第二百四十話・過大評価
「そ、それこそ嘘だな!」
「そうだ、そうだ!エネミー・スキャナーはな、ギフトの中でも
習得するのが特殊な上、最上級の魔法なんだぞっ!そ、それを
貴様如き小娘が習得している訳がないだろうがっ!」
「か、仮に貴様がエネミー・スキャナーを習得していたとしてだ。
我々は強力な阻害魔法にて自分の身分を完璧に隠蔽しているんだ!
だから貴様の様な、どこの馬の骨かも分からん小娘レベルの魔法
なんぞで見破るものではないんだよっ!」
未だに自分達が魔人族だとは認めない、自称・フォーラム帝国の連中が
ルコールの言い分に、いちゃもんを次々とつけてくる。
そんな自称・フォーラム帝国の連中に対し、
「ええぇ~。そんな事を言われても~見れちゃうもんは見れちゃう
しなぁ~。正直あんたら、自分達の実力を過大評価し過ぎじゃないの?
自分達が弱っちいって事、もうちょっと自覚した方が良いと思うよ?」
ルコールがやれやれといった表情で肩を竦め、呆れ口調をこぼす。
「な!?よ、弱い!?」
「こ、この俺達が弱い......だと!?」
「ふ、ふざけるんじゃねぇぞ、小娘!い、言うにこと欠いて、エリート種族、
魔人族の我々に対して弱いだとぉおぉぉっ!」
「許さん...絶っ対に許さんぞぉおぉ、この小娘がああぁぁあっ!」
「落ち着け、ザレード!どうせ、こいつはここで消すんだ!」
「そうそう。どういう意図でこいつが我らを魔人族と知ったかは
知らん......だが、それを知られたのだ。それを知られたからには
こやつをここから生きて返す訳にはいかない!」
「おっと、そうだったな!グダグダ言わずに、さっさとこいつを
消しちまえば済む話だったなっ!」
「ガハハハッ!そういう事だからよ、下等種族!最早、貴様に命が
あるとは思んじゃねぇぞっ!」
「くくく。待ってなよ、小娘。今直ぐ楽にしてやるからよっ!」
ルコールをこの世から消すという決断を下した、自称フォーラム帝国達が
各々の手に武器を持つと、ルコールを囲う様にして身構える。
「おっとそれから。そこでブルブル震えながらこっちを見ている下等種族ども!
貴様らも後でちゃんと全員始末してやる。だからそこで安心して待ってろ!」
ルコールを囲んでいる、自称・フォーラム帝国のひとりが、後ろに向かって
バッと振り返り、少し離れた場所にいる町人や観光客にニヤリと笑顔を見せて
そう言うと、再びルコールの方に目線を戻す。
そして、
「グガハハハハッハハッ!!」
自称・フォーラム帝国の連中が叫声を荒らげ、大きな高笑いを上げた後、
その身体がドンドン大きくなっていき、頭には二つの大きな角が生えてきて、
口元には尖った歯がギラリと光り、自称・フォーラム帝国達が元の姿......
『魔人族』の姿へと戻っていく。
「ひ、ひぃいぃぃ!ば、化け物っ!!?」
「た、助けてくれ!俺は死にたくないぃぃぃ~!」
「に、逃げろ!逃げるんだぁああぁあっ!」
「ガハハハ♪無駄だ、無駄だ、下等種族ぅぅう!このゼーマロ様から
逃げられると思うんじゃねぇよぉぉおおっ!」
『周囲を囲めぇえぇえ!魔法の絶対壁ッッ!!』
自称・フォーラム帝国の連中のひとり、魔人族ゼーマロが周りにいる
人々に指を突き出しそう宣言すると、両腕をバッと左右に大きく拡げ、
ギフト技...魔法の絶対壁を発動させる。
すると、ゼーマロから発されたドーム型の魔法壁が拡がっていき、
周囲を大きく囲んでいく。
「な、なんだ!この壁は!?で、出られない!?」
「く、くそ!いくら叩いてもビクともしねぇぞっ!」
「い、嫌だ!こんな所でまだ死にたくない!」
「た、助けて!助けて~ママァ―――ッ!」
ゼーマロの魔法の絶対壁にて閉じ込められてしまった老若男女が、
確実な確率で訪れるかもしれない自分の死に直面した事によって、
嫌だ、助けてと動揺全開の慌てようでパニックに陥ってしまう。
「ガハハハ!無様に泣けやぁぁあ!みっともなく騒げやぁぁぁあっ!
その無様を我々にもっと見せてくれぇぇぇええっ!そして無念の失意を
垣間見ながら、あの世に旅逝くがいいわぁぁぁあっ!!」
それ姿を見たゼーマロは、満足といわんばかりの表情でケラケラと下卑笑う。




