第二百七話・担当受付嬢のシステム
「......ったく。何の凶事が起こったかは知らねぇがよ、それにしたって
いきなりはないと思うぞ、いきなりはよぉ~っ!」
「はは、すまないな!」
「それでレンヤ。ここを...リタイの町を出た後、どこに行くのかは
もう決めてあるのか?」
「まあ、一応はな。ここを出た後は――――」
俺は今後の行動予定をギルマスへ詳しく話していく。
「ほほう、なるほどなぁ。港町ウィークに向かって、そこから船に乗り、
そして隣の大陸...帝国グランディーネにいくのか?フムフム......だったら」
ギルマスが首を傾げ、しばらく何かを思案すると、
「よし!レンヤ、ちょっとそこで待ってろっ!」
レンヤにそう告げ、奥の部屋にドタドタと足音を鳴らして入っていった。
それから数分後。
「待たせたなぁ、レンヤ!ほれ、こいつは餞別だ、受け取れ!ギルドマスター
特権の紹介状だぜいっ!」
そう言って、ギルマスはレンヤに紹介状を手渡す。
「そいつをあっちの大陸にある冒険ギルドの受付に見せれば、きっと
あの大陸のギルマスが色々と便宜をはかって優遇してくれるはずさ!」
「いいのかギルマス?こんな良い物を貰っても?」
「無論さ!お前には初心者殺し......そしてランカやミュミュの件で色々と
世話になった事だしな!だから、素直にこいつを受け取っておけやっ!」
「わかった。サンキューな、ギルマス。こいつはありがたく受け取って
おくよ!」
俺はギルマスに感謝の言葉を伝え、ギルマスの紹介状を受け取ると、
その受け取った紹介状をアイテムボックスへと仕舞い込んだ。
「あ。そうそう、ひとつ進言しておくけどよ、あの大陸の冒険者達は自分の
力を誇示していやがる連中が多い。だから迂闊な行動や言動には気をつけ......と、
言いたかったが、ルコールがいるからそいつは無理な相談か......」
「......だな。お前が言う様に、そいつらから馬鹿にされた瞬間、そいつらの事を
ボコボコにしまくるルコールの絵しか想像に浮かんでこないよ......」
「ああ......そうだな。何となく、俺もその想像が頭に浮かんできたぜ......」
「「たはは......」」
俺とギルマスは同じような想像をしてしまうと、お互いにニガ笑いを
こぼしあう。
「おっと。そういえば、ひとつお前に聞きたかった事があったんだがよ」
「俺に聞きたい事?」
「ああ。ミュミュの担当受付孃の件なんだがよ、やっぱり違う支部では
違う担当受付孃をつけなきゃいけないのか?そして担当受付孃をつけたら、
前の担当受付孃とそのランク制度は一体どうなっちまうんだ?」
俺は気になっていた事をギルマスに聞くと、
「そこは安心しろや。担当受付孃はギルド全体で紐づけされていてな、
ミュミュはお前の担当を外れる事なく以降も継させる。だからお前が
他で活躍をしても、ちゃんとミュミュにも受付孃のランク制度の
ポイントは入ってくる仕組みになっているんだ。まぁ、貰える
ポイントは違ってくるがな。例で言うなら、他の場所でクエスト等を
受け、そしてクリアした場合、そこで担当した受付孃のポイント数...
それが他の受付孃、つまりはミュミュにも約二割から~三割くらいが
入ってくる...ま、こんな感じだ!」
ギルマスは矢継ぎ早に、俺の気になっていた疑問を詳しく説明してくれた。
「なるほど......そんな感じのシステムなんだ。詳しい説明をサンキューな、
ギルマス!それがちょっとばかり気がかりだったもんでさ。あんな感じで
俺の担当受付孃になってもらったっていうのに、数日でおさらばでは、
ちょいと目覚めが悪かったからさ!」
「そっか。まぁでも、あいつに付きまとっていた案件は無事に解決したんだ。
そのおかげもあってか、今やミュミュの奴は他の人気受付孃にも負けない
くらいの勢いで冒険者との契約数を伸ばしていやがる。だからお前がいなく
なったとしても、ボッチになる心配はないだろうから、そこは安心しろや!」
「はは、そうみたいだな♪」
俺は軽く微笑んでそう言うと、忙しいそうに沢山の冒険者達と話している
ミュミュに目線を移す。




