう告げる。
「―――ハァアアア!?ま、まま、魔法擬人化だとぉぉぉおおっ!?」
部下の発言を聞いた隊長が、慌て様の表情でレンヤ達にいる方角に顔を
バッと振り向けると、ホノカとユミの魔力をギフト技で測っていく。




