表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/288

第百六十話・ルコールの変化 その2



―――そうなる時は大体決まっている。



それはあいつと接している時だ。


あいつの一挙一挙、それがあたしの冷静な集中を欠いてしまう。



―――あいつが嬉しそうな顔をしていると、それを見たあたしもまた嬉しくなる。


―――あいつが楽しそうに笑うのなら、あたしもまた笑顔がこぼれる。


―――あいつが窮地に立つならば、あたしはそれを問答無用で助ける。


―――あいつが嘆願するのなら、多少ごねるものの、あたしはそれを尊重する。


―――あいつが困り事に出くわしたのならば、あたしはそれを全力を以て排除して

やろうと心から思う。



あいつの事となると、あたしの思考も感情も、完全に惑溺(わくでき)となってしまう。


そしてあたしはこいつと同じ気持ちを共有しているという感覚に打ち震え、

あたしの心がこの至極なる高揚感を得る度、あたしの表情は相好を崩し、

気持ちは高ぶりを見せ、


あたしはあいつと『いつまでもいつまでも』と渇望する。



―――この痛みとこの二つの感情は一体何なんだろうか?



それを誰かに問うてみたい。


みたいけれども、最強種と謳われし、このあたしがそれを他種族に問うのは、

些か躊躇してしまうのも事実。


恐らく、ミュミュやネージュ達やプレシアに聞けば、その答えをあっさりと

教えてくるだろう。


だけどさ、なんか悔しいじゃないか。


同じ女性だというのに、なんか悔しいじゃないか。


だからあたしは、この痛みが一体なんなのか、この感情が一体なんなのか?


あたし自身がそれを理解できるその時まで、誰に聞く事も相談する事もしない。








「姉さぁぁん!レンヤ(あに)さんの居場所を見つめましたよぉぉぉっ!」


「ご苦労様だったわね、ネージュ。で、あいつはどこにいたの?」


「えっと...ですね、ここから数キロ離れた場所にある、大人の...と言いますか、

男共の遊び場、繁華街にギルマスと共に歩いて行くのを見たという情報を

情報屋から得まし―――」


「はあああぁぁあんっ!!あ、あの中年クソ野郎ぉぉぉおおぉぉぉおっ!!

あれほど再三、如何わしい店には行くなと注意をしたっていうのに、行きや

がっただとぉぉぉおおぉぉぉっっ!!!」


「は、はひぃぃいぃぃ!?」


ネージュが言いにくそうに告げてくるあいつの居場所を聞いた瞬間、あたしの

怒りのボルテージが最大まで上昇し、身体中が凄まじい闘気で包まれていく。


「い、怒りを抑えて下さい、姉さん!チ、チビってしまう!姉さんから溢れ

まくっている怒りという名の殺気で、マジで全身から色々とチビってしまい

ますからぁぁああぁぁっ!!」


大地が震わせる程のルコールの激昂なる気迫に、ネージュが顔を真っ青に変え、

身体中をブルブルさせながら、ルコールの怒りを必死に抑えようしている。


「おっと、ゴメン、ゴメン。つい怒りで我を忘れてしまった、あはは...。

それじゃ早速、そのあいつがいるという場所に案内して頂戴な、ネージュ!」


「ハイ!了解です、姉さんっ!アンナが先に繁華街に出向いてレンヤ兄さんの

動向を探っていますので、ウチらも急ぎそこに合流をしましょう!」


「わかったわ!」


待ってなさいよ、レンヤ!


あんたをとっちめて、この痛みを取るべく、その口から謝罪の言葉を

タップリと吐かせてやるからねぇっ!


あたしは心の中でそう大きく声を上げると、レンヤがいるという繁華街へ

ネージュと共に猛ダッシュで駆けて行くのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ