第二百二十九話・ランス、納得いかないと咆哮する
「さて。二人とも言いたい事はもう全部吐き終えたかな?だったらギルドに
レッツゴーするけど、いっかなぁ~♪。あ、返答はしなくて良いよぉ~♪
よっくらしょいっとぉ~~っ!」
ルコールがそう言い終わると、ロープでグルグル巻きにしていた紅蓮騎士団達や
その団長のグラーゼ。
そしてランスを含めた全員を纏めて引きずりながら、足取りも軽いスピードで
冒険ギルドへと歩いて行く。
―――それから数十分後。
「お、おい、見ろよアンナ!あそこに見えるのはルコール姉さんじゃないか?」
ルコールが心配になり、東門へ向かおうとしていたネージュが、その隣にいた
アンナリッタの肩をポンポンと叩き、目線の遠くに見えるルコールと思われしき
ものに向かって指を差す。
「え?ルコールお姉様!?......ああ、ホ、ホントですわっ!あれは間違いなく
ルコールお姉様!......ん?あれは何でしょうか?何やらお姉様が数個の物体を
ズルズルと引っ張っておりますが?」
アンナリッタがルコールが引っ張っているモノに目をジッと凝らす。
「嗚呼!?あ、あれはランスじゃありませんか!?そ、それにあの鎧は
紅蓮騎士団の......と、いうことは、その中心にいらっしゃるあれは団長の
グラーゼ様ですかっ!?」
「何ぃぃ!?ラ、ランスにグラーゼ様だとぉぉおっ!?」
アンナリッタの目線の先に、ネージュも慌てて凝視する様に目線を向ける。
「......た、確かにランスとグラーゼ様だな。や、やはりルコールお姉様の
睨んだ通り、ランスの奴め、東門から侵入しようと企てていやがったか!」
ネージュがそう吐き捨てると、アンナリッタと共に、急ぎルコールの下に
駆けて行き合流する。
「ル、ルコールお姉様、ご無事ですかぁぁあ!」
「すまねぇな、ルコール姉さん!本来なら、ランスの捕縛はあたい達が
やらなねぇといけなかった事だっていうによっ!」
「いいの、いいの。気にしない、気にしない♪あたしも退屈していたしさ、
それに思いがけないボーナスも発生しそうだしねぇ~♪」
「ボ、ボーナス...ですか?ああ、報償金の事ですね♪そいつは任せておいて
下さい、ルコール姉さん!あたいとアンナで責任を以て、最高額を引き出して
きますんでっ!なぁ、アンナッ!」
「勿論ですわ!活躍できなかった分、ギルドとキッチリ交渉をし、タップリの
報償金を巻き上げておきますわっ!」
自分達の失敗を怒らず、それどころか気遣ってくるルコールに、アンナリッタと
ネージュが目をウルウルさせて感動してしまい、ルコールの言うボーナス...
報償金の方は任せて下さいと、胸をドンと大きく叩いた。
「お、おい!ちょっと待てや、アンナ!ネージュ!な、なんでお前達、そいつの
事を姉さんだとか、お姉様とか呼んでいやがるんだっ!?」
「はい?確かにお呼びいたしましたけれども、それがどうかなさいましたの?」
「それがどうかなさいましたの......じゃねぇよぉぉぉおおっ!どう考えても
おっかしいだろうがぁぁぁああっ!何であれだけ手痛い目に合わされたその小娘を
そこまで慕っていやがるんだよぉぉぉおおっ!!」
宿屋であれだけ手酷い目にあったというのに、何故にこいつらはあんな恍惚な
表情ができるんだとランスは驚愕し、至極正論な事をネージュやアンナリッタに
叫声を荒らげて抗議する。
だがしかし、
「う~ん。そうですね...貴方にこの気持ちを伝えた所で、到底理解してくれるとは
思えませんし、その答えはノーコメントという事にしておいて下さいませ♪」
「.....だな。ポンコツのお前にこの熱い気持ちを語った所で、とても信じるとは
思えないしなぁ♪」
アンナリッタとネージュが、やれやれといった口調で、そんなランスの抗議を
却下する。




