第二百四十六話・ヴィレンの最後
「そこのしがないおっさんとぉぉお、ガキどもぉぉぉぉぉおおっ!!」
ヴィレンが先程よりも更に醜悪に満ちたニヤニヤした顔をして、目の前にいる
しがないおっさんと子ども二人の下に、腹を揺らしながらドタドタと足音を
鳴らして駆けて行った。
「......ん?誰だ?」
ヴィレンからしがないおっさんと呼ばれた人物は、声の聞こえる方角に顔を
振り向けると、そこには腹がブクッと出ている身なりの良い小太りの男が
ニヤニヤと不愉快な笑顔で立っていた。
「汚い声で俺達を呼んだのは、もしかしてあんたか?...で、俺に何の用だ?
見ての通り、こっちは今とっても忙しいんだが?」
そんなヴィレンを見たしがないおっさんは、これは陸でもない事を言いそうな
奴だと直感すると、少しわざとらしい不機嫌を匂わせた口調で言葉を返す。
すると案の定、
「き、貴様あっ!その言葉使いはなんだぁぁあっ!平民の分際でそれが貴族の
トップである王族の俺様に対する態度かぁぁあっ!」
しがないおっさんの見せるその不愉快そうな対応に苛立ったヴィレンが、
今にも湯気が吹き出しそうな程に顔を真っ赤へと変えて怒り狂う。
そして、
「その不敬な態度、ボコボコにして修正してくれるわぁぁぁぁああっ!」
拳を大きく振り上げ、しがないおっさんを殴りつけるべく襲い掛かって来た。
「おい!そこの小太りっ!我の主に何をするつもりだぁぁぁあっ!!」
「ちょっとあんた!ボクのおじさんに何をするつもりっすかぁぁあっ!!」
「な、なんだ、ガキども!?き、貴様らもこのヴィレン様に逆らうというなら、
こいつ同様、ボコボコにして―――」
「黙れ!この痴れ者の身程知らずがぁぁぁあっ!!」
「昨日、いいや、百年前から出直して来いやっすぅぅうっ!!」
「―――こぶっ!!!?」
襲い掛かってくるヴィレンを遮る様に、子ども二人が颯爽としがない
おっさんの前に立ち塞がると、それと同時に手に装備していた大きな剣で
ヴィレンを凪ぎ払うように思いっきり斬りつけた。
「はぎゃ!ぐぎゃ!?おぎゃんっ!!?」
二人の攻撃を食らったヴィレンは、物凄いスピードでぶっ飛ばされた反動で
地面を何度もバウンドした後、建物の壁に叩きつけられる。
「ぐ...がが...ぁ...あ.....うがぁ!?ハァ...ハァ......ク、クソがぁあぁあっ!!
さ、さっきといい......な、なんで、この俺様がこのような目に会わねば、
い、いけないのだぁぁ......ああっ!」
こ、こうなると知って...いれば...サ、サリナ共の亡きがらを嘲笑ってやろうと...
や......やっては...来なかったと...いう......のにぃぃい......っ!
「...ハァ....ハァ...ハァ。あ、あんな魔人...族どもなんぞ...を......し、し、信じた...
ばっかりに、ま、まさか...あそ...こまで、や、役立たず......とは......っ!ち、畜生、
ちくしょおぉぉぉおおっ!!ぐふ!......ぐ、ぐはぁぁぁあっ!!?」
プルプルと震える右手を天に突き出す様に上げ、震える声で無念の言葉を吐き
残した後、ヴィレンは白目を剥き出し泡をて口から吐き、そして意識を完全に
黒へと変えてその場に気絶した。
こうして王家乗っ取りを目論んだヴィレン・グラニア・フォーラムの野望は、
馬鹿な選択肢をとってしまった結果、
何を巻き起こす事もなく、
この大陸を震撼させる事件を何ひとつ起こす事もなく、
人知れず...ここで静かに崩れ堕ちていくのだった。
「け、結局なんだったんだ、このおっさんは?いきなり訳の分からん事を
喚き散らしてくるから、様子窺いでちょっと挑発したら、まさかその途端に
怒り出して、あまつ攻撃してくるなんてよ......」
しがないおっさんこと、レンヤは、目の前に倒れ込んで気絶している謎の
小太りのおっさんを見ながら困惑した顔を浮かべていると、
「正直、ボクも突発性お馬鹿の考えは、ちっとも分かんないっすねぇ?」
「我も単細胞の思考なんぞ、いちミリも読めぬな!」
子ども二人こと、ユキとホノカもまた、愚か者を見る様な蔑んだ瞳にて
地面に転がっている小太りのおっさんに呆れていた。




