第二百十一話・おいでませ!俺の魔法達っ!!
「グアハハハハッ!愚かな平民どもよっ!この俺様の地位向上と
名誉の為にも四の五の言わず、とっとと捕縛されるが良いわぁあっ!」
突撃してくる騎士達の後ろで、小太り貴族が満足気な顔をして高笑いを
している。
「......おい見ろよ、ルコール。あの小太り貴族、あれだけみっともなく
尻尾巻いて逃げ帰った癖に、もうあんな感じになっていやがるぞ......」
ルコールの威圧を受け、脱兎の如く逃げ出して行った小太り貴族の
気の変わり様に、レンヤが嘘だろうと呆れ返っていると、
「あはは♪あたし達から逃げ出した後、冷静になって考えたら、あいつが
さっさ言っていた地位や名誉、それらを得る事の方があたしへの恐怖よりも
勝っちゃったんでしょうねぇ~♪」
ルコールもまた、高笑いしている小太り貴族を、馬鹿を見る様な目をして
ニガ笑いをこぼし、呆れ返ってしまう。
「......なるほど。つまり自分の都合が良い方に思考が動いたって事か」
......ハァ、やれやれ。
正にコテコテのテンプレ貴族様だな。
レンヤはこれまた面倒くさい厄介ごとに巻き込まれしまったなと、項垂れて
深い溜め息をこぼしていると、
「おいこら、おっさんと小娘っ!さっきから何をごちゃごちゃとくっちゃべって
いやがいるんだっ!」
「クククク、恐らく女神様に「俺を助けて下さい~!」とか、必死の嘆願でも
していたんじゃねぇのか♪」
「がはっははは!なるほどなぁっ!だがしかし!それも叶わない嘆願だった
なぁぁあっ!」
「クハハハ!こいつの言う通りだぜ!さぁ、おっさん!先ずはてめえを先に
惨たらしくボコボコにしてやんから覚悟しやがれぇぇええっ!!」
「ギャハハハ!年老いたおっさんの実力程度じゃ、抵抗も虚しく儘ならない
だろうがよぉお、必死な抵抗を見せてくれよぉぉおぉおっ!」
小太り貴族の部下であろう騎士達が、ニヤニヤしながら俺を小馬鹿にして
罵った後、俺を捕縛するべくジリジリと距離を縮めて包囲網を敷いていく。
「ぐぬぬ...どいつもこいつも好き放題言いやがってぇえっ!」
さっきの「王女様に仇なす~」とか言っていた騎士道精神溢れる姿は
一体どこにいったんだよ、こいつらっ!
あ、俺がおっさんだからか!?
俺がおっさんだから、体裁を装う必要がないってかっ!?
ホント、どの世界もおっさんには全然優しくないよな......。
......ったく。
まぁいい。
「だったら、その見下すおっさんパワー見せつけて、この局面を切り
抜けるといたしますか......ねっ!」
『さぁ、出てこいっ!ホノカッ!ユキッ!』
レンヤがこの世界の不条理に不満と愚痴を洩らした後、両腕を前にスッと
突き出し、二つの魔法を詠唱すると、
「くくく!我、主のお呼びを受け、爆・登・場・っ!!」
「はいはい~♪ボクを呼んだっすかぁ~おじさ~~ん♪」
フレイム・カッターとアイス・カッターの魔法擬人化...ホノカとユキが
レンヤの前に颯爽と召喚された!
「なぁっ!?な、何だ!?こ、このガキどもは!?」
「言葉には気をつけろ、愚弄。我はガキに有らず。我は最高最強を謳う
究極炎魔法...フレイム・カッター改めて、ホノカ・フレイ・シロカワなりっ!」
「ふふん♪あんらみたいな底辺モブキャラ如きに、ボクの技はもったいな
過ぎっすけど、でもまぁ呼ばれたからには、頑張ってあげるっすよ~♪」
ホノカとユキがニヤリとした口調でレンヤに迫ってくる騎士達に向けて
そう発すると、背中に背負っている身の丈以上の大剣を手に取り、静かに
腰を落として身構える。




