第二百二十五話・ルコールVSグラーゼ
「な、何でだよ!なんでエリート騎士の俺達がこんな小娘ご――ギャ!」
「く、くそ......お、俺達の装備している防具はミスリル製なんだぞ!
そ、それが何でこうも簡単に砕け―――ハギャッ!」
「く、くるな!くるんじゃ―――メギャ!」
ルコールは残った後衛の守備騎士達や、回りにいる他の騎士達の
包囲網に次々に突っ込んでいっては、右に左にとパンチやキックを
食らわせていき、バッタバッタと騎士団を叩き潰していく!
「あなたで最後だぞ.........っとっ!」
「ひぃぃぃいい――――クビャアア!」
そして最後に残った騎士を、しなりを効かせた回し蹴りでぶっ飛ばし、
近くの巨木に叩きつけた。
「よっしゃ、雑魚はこれで全部片付いたっと♪」
ルコールが両手の埃を払う様にパンパンと叩き鳴らして周囲を見渡し、
本命以外が地面に全員転がっている事を確認する。
「く...まさか、この私が直々に選び抜いた精鋭達がこうもあっさりと
倒されてしまうとは。ふふふ、これは予想外も良い所ですね......」
「ふう~ん、あんたの中では予想外なんだ?でもあたしの中では至極
当然の結果なんだけどなぁ♪」
「......ふ!多少強いからといって調子に乗らない方が良いぞ小娘っ!
その程度の力の持ち主など、この世界には沢山いるのだよ!そう...
貴様が及びもつかないくらいの強者がなぁっ!」
グラーゼがそう言うと、腰に下げていた剣を鞘から静かに引き抜いて
ゆっくりと身構える。
「ほ~う、及びもつかないねぇ~?あ!もしかしてそれって、あんたが
そうだって遠回しに言っているのかな♪」
「いやいや、私如きなどは所詮は若輩者だよ。然れど、貴様に井戸の蛙と
いう言葉を味わわせてあげる事くらいはできるやもしれないがな...くく!」
グラーゼはニヤリと口角を上げると、剣を上段に振り上げる。
「おお、中々の威圧感を感じる。へぇ中々やるじゃん、あんた♪まだ
そんなにも気質を上げる事ができちゃうなんてね♪そこで惨めに転がり
気絶している、えっと...ランスとかいたっけか?こんなポンコツに従って
いるのはホントもったいない逸材だよ♪」
「......ランス様への愚弄はそこまでにしてもらおうか。このランス様は
私の恩ある御方のご子息なので......ねぇぇえぇぇえっ!!」
グラーゼがルコールに向けてそう叫声した瞬間、
「間合い、摘めさせていただくっ!」
『瞬歩ッ!!』
ギフト技...『瞬歩』を素早く発動させ、猛スピードでルコールのいる
場所へ突撃し、一気に行き間合いを摘める!
「――は、速い!?」
『食らえっ!紅蓮・鋼砕斬りぃぃいいぃぃッ!!』
そして、攻撃射程範囲内に入ったと同時に、グラーゼは攻撃ギフト技を
発動させ、自分の剣にメラメラと燃え盛る炎を纏わせると、ルコールを
真っ二つにするべく、上段に振り上げた剣を勢いよく下段へと振り下ろす!
「ふふふ、どうだ?これを食らえば流石の貴様も一貫の終わ――なっ!?」
「おやおや?どうしたのかな~?そんな素っ頓狂な声を荒らげてさぁ♪」
「ば、馬鹿な!私の技が......攻撃が......ま、全く通じないだなんてぇっ!?」
グラーゼの剣は確かにルコール身体を捉え直撃するが、しかし斬り裂く事は
一切叶わず、いくら力を剣に込めようとも、ルコールの身体はウンとも
スンとも微動だにはしない。
「く...だったらこれで!」
『切り裂け!ウインド・カッタァァァッ!』
グラーゼは剣を握っている逆の手、左手をルコールに向けて突き出すと、
風魔法...ウインド・カッターを素早く詠唱し、無数の真空の刃を次々と
発射していく!
...がしかし、
射ち出された無数の風の刃は、全てルコールの身体から明後日の方向に
弾かれ、飛んでいく。
「ば、馬鹿な!馬鹿なぁぁ!馬鹿なぁぁあっ!?け、剣も魔法も通じ...
な...い.....だなん......てぇぇええっ!?わ、私は夢でも見てい―――」
「―――悔しいのはわかるけど、隙だらけ過ぎるよ♪」
「ハッ!?し、しま―――――ゴブ!!」
自分の放つ攻撃が一切効かない事に、動揺全開で油断しているグラーゼに、
ルコールがニコッと微笑んで近づき、そしてグラーゼの横っ面を力いっぱい
殴りつけた!




