第二百三十話・あいつとはタメの立場かな?
「ふ、ふざけるんじゃねぇぇぇええっ!そんなもん、理解ができて
たまるかぁぁああぁあっ!大体ネージュッ!てめえはその小娘に顎の
骨を粉々に砕かれていたじゃねぇかよおぉぉおっ!それなのに何で
そいつに付き従っていやがんだぁぁあぁあっ!?」
「ああ、そうだな......ハァ~あの時の姉さんの放った躊躇の一切ない
冷徹無比で豪強なる攻撃。今思い出してホントに素晴らしかったなぁ~♪」
「は、はあぁぁぁあっ!?すす、す、素晴らしかっただとぉぉおぉっ!?」
ネージュが顎を擦りながら見せる恍惚な表情に、ランスがあんな目に
合わされたというのに、なんでそんな顔ができるんだといわんばかりの
驚愕した表情で目を大きく見開き、口がアングリと開いてしまう。
「お~~い、そこの三人さん。雑談の方はもう終わったかな~?」
「はいです、ルコールお姉様!」
「これ以上、こんなポンコツ野郎と話す事は何もありません!」
「―――なっ!?」
「そっか♪だったらアンナ、ネージュ。こいつらの後始末をあんたらに
任せてもいいかな?あたし、あんま上位貴族の裁きには関わりたくない
からさぁ!それにもしあたしに迂闊な報復でもかけられようものなら、
苛立ちでこの国を滅ぼしかねないしねぇ♪」
「ほ、滅ぼ!?り、了解しました!ルコールお姉様っ!」
「お、任せて下さい、ルコール姉さんっ!き、きっと、ルコール姉さんが
納得いく様な結末を用意して置きますのでぇっ!」
不適な笑みを浮かべて述べる、ルコールの意味深な言葉に、アンナリッタと
ネージュが不安全開の表情であたふた動揺すると、直立不動でわかりましたと
敬礼ポーズをビシッとキメる。
「そ、そういうわけだから、さっさとギルドに行くぞ、てめえら!ほれ、
さっさと立ちやがれポンコツ集団!急いで方をつけないと、国が滅んじまう
だろうがぁあっ!」
「立たないと言うなら、そのまま引きずって連れて行きますわよっ!」
ネージュとアンナリッタはルコールの言い付け通り、冒険ギルドに連行する為、
ランス達を捕縛しているローブの先をグッと掴む。
「あ!そうそう、忘れるところだったよ!ネージュ、これをトーヴァスの奴に
渡すよう、あのハゲに伝えておいて!」
ルコールがふと何かを思い出すと、ランス達をギルドに連行しようとしている
ネージュ達を呼び止め、懐から取り出した手紙をソッと渡す。
「わかりました、姉さん!それをトーヴァスって奴に渡すよう、あのハ――へ?
ト、トーヴァス!?あ、姉さん!い、今トーヴァスと言いませんでしたっ!?」
「え、えっと、ルコールお姉様。も、もしかしてですけど、そのトーヴァスって
御方は、ギガン城の王様であらせられる、あのトーヴァス陛下の事でしょうか?」
ルコールの口から突如トーヴァスという名前が出てきた事で、アンナリッタと
ネージュが困惑気味の口調で、それはギガン城のトーヴァス陛下と同一人物かと、
改めてルコールに聞いてくる。
なので、
「ええ、そうだよ♪」
ルコールはあっけらかんとした表情で、ネージュ達の疑問にそうだと肯定の
言葉を返した。
「ひぃええぇえっ!?マジでですかぁぁぁあいっ!?そ、そ、それじゃ姉さんは、
あのギガン城のトーヴァス陛下とお知り合いって事なんですかぁぁああっ!?」
「あいつ...トーヴァスの奴とはこういう関係......かな♪」
ルコールは指に嵌めている例の指輪を、テンパっているネージュに見せる。
「はう!?そそ、そ、それは【王家の指輪】じゃないですかぁぁぁあっ!?
うええぇぇぇえっ!?」
「という事は、ルコールお姉様はトーヴァス陛下から認められし者って事
ですかぁぁぁああっ!?」
「う~ん、認められしというか、タメの立場かな?」
「「タ、タメェェエエッ!?」」
ルコールから次々と告げられる事実に、ネージュとアンナリッタは信じられ
ないという叫声を荒らげ、心の底からビックリしてしまう。




