第二百四十二話・邪魔な壁
「ったく...」
ぶっ飛んで行くゾーガヤを見届けた後、ルコールが鼻息をフンと荒くし、
背中を軽く払うと、再び屋台のある方向へと振り返る。
そして、
「しっかし何なのよ、この壁はさぁ!何で人が往来する通路にこんな
壁があんのよぉ~っ!」
ルコールが苛立った表情で、目の前に立ち塞がっている見えない壁を
ドンッと叩く。
それを見ていた魔法壁の中に一緒に閉じ込められた市民の娘さんが、
おそるおそるとルコールに近づき、
「あ、あの...聞いていなかったんですか?あそこのガタイの良い男が
この壁を張ったのを?」
ルコールにそう告げる。
「ああ。確か、あいつが何かそんなモーションをとっていたわね?」
それを聞いて「そういえばそうだった!」と、ルコールが思い出す。
「で、ですから、あの男が倒す事ができたら、もしかしたらこの壁も
消えるかも......」
娘さんが呟く様な声で、ルコールにそう助言をすると、
「そ、そうだ!あの化け物達を三人も倒したあんたなら、あいつも
倒す事ができるんじゃないのか!」
「た、頼む!あいつを倒してこの壁を壊してくれよぉぉっ!」
近くに市民達が次々とルコールの回りに集まり出し、そしてあいつを
倒してくれと嘆願してくる。
だがしかし、
「え、嫌なんですけど?」
ルコールそんな市民の嘆願をあっさり却下した。
「えぇぇえ!な、何でだよ!あれだけの強さならやれるじゃないかっ!」
「俺達はこんな所で死にたくないんだよ!頼むからやってくれよっ!」
「だから、嫌だって言ってるでしょう!あたしはね、今それどころじゃ
ないんだよ!あれを食べるという遂行が待っているのっ!」
それでも食い下がる市民達にルコールがそう声を荒らげた後、見えない壁の
向こう側にある屋台へと目線を向けて、人差し指をビシッと突き出す。
「......って、ちょっと、あんた!何を逃げようとしているのよっ!
そこから一歩も動くんじゃないっ!!」
「む、無茶言うなよ!そ、その壁がある内に、ここからズラからなきゃ、
死んじゃうじゃないかっ!!」
ルコールが振り返ると、その場からさっさと逃げ出そうとしている
屋台のおっさんに気付き、ルコールが慌て待てと呼び止めると、
屋台のおっさんはあたふたとテンパった涙目の表情で、俺は死にたく
ないと絶叫する。
それを聞いたルコールは、
「ほう、なるほど。この壁がある内にねぇ...............ならっ!!」
両方の手のひらを魔法の壁にペタッとつけ、魔法の壁をグッと握ると、
魔法の壁を粉々に砕いた。
「―――はぁぁああっ!?そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁああっ!?わわ、
我の作った最強壁が砕かれた......だとぉぉぉおっ!?し、しかもあんな
あっさりと砕かれて.........っ!?」
自分の作った完璧な魔法壁を簡単に砕かれた事に、ゲーマロが目を大きく
開いて信じられないと喫驚してしまう。
「ほら、この通り。壁もスッカリと無くなった事だし、これで逃げる
必要も無くなったよねぇ、おじさん♪」
無くなった壁からゆっくりとルコールが出てくると、屋台のおっさんに
ニコニコ笑顔で近寄って行く。




