第百八十三話・ファンタジー以外から
「だって、リオって何か氷のイメージっぽくないっていうか~?
だったらまだアイやアイスとかがマシっていうか~?あ、でもマシッて
言ってもつけて欲しい訳じゃないっすからね!そこんとこ、よろっす!」
アイス・カッターの少女がニガ笑いをこぼして、レンヤの出した名前に
ダメ出しとその理由を告げる。
それを聞いたレンヤは「あはは......り、りょうかい」と苦笑しつつも
わかったと返事を返す。
くそ~上手く掘り起こした名前だって思ったのにぃ!
さて...他の名前と言われましてもなぁ。
ぐぅ~む。氷関連とわかる様な名前がいいねぇ~?
じゃあ、定番の名前でフェンリル......は、駄目だな。動物感が大きい。
なら、ブリザードから取って、ブリザ...リザ...ザード...ブリザ......
う~ん、これはリオとそんなにセンスが変わんないって言うか、
なんかしっくりもこない。
だったら、絶対零度から......
いや、いや。初期魔法にこんな大層な名をつけたら周りから苦笑と
ドン引きを食らいそうだ。
こ、これも却下だな。
「ねぇ、ねぇ、おじさぁ~ん。まだボクの名前は決まんないのかなぉ~~?
待ちくたびれるんですけどぉぉ~~?」
地面にグサッと突き刺した剣の鍔にちょこんと腰を置くと、アイス・カッターの
少女が足をパタパタとバタつかさせながら、レンヤがつける自分の名前を
完成を待っている。
「うう...ま、待っててね。ちゃちゃっと直ぐに決めるからさ!」
「早くしてよねぇ~!」
「お、おう...」
く...そ、そう言ったものの、まったく何も浮かんでこないぞ。
おのれぃ!キミがさっきの名前で妥協していれてさえいれば、こんな苦労を
せずに済むのにぃぃぃいっ!
こ、こうなれば、ファンタジーの世界からじゃなく、俺の世界...俺の知っている
名前から色々とチョイスしていくか。
それから俺は思いつく限りの名前を思い出しては却下、思い出しては却下を
繰り返し、
「ハッ!?」
そして、とある名前に辿り着く。
こ、この名前だったらイケるかも!
そう...この名前は俺の憧れだった女性...恩師の名前で、阿井裏――
「――雪姫。ユキヒメと書いて、呼び名はユキだ。どうだろ?この名前はさ?」
「雪姫......っすか?えっと...確かに氷関連っぽい名前っすけど、でもどうして
その名前なんっすかね?」
レンヤの告げる雪姫という名前に、アイス・カッターの少女がハテナ顔をして、
何故その名前に決めたのかと理由を聞いてくる。
ので、
「え、えっと...この名前はな。そ、その...お、俺が昔憧れていた女性というか...
す、好きだった女性...っていうか、つまり言うなら、恩師の女性の名前なんだよ。
雪って字...氷っぽい字も入っているし、これがいいかなって思って。あは、あはは...」
レンヤが好意の女性と述べるのが恥ずかしいのか、顔を赤く染めて、何故その名前に
したのかという説明をアイス・カッターの少女に詳しくしていく。
「はう!?お、おじさんの好きだった人っすか!うへへ。へ、へぇ...そうっすかぁ。
それを他の女につけるなんて、おじさんって、ホンッットに、センスの欠片も無さ
過ぎだよねぇ♪」
「う、うぐ......」
自分の好きだった子の名前だと聞いて、アイス・カッターの少女がニヤニヤした顔で
レンヤを小馬鹿にしてくるが、正論なのでレンヤは何も言い返せなかった。
「で、でもまぁ、うふふ...うふ。う~ん、ここはしょうがないっす。これ以上
待ってもどうせ大した名前は出そうもないだろーし、妥協するっす。もうその
名前...雪姫でいいっすよ♪」
しかしアイス・カッターの少女は、やれやれと愚痴と文句をこぼしはするものの、
その表情はニヤニヤとニヤケ、そして頬は赤く染めながらレンヤに雪姫でいいと
告げる。




