第二百四十三話・言葉遊び
「ち、ちょっと、キミィィィイッ!何してくれちゃってんのぉぉおっ!?」
ルコールの取った行動に、目を丸くして固まっていた屋台のおっさんが
更に目を丸くして喫驚して唖然としてしまう。
「ん?見ての通り、この邪魔な壁を壊しただけですけど?だってこいつが
あったら、あんた逃げちゃうんでしょう?」
「こ、言葉遊びを言うんじゃない!在っても無くても、ここからは逃げる
つもりだったんだよっ!」
ルコールの間違った解釈に対し、屋台のおっさんが顔を真っ赤にして怒る。
が、
「うふふ♪そんな屁理屈はどうでもいいからさぁ。それよりもこれを
さっさと作って頂戴なぁ~♪」
そんな屋台のオッサンのお怒りなんぞ、全く気にも止めないルコールは、
騒ぎで屋台から剥がれ落ちてたタルトの絵が描かれた看板を人差し指で
ちょんちょんと指差し、ニコニコ顔でタルトの注文をする。
「だ、だから~、今はそれどころじゃないって言ってんだろうが~っ!
と、とにかく、あ、あいつらから急いで離れな――――」
それでも尚、今そんな物を作っている場合じゃないと、ルコールのお願いを
屋台のおっさんが断ろうとするが、
「うふふ、作って頂戴なぁ♪」
「―――は、はひぃぃいっ!?」
今度は少し威圧を込めた言葉にて、再度ルコールが屋台のおっさんに
タルトを作ってくれとお願いをする。
すると、
「わ、わ、分かりましたぁぁぁああっ!!」
目の前にいるルコールの方が魔族達よりも立ちが悪くて危険人物だと
判断したのか、屋台のおっさんが大慌てで屋台に戻り、そしてリタイの町で
噂になっていたスイーツ、クロニの実のタルトをあせあせと急ぎ作り始めた。
「お、おい、貴様ぁぁあっ!わ、我らを無視して、何をのんびりと屋台で
買い物をしていやがるんだぁぁああっ!!」
自慢の魔法の絶対壁を意とも簡単に砕かれたうえ、自分達を無視して
タルトに夢中になっているルコールに、プライドをズタズタにキズを
つけられたゲーマロが、怒りを露にして周囲に響く様な咆哮を荒らげる。
そして咆哮を荒らげた後、
『スピードブースター!』
『身体強化!』
『素早さ強化!』
ゲーマロがギフト技を次々と重ねがけしていき、自分の能力値をドンドン
上げ底していく。
「ガハハハッハハッ!小娘ぇぇええっ!この大いなるパワーと目にも見えない
スピードによる我の突撃攻撃に、耐えうる事ができるかなぁぁぁあっ!!」
更にゲーマロは『瞬歩』と『突撃』のギフトを発動させると、ルコールに
向かって突っ込む様に突進して行った。
「ちょ!あんた!?何てスピードで突っ込んでくんのよっ!」
「ガハハハハッ!今頃詫びてももう遅いぞぉぉぉぉぉおっ!!」
ルコールの仰天した表情でオロオロと戸惑っている姿を見て、ゲーマロが
高笑いを上げて勝利を確信する。
「そんな猛スピードで突っ込まれたら、屋台が粉々に砕けて壊れてしまうで
しょうがぁぁぁぁぁああ――――っ!!」
「はひぃっ!?な、な、なんで我の目の前に貴様が――――ぐろがば!!?」
猛スピードで突っ込んでくるゲーマロに、ルコールがギフト技...『神歩』を
発動させ、相手との間合いを一気に摘めると、屋台を潰されて堪るかと
言わんばかりにゲーマロのみぞうちに『ドラゴニック・スマッシュ』を
思いっきり叩き込んだ。
「はぐ、うぐぐぅ...そ、そ、そんな馬鹿...なことがぁ...!?......あ、あれだけの
スピード...による...と、突撃を...破られ......る......なんて......うげぇぇえ、が、
うぐがぁぁぁあ........ぐはぁっ!!?」
ゲーマロがドラゴニック・スマッシュを打ち込まれたみぞうちを苦しそうに
両手で押さえながら、ヨロヨロと後ろによろめき後退りをして行く。
そして数秒後、意識を真っ白に飛ばしたゲーマロは、その場に音を大きく
立ててバタンと崩れ堕ちた。
「さて...っと。ねぇ、おじさぁ~ん♪あたしが注文したクロニの実の
タルトちゃんはもうそろそろ完成したかなぁ~♪」
「は、はは、はひぃぃぃぃいっ!?スス、スイマセェェェエンッ!?
も、もうちょいかかります!でで、ですが急ピッチでお作り致しますので、
ど、どど、ど、どうか命だけは...命だけはご容赦下さいいぃぃぃいっ!!」
何事もなかった様に魔人族をボコボコにのした後、お日様のようなニコニコ
笑顔で自分に話しかけてくるルコールに、屋台のおっさんが顔色を青くして
ブルブルと震えながらそう言うと、あわふたと慌てながら急いでルコールの
注文したクロニの実の入ったタルトをせっせと作っていく。




