第百七十九話・魔法擬人化同士の闘い
「いや。消えろよ、白いの!主は我以外はいらんと言っている!」
「断るっす!」
「ぐぬぬ。おのれ...ならば、腕ずくで消す。それしか道はなし!」
フレイがムムッと苛立ちを見せると、炎色をした大きな剣を手に取り、
アイス・カッターの少女に向けてビシッと突き出す。
「ふふん♪面白い事を言うじゃない、赤いの!そんじゃ、ボクがそれを
無様に返り討ちにしてあげるっすよ!」
アイス・カッターの少女も同じく、氷色をした大きな剣をフレイに向けて
ビシッと突き出す。
「はん...泣き虫に負ける道理は一目も瞭然。くたばれ、白いの!」
「う、うっさい、泣いてなんていないし!目に入った汗が流れただけだしぃ!」
「くくく...苦しい言い訳だな、白いの。見苦しさ、この上なしだ!涙なんぞ、
弱者の流すものぞ!」
言い訳をしてくるアイス・カッターの少女に、フレイがニヤリと口角を上げ、
やれやれといった嘆息を吐いて呆れてしまう。
「ギギギィ!く、苦しくなんてないしぃー!ホントだしぃー!それに何が
弱者の流すよ!それを言うんだったら、あんただって、さっきボロカスの様に
泣いてたじゃんかぁあっ!」
「あ、あれは違う!あれは錯覚!け、決して涙ではなし!」
顔を真っ赤にしてアイス・カッターの少女が突き出した人差し指をフレイが
パンッと跳ね除けると、目線を横に反らしてしどろもどろの表情で苦しい
言い訳をする。
「そ、そんな事より、決着の続きだ、白いの!」
そして、フレイは自分が泣いた事を誤魔化すように話をさっさと終わらせると、
手に持った大きな剣に赤い炎をメラメラと燃え盛らせ、アイス・カッターの
少女の前に再びビシッと突き突ける。
「おっと。そうだった!か、覚悟しなさいよ、赤いの!ボクに剣を向けた
その行為、死んだ先でも後悔させてあげちゃうんだからっ!」
それを見たアイス・カッターの少女も、先程まで泣いていた顔を真面目モードに
切り替えて、手に持った大きな剣に氷をキラキラと煌めかせると、フレイに
ビシッと突き出す。
そんな二人のやり取りを見ていたギルマスとサオリナが大慌てざまに、
「お、おい、レンヤ!何をボサッとしていやがる!い、急いであいつらを
とめろやぁぁあっ!と、特級同士のあいつらが本気で戦闘なんてしたら、
このギルドなんぞ、一瞬で跡形もなく消滅してしまうぅぅぅうっ!!」
「そ、それだけで済めばいいですけど、下手したら最悪...いいえ、確実に
リタイの町にも被害が拡がってしまいますわっ!」
「いや、いや、いや!い、いくらなんでもちょいと大袈裟過ぎではないか、
ギルマスもサオリナさんも。特級とはいっても、所詮は子ども同士の
喧嘩じゃないか?流石にそこまでの被害を被るわけが...そ、そうだよな、
ルコール?」
「う~ん、そうだねぇ~?あの魔法っ子二人から感じ取れる魔力の大きさ...
うん!ギルマス達の言う様に大袈裟でもなんでもなく、リタイの町が殆ど
残らず、完全崩壊するレベルだと思うよ?」
「ほほ、殆ど残らずの、かかか、完全崩壊っ!?」
うそぉぉおぉぉおぉぉ―――――――っっ!?
マ、マジでそんなに強いの、あいつら!?
あ、あの容姿であの風貌なのに!?
どこをどう見ても、十才いくかどうかの少女なのに!?
こ、こいつはマズイ......最大級にマズイ展開だっ!?
も、もしリタイが完全壊滅なんて事にでもなってみろ。あの城からの
手配がくるどころの騒ぎではなくなってしまうじゃんか!
全国津々浦々でお尋ね者決定じゃんかぁぁぁあっ!!
どこまで逃げても、お尋ね者として追いかけられてしまうだろう未来に、
俺は顔色を真っ青に変えてゾッとしてしまう。




