第百七十四話・魔法擬人化の召喚
「ま、魔法擬人化の召喚!?なんだよ、それって!?」
そんなギルマスが動揺しながら放った『魔法擬人化の召喚』という発言に、
俺はそれってどういう事とギルマスと同じく動揺していると、
「えっとですね、レンヤ様。魔法を初めて発動させた際、極まれに魔法では
なく、擬人化された『魔法精霊』と呼ばれる精霊が召喚される事があるんですよ!
その確率は0.00001%といわれています。この数値を見ても分かりますように、
魔法の擬人化はレア中の超、超、レアなんですよっ!」
サオリナさんは瞳をキラキラと輝かせて、少し興奮気味な口調で俺に対し、
魔法擬人化の詳しい説明をしてくる。
「0.00001%...そ、それは凄い確率だな...。そ、それでさ、つかぬことを
聞いちゃうんだけど、次に魔法を発動させたら、今度はちゃんと普通に
フレイム・カッターは発動するんだよな?」
俺はおそるおそる、ギルマスに不安に思った思っている疑問を問うと、
「いや、一度擬人化した魔法は、ずっと擬人化したままだぞ!」
「嘘ッ!?」
ギルマスはあっさりとした口調で俺に衝撃事実を返してきた。
マ、マジでかぁぁぁぁっ!?
「やっと...やっと、習得できた魔法だと言うのに、もう二度と使用する事が
できない......だ...とっ!」
俺がギルマスの言葉にショックを受けて、頭を抱え苦悶していると、
「うう、主。我、そんなにいらない子?」
俺の心足らずな言葉を聞いて、フレイム・カッター少女のルビーの様な
真っ赤な両の瞳がうるうるとなって、涙がドンドン溜まっていく。
―――はう!?
「い、いや!ち、違う、違うんだよっ!たださ、初めての魔法だったからさ、
ちぃとばかり、残念だったというか!ガッカリしちゃったというか!」
「ざ、残念!?ガ、ガッカリ!?」
レンヤの更なる心足らずな言葉に、フレイム・カッター少女の両の瞳に
溜まっていた涙がバッと溢れて流れ出す。
「はう!?う、嘘ですっ!キミを召喚できて、ホントラッキーだな、俺ッ!
この上ない幸運だぜい、イェ~イッ!」
「ぐす......ホントか、主?」
レンヤの見せる笑顔のサムズアップに、少女が瞳から流れる涙をゴシゴシと
こすると、上目遣いでレンヤの顔を覗き込んで問いかける。
「あ、ああ、ホント!ホントッ!やったね、俺ッ!」
「そっか♪それならば、良かったぞ♪」
レンヤの言葉を聞いて、少女はニカッと微笑むと、安堵に胸を撫で下ろす。
「うぷぷぅ♪良かったじゃん、レンヤ。レアな魔法ゲットできてさぁ~♪」
「キッ!」
お、おのれ、ルコールのやつめぇ~っ!
忌々しい程に爽やかな笑顔でケタケタと笑いやがってぇぇえっ!
後で覚えていろよっ!
それより、今はこの子が先だな。
「えっと、キミ。キミって、名前はあるのかな?もしあるなら、キミの名前を
教えてもらってもいいかな?」
「......ふ!我の名はフレイム・カッター!それ以上でも、それ以下でもなし!
なので、我の名はそう呼んでくれ、我が主よ!」
「う~ん。そう呼んでくれと言われてもなぁ。その呼び名だとさ、何か人扱い
していない感じがして嫌なんだけど......」
「いいや、それは違うぞ、我が主!我、人にあらず、魔法なりっ!」
「だとしてもだ!これは気分の問題なんだよ、気分のね!」
それと道徳心の問題。
「そういうわけで、今からキミの事は『フレイ』って呼ぶ事にするよ!」
フレイム・カッターを省略して『フレイ』。
うん、名前っぽくていいんじゃないかな?
「ぷっ!フレイ...フレイだって~♪いや~流石レンヤ!安直過ぎるテンプレな
名前をつけたねぇ♪いや~ホント、ネーミングセンスの欠片もないんだから♪」
「や、やかましいわ!いいじゃんか、安直テンプレでもよ!この子の特徴を含んだ
名前にしたかったんだよっ!」
俺がフレイム・カッターの少女につけた名前を、くふふと笑いながら小馬鹿に
してくるルコールに、俺はムッとした顔で軽く不貞腐れる。




