第百七十二話・男のロマン&憧れ
「で、ここで何をするつもりだ?」
「ちょっと試し撃ちをばって思ってね!」
「試し撃ち?試し撃ちって何をだ?もしかして今広場で行われている
露店で、何か良い攻撃魔道具でも手に入れたのか?」
「ふふふ!違う、違う!魔法だよ、ま・ほ・う・っ!実はよ、その露店で
魔法を習得できる【ギフト・スクロール】を手に入れてな。そして遂に
念願の攻撃魔法を習得したのさっ!」
ギルマスの問いに、俺はドヤ顔でふんぞり反って、攻撃魔法を習得した事を
自慢気に話す。
「な!?マ、マジでか!攻撃魔法を習得できるギフト・スクロールって、
かなりのレアアイテムだぞ!?それを露店で手に入れたのか!?あ...!
も、もしかして、偽物とかじゃねぇのか、それ?」
「いいえ、ちゃんとした本物だよ。レンヤが魔法を習得してたのをこの目で
ちゃんと確認してるしね。だから正真正銘、本物のギフト・スクロールで
間違いはないよ!」
魔法を習得できるギフト・スクロールをゲットしたというレンヤの言葉に、
ギルマスが驚いた後、偽物じゃないかと疑ってくるが、その疑いをルコールが
軽く論破する。
因みに観察眼の事は、ドラゴンしか使えないギフト技と知ったレンヤから、
あまり大っぴらに観察眼を使えるとか言い触らすなよと、釘を刺されて
いるので言わない。
「なるほど...ステータスにギフトとして表示がされているというなら、
そいつは本物でまず間違いはないか......」
ルコールの説明を聞いたギルマスは、それだったら本物かと納得した。
「しかし、ギフト・スクロールは凄く高かったろうに、良く即決する事が
できたな?お前って、かなりの優柔不断っぽいのによ?」
「ほっとけ。俺って探求心は拒否しない主義なんだよ!でもまぁ、確かに
優柔不断は否定しないけどな!」
「あはは。私も優柔不断ですから、即決できるその性格は羨ましい性格だと
思います。ですけれども、レンヤ様も結構良いおじさんなんですから、
探求心が少しでも拒否に傾いたら、素直な判断をして下さいね。手痛い目に
合ってからじゃ遅いのですからっ!」
「たはは。ありがとう、サオリナさん。その言葉、肝に命じておくよ!」
説教の混じったサオリナからの忠告に、レンヤは素直に従う。
「それでレンヤ。一体なんの魔法を習得したんだ?」
「ぐふふふ。聞いて驚け、ギルマスさんよ!俺の習得した魔法たちは、
『フレイム・カッター』、そして『アイス・カッター』だっ!」
ギルマスの問いに、ニヤッと口角を上げたレンヤが、習得した魔法の名を
口にする。
「ほう、フレイム・カッターとアイス・カッターか。魔法使いの初心者が
使用する、基本的な初級の魔法だな!」
「初心者の魔法だろうが、初級の魔法だろうがどうでもいいんだよ!魔法はな、
夢見るロマンなんだよ!憧れなものなんだよっ!」
「ははは...ロマンに憧れねぇ。まぁ、お前のその気持ち、分からんでもないがな。
コホン!カッター系の試し撃ちか。それだったら...そうだな、あの標的を......
フム、四本くらいで足りるか?おい、サオリナ。十三番の標的を四本をここに
持ってきてくれや!」
「は、はい!十三番を四本ですね、了解です!十三の標的は...確かあの倉庫に...」
ギルマスはレンヤとの談笑を切り上げると、レンヤの習得した魔法がカッター系だと
聞いたので、その試し撃ちができるであろう標的をサオリナに命じ、グラウンドへ
持ってこさせる。




