第二百五十四話・リサーナ・アジョッキンは知り合い?
「ああ、そっか!久美ちゃんのエネミー・スキャナーってば、勇者専用の
特別製で、ステータス欄の名前が......真名?...つまりは偽名を見抜いて、
偽りない本名が記述されるんだったよね?」
「それに尚且つ、性別とかも判定できるだったよな?えっと確か、名前が
青色だったら男性で、それで赤色だったら女性...だっけか?」
「....ん、そう。だから例え...どんな最大級の阻害魔法を使用されたとて...
ボクのエネミー・スキャナーの前には...偽名にする事など...不可能なのだっ!」
久美は自分の魔法を芽々と光太郎にしたり顔で自慢すると、鼻息をフンスと
荒くする。
「へ!?リ、リ、リサーナッ!?そ、それはまことなのですか、久美様!?
ほ、本当にその竜人族の少女はリサーナとお名乗りになられたのでっ!?」
久美の口からリサーナという名前を耳にした瞬間、リコット王女の両目が
これでもかとばかりに大きく見開き、その表情を強張らせながら喫驚する。
「いいや....その子は自分から名前を名乗っては......いない。ボクの魔法......
『エネミー・スキャナー』であの子のステータス欄...そこに......記載されて
いた名前を見知っただけ......」
「く、久美様のエネミー・スキャナーでですか?」
「うん......。あ...そうそう。一応あの子の他の特徴を教えておくね......。
あの子、髪をサイドテールにしていた。そして髪色は...海の様な...深い
青色だった......よ。それから...背中には蝙蝠みたいな大きな羽根を
生やして......空中をパタパタと闊歩していた......よ!」
困惑しているリコット王女に、久美が手のひらをポンッと叩くと、リサーナの
追加特徴を伝える。
「あ、青い髪!?そ、それに蝙蝠みたいな羽根を生やしていた!?」
こ、これは間違いありませんわね。
「リサーナという名前にその特徴。その少女...間違いなく、わたくしの知る
リサーナの様ですわ!」
「ねぇリコット王女。もしかしてリコット王女はその竜人族の少女とお知り
合いか何かなのかな?」
「はい、その御方......竜人族のリサーナ様は――――」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「が、がは......こ、これ程の数を呆気なく...あっという間に...」
「くそ......む、無念......」
「お、おもや...接近すら出来ん......とは......」
「へ、陛下を......陛下をお守り...しな......」
リサーナにボコられた騎士達がその場にバタバタと倒れていく。
「ふう...やっと、終わりましたわね。......それでは、よいしょっと♪」
騎士達の妨害をあらかた片付け終わったリサーナが、今度こそと王座の扉の
前に立つと、ゆっくり扉を開けていく。
「トーヴァスさん、イオナさん、突然の訪問失礼致ししま―――おっと危ない!?
あらあら、ここにも騎士さんがいたんですねぇ♪」
扉を開けると同時に自分に目掛けて切り込んできた剣の攻撃を、リサーナは
軽く仰け反って、寸での間でひょいっと交わす。
「貴様かぁぁあっ!外で大暴れしておった、痴れものというのはぁぁあっ!
用で城を留守にしておられるグラーゼ様に成り代わり、このフォーラム帝国が
第三部隊マッシュ将軍が直々に貴殿のお相手してくれようぞぉぉおっ!」
「フォーラム帝国?はて?何故フォーラム帝国の将軍様がなに上にギガン城の
トーヴァスさん達をお守りに?」
「守って当然だっ!我らの国とギガン城は友好国。その友好国の敵を討つのに
何の疑問もないだろうがぁぁあっ!ウリャァアアァアッ!!」
「ああ...はいはい。確か、随分昔にガルナドさんがそれで嘆いていましたっけ?
面倒くさい連中が手を組んだとか?なるほど、これは確かに面倒そうですねぇ♪」
リサーナはやれやれといったポーズを取って、呆れ口調で嘆息を吐いた。




