第二百四十七話・レンヤとルコールが合流していたその頃
「......さて、こんなどうでもいいアホ野郎は放置をしておくとして、
おい!赤いのぉっ!さっきの続きを再開だぁあっすっ!いいか、何度も
言うっすけど、ボクは絶っっっ対に、お前のしでかした事を許してなんて
あげないんだからぁぁぁあっ!!」
小太りおっさんこと、ヴィレンを返り討ちにした後、ユキの心の中で先程の
怒りが沸々と再燃してきたのか、ホノカに向けて剣を突きつけて怒りを
露にする。
「......ハァ~ホントしつこいな、白いのよ。顔を拭いてくれというから
良かれと思い我が拭いてやったのに。それに対しての感謝の言葉もなく
怒り出すとは。まさに荒唐無稽も甚だしいぞ......」
それを見てホノカが軽く嘆息を吐いて「やれやれ...」と肩を竦めた後、
いつまでもウジウジと宣うユキを心底憐れむ。
「う、うっさい!黙れしぃいっ!ボクにとっては、一片も良かれな行動じゃ
なかったんっすよっ!ホッント、空気を読めしぃぃいっ!!」
横着な態度を取ってくるホノカに、ユキの怒りのボルテージが最高潮に
上昇していく。
そして、
「このぉおお、くたばれしぃぃいっ!」
「ふ、返り討ちだっ!」
この言い合いと同時に、ユキとホノカの二人は斬り合いを再開する。
「だぁぁあもうっ!また始めやがったぁぁぁあっ!」
それを見た俺は「もう勘弁してくれぇぇえっ!」と、嘆きの雄叫びを
心の底から咆哮していた時、
「あれ?まだそっちの方は片付いていなかったの?」
遠くからルコールの奴が何か大きな物体をズルズルと引きずりながら、
俺達の下に帰って来た。
「お!ルコールじゃないか!戻ってきたんだな?んで、そっちの方は上手いこと
片が付いた...の...か――って!?ち、ちょっと、ルコールさん!?そ、その
化けもん共は一体何なんでしょうかっ!?」
レンヤがルコールに気づいて振り返ると、ルコールの引きずっていたもの、
五人の魔人族にビックリし、慌て口調でそれは何なんだと問うと、
「あ、これ?これはさっきの喧騒の原因だよ、原因♪」
ルコールはレンヤの問いにニカッと笑ってそう答えた後、サムズアップを
ビシッと突き出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「......なるほどねぇ。何か騒がしさが増したな~とは思ってはいたが、
そんなもんが暴れ回っていやがったんだ......」
レンヤはルコールに捕縛されている、大きな角や鋭い牙を生やした
二メートル以上はあろうか巨体な男どもを見て驚いていると、
「ま、正確には、こいつが暴れ回る前に叩き潰したんだけどねぇ~♪」
ルコールがそう言い、それぞれの頭にゲンコツをゴンゴンと落としていく。
「......はは。しかしこいつらも運がなさ過ぎるよなぁ。まさかルコールが
いる時に現れちまうなんてよ!」
俺はボコボコに伸されている目の前の魔族達に対し、苦笑を浮かべつつ、
ちょっとばかしの同情をしてしまう。
―――レンヤとルコールが合流をし、それぞれの出来事を話していたその頃。
「......どうやらザレードの奴ら、やられてしまったようだな?」
「どうやらそのようだな。しかしあのヴィレンとかいう男め、まさか自ら動く
とは思ってもみなかったぞ。こちらとしては計算外も良いところだ、くそ......」
「...まさに同意だよ。普通、ああいう指揮をとるトップという者は、威風堂々と
座して構えながら旋盤を動かす事がセオリーだっていうのにさぁ~!それが
その戦場に直接出向いちゃって、その姿を晒しちゃうなんてねぇ~♪」
事の経緯を観察していた謎の集団が、ヴィレンの犯した愚かな行動に対して、
心から呆れて返っていた。
「だけどさ、計算外と言うのならば、あんな強さを持っている奴があんな場所に
居たってのも計算外だったよねぇ~?」
「......そうだな。いくら使い捨てに丁度良い下っ端から適当に選んだ連中とは
いえども、魔人族をああも簡単に屠ってしまうとはな......。あの小娘の力、
侮れないし、底知れぬわ......っ!」
そして予定範囲を大きく越えた存在、ルコールの強さに謎の集団が驚愕の
表情を見せる。




