第二百三十一話・ルコールを狙った愚行なる者どもの末路
「す、凄いですね、お姉様!?だってその王家指輪は余程の者にしか
手渡さないとされている希少なアイテムなんですよ!それをお姉様が!?
キャアァァァァアア―――ッ!!もう最強過ぎですよ、お姉様ぁあっ!!」
アンナリッタが、トーヴァスから王家の指輪を得たという事実に、驚きと
尊敬の入り混じった満面の笑みにて、歓喜感涙の叫声を荒らげる。
「あ、一応言っておくけど、あたしがこの指輪を持っているって事は
あのマッチョのハゲには、絶対に内緒だからねぇ!」
「「ハッ!了解ですっ!」」
ネージュ達はルコールの釘指しに、速攻で二つ返事を返す。
もしもこの指輪の事がマッチョハゲにバレでもしようものなら、絶対に
面倒くさい事になるのは受け合いだし、
レンヤも「絶対に内緒だからなっ!絶対だかんなぁぁああっ!!」...とか
言いそうだしねぇ♪
「......しかしそうですか、お姉様が王家の指輪を。うふふ、ランス。貴方は
本当にお馬鹿さんでしたわね。あの宿屋で受けたルコールお姉様からの
お仕置きで懲りていれば良かったものを。それがまさかこの様な報復行為に
売って出ようとは......ホトホト愚か過ぎですわ」
「まったくだぜ!相手の力量を計れないで、何が勇者と肩を並べるだっ!
ホント心底呆れてしまうぞ、ランス!」
「うぐぐぅぅぐ、う、うせえぇぇえっ!うっせえぇぇぇええっ!!」
アンナリッタとネージュの正論なる図星に、ランスが歯が砕けそうな勢いで
ギリギリさせて悔しさを滲ませてしまう。
それから改めてネージュとアンナリッタは、ランスとグラーゼ、その部下の
紅蓮団をギルドに引き渡すべく連行して行った。
ルコールがネージュ達が見えなくなるまで見送った後、
「さてっと。日も暮れてきたみたいだし、そろそろ宿屋に帰ろっかな?
それにあいつの錬金術の結果もどうなったかも、知りたいしねぇ~♪」
レンヤの錬金術の結果を確認するべく、宿屋へと帰って行くのだった。
その後ランス達がどうなったのか、ギルドからボーナスという名の
報償金を貰った時にネージュ達から聞いた所、紅蓮騎士団は解体処分。
ランス一家は、トーヴァから直々の勅命を受け、財産を全て没収のうえ、
お取り潰し。
そして両親ともに、二十年の鉱山行きに決まったとのこと。
「普通、上位貴族に処分を下す場合、大概が島流しという名の隠居生活を
させるのがセオリーなのにねぇ。まぁ、ネージュ達に預けたあの手紙には、
あんま怒った事のないあたしが怒っているぞという皆を書いておいたから、
きっとトーヴァスの奴、相当焦ったんでしょうねぇ~♪」
あ、因みに、
表向きにはあいつらを捕縛したのは、アンナとネージュって事になった。
...っていうか、アンナ達がそうした。
あたしが面倒ごとに巻き込まれないようにと、気遣ったようだ。
まぁ確かにあたしがってなると、面倒ごとになって、レンヤにも迷惑が
かかっただろうから、グッジョブと言っておくよ。
「二人とも、今度ナデナデしてあげるからねぇ~うふふ♪」
「――ん?今なにか言ったか、ルコール?」
「ううん、ちょっとしたひとりごとだから、気にしないで良いよ♪
さあ~て、それよりもレンヤッ!旅の資金と路銀を稼ぐ為、今日も一日
張り切って頑張ろうかぁ~~いっ♪」
ルコールは元気良くそう言うと、ギルドの道をスタスタと駆けて行く。
「......あいつ、朝っぱらから元気が有り余っているなぁ。ババアの癖に」
スキップするかの様に、軽い足取りでギルドへと走って行くルコールの
背中を見て、俺は呆れ口調で静かにそう呟くのだった。




