第二百二十七話・俺のママに任せておけ!
「ぜ、前科!?」
「うぐ、確かに言い訳の立たない案件がいくつも......」
「だ、だとすると......さ、裁...かれる......と...いうのかぁあっ!?
こ、このエリート騎士である俺がぁぁあっ!?」
「う、嘘だ!嘘だぁぁっ!そんなの嘘だぁぁあぁっ!!」
「俺達が...王家の未来を担う存在である、エリート集団の紅蓮騎士団が、
その王家の法で裁かれてしまうというのか......っ!?」
ルコールの説明をランスと一緒に聞いた騎士達は、ギルドに突き出されたら、
確実に裁きを食らうのだと、ようやく思考が理解し、それに気づき始めると、
「い......嫌だぁあ!嫌だぁああ!!嫌だぁぁああっ!!」
「お、お願いだよぉぉお!俺だけでもいいから、ギルドに突き出すのは
やめてくれよぉぉおっ!」
「やめてくれぇぇえ!このまま王族に裁かれたら、俺の騎士の称号が確実に
剥奪されてしまうっ!」
「た、頼む!心の底から頼むから、ギルドに突き出さないでくれぇぇぇえっ!
頼むから報告しないでくれえぇぇぇええぇぇっ!!」
「騎士の称号を剥奪されるなんて、絶対に嫌だぁあっ!大量の金やコネを使い、
邪魔なライバルを蹴落としてやっと得たんだ地位なんだぞっ!その紅蓮騎士団の
称号を失うだなんて、死んでも嫌だぁああぁぁぁあっ!!」
掴まえた騎士達の表情から、次々に色が消え去っていくと、慌てふためきながら
ルコールに懇願と慈悲を乞うてくる。
...だがしかし、
「残念だけど、そんなのあたしの知った事じゃないから普通に全部却下かな♪」
ルコールは顔色ひとつ変えずに、騎士達からの嘆願全てをあっさりと断った。
「そ、そんなぁぁあ~っ!お、俺の紅蓮騎士団の称号があぁぁあ~~っ!!」
「クビにされたら、どうやって生活していけばいいんだよぉぉおっ!」
「いやいや。何を言っているのあんたら?騎士称号の剥奪や、クビだけで
済む訳ないじゃん!」
「「―――へ!?」」
「そのみっともない慌てぶりや、あたしがさっき述べた前科って言葉に
動揺した所を見ると、あんたらどうせ、そこのお間抜けなガキと一緒に
なって、沢山の取り返しがつかないような事をしてきちゃってんでしょ?」
「はぐ!?」
「そ、それはっ!?」
「それら全てをギルドによって、根掘り葉掘りと尋問されて露呈しちゃったら、
騎士剥奪やクビどころの騒ぎで済むわけがないじゃん?そうでしょう?」
ルコールが目の前にいる騎士達に向けて「今までやってきた自分達の行いを
胸に手を当てて、よ~く思い出してみなよ!」といわんばかり表情と呆れ口調で
問い質す。
すると、
「ぐぬ、ぐぬぬうぅ.........!」
騎士達は図星を突かれたのか、何も言い返せずに下唇をグッと強く噛みしめ、
言葉を詰まらてしまう。
「あははは!心配するんじゃない、お前達っ!んなもん、俺のママがぜ~んぶ
揉み消し、全てなかった事にしてくれるはずさっ!あははっ!あははははっ!!」
ランスが自分の仕出かしたやんちゃをお金と権力で揉み消してくれるママの
存在を騎士達にアピールし、いつもの高飛車な態度で高笑いする。
それを聞いた騎士達が、
「そ、そうだった!我々にはランス様のお母上のお力があったのだった!」
「今回は結構目立ってしまうが、しかしきっとランス様のお母上、シゼス様が
上手く取り計らってくれるさ!」
「ふう、掴まった事ですっかり慌ててしまったぞ!」
「ああ、動揺して本当に損してしまったぜ!」
絶望した瞳と表情から一変し、希望の瞳と表情へと変わっていく。




