第二百五十六話・リサーナ・アジョッキンが去っていった
「ま、間違いありませんわ!これは紛うなき、ルコール御姉様の気の波動!?」
リサーナは、ルコールの気を感じた方角に向け、顔を素早くバッと動かす。
「うふふ♪待っていて下さいねぇ、ルコール御姉様っ!貴女が愛する最大の妹、
このリサーナが、今すぐにそちらへと参りますからぁぁぁぁあっ!!」
リサーナはそう言うが早く、背中にバッと羽根を素早く生やし、空高くバサバサと
上昇していくと、リサーナはルコールの気を感じた方角に向かって物凄いスピードで
一直線にすっ飛んで行った。
「あ、あの後ろ姿はリサーナ様!?い、一体どうしたのでしょうか、リサーナ様は?
何やら大慌てのご様子で飛んで行かれましたけど?」
王の間に丁度辿り着いていたリコットが、壊れた壁の外から見えたリサーナの姿を
見ながら首を傾げつつそう呟く。
「確か、リサーナ様の飛んでいかれた方角...あちらの方角にはリタイの町が
ございましたわよね?あの町に火急なご用意でもおありでしたのでしょうか?」
あ、そうそう。
「リタイの町と言えば、私とアリアの人相描きをあの町に展示致していましたが、
その後、何かしら良い情報が入ったでしょうか?」
......入っていると嬉しいのですが。
リコットがレンヤを探す為に描いた人相描き、それをふと思い出していると、
「お~~い、リコット~~~ッ!い、今の凄まじい音は何だったの~~~っ!?」
背後の方から慌てた表情の少女...アリアがリコット達のいる王座の間に向かって
スタタと駆けてくる。
「あ、アリア?」
「ねぇねぇ、リコット!さ、さっきの凄まじい音は一体何だったの――ってっ!?
ええぇぇぇっ!?な、何よこれ!?壁があっちこっち破壊されているじゃんかっ!?」
アリアがリコットの近くに駆け寄った後、改めて先程の豪音は何だったのかを、
それをもう一度問おうとした瞬間、ヒビが入ったり、クレーターになったり、
そして粉々に破壊され、瓦礫の山になっている壁に気付いて驚いた顔を見せる。
「え、えっと、これはですね......」
―――リコット王女、情報を説明中。
「へぇ~。あんたんとこの竜人様......た、確か、ルコール様...だっけ?
そのルコール様をお尋ねに妹様がやっていらしゃったんだ?」
「うん。でも勇者様達に聞いた話によると、ルコール様がお留守だったらしく、
それで恐らくお父様にその理由をお聞きにいらっしゃったみたいなんだよ」
「お聞きにいらっしゃったって....何でそれだけでこんな事になっちゃうのよ!?」
アリアが無惨な状況になっている周囲を見渡す。
「......たはは。何でもリサーナ様の事を知らない兵士や騎士達が、リサーナ様を
不埒な侵入者と勘違いしたらしくってさ、それで捕縛しようとして......」
「妹様から纏めて全員返り討ちに合って、このザマか......。げげぇっ!?よ、よく
見たら、うちのマッシュ将軍もいるじゃんかっ!?」
アリアが王座の間の中心でリサーナによってボロボロにされて気絶をして
いるマッシュ将軍を見つけた。
「マッシュ将軍様には悪い事をしてしまいましたね。後でキッチリ謝罪を
致しませんといけませんね...でもその前に......」
お父様達のいる部屋には防御結界が張ってありますので、多分この状態には
気付いていない筈です。
「ですので、大至急ルコール様が不在している件と、先程のリサーナ様の来訪の
件をお父様に伝えないといけませんね......行きましょう、アリア」
「うん」
リコットはテンパっている気持ちをひと息ついて落ち着かせると、早足で父親達の
いる部屋へとアリアと一緒に移動して行く。




