第百五十三話・ネージュとアンナの心変わり
「そ、その人をコケにした辛辣した言葉使いと、人を人と思わない蔑む様な
目線!?や、やっぱり、他人の空似じゃなかったぁぁあぁっ!?な、なんで
お前らがルコールと一緒に行動を共にしていやがるんだよ!?」
「ふ...それは簡単な答えだぜ、ギルマス。あたいがここにいらっしゃる
ルコール姉さんの比類のない...そして圧倒的なる強さに敬服と尊敬の念を
抱いたからさ!もう姉さん、マジで素敵過ぎですっ!!」
「わたくしもネージュと同意見です。ルコールお姉さまの躊躇なき行動力、
そして情けも慈悲も、一切かける事のない即・決・力・っ!はぁ~今思い
出しても痺れ憧れてしまいますわぁぁあ~~♪」
再び問うてくるギルマスに、ネージュとアンナリッタがルコール偉大さを
熱く熱くと語りながら、その表情は恍惚の心に酔いしれて、身体中から
うっとりオーラを溢れ出している。
「な、なんだと...マ、マジでか!?あの人の話を一ミリも聞かない事で
定評のあるこいつらが、こ、ここまでも変わっちまうのかぁっ!?」
完全にルコールの手下化している、アンナリッタとネージュを見て、
ギルマスがわなわなと震えながら目を大きく見開き驚愕する。
「ホント信じられないぜ......ん?そ、そう言えば、お前らのリーダーの
ランスはどうしたんだ?見た所、あいつの姿がどこにも見当たらないが?」
動揺していた心が少し落ち着いたギルマスが、改めてアンナリッタと
ネージュを見ると、そこに俺様主義者こと、ランスのこの場にいない事に
気づき、ギルマスがそれをネージュとアンナリッタの二人に問う。
「ああ。はいはい、ランスねぇ~。あいつなら宿屋でルコール姉さんに
ボコボコにされた後、例の大好きな母親んとこに泣きつく為、屋敷へと
スタコラと帰っていったぜ!」
「まったく、いつまで経ってもママ、ママと甘えて。あのランスには
困ったものですわ!本当に嘆かわしいこと、この上なしですわよ!」
ギルマスに問われたランスの事を、ネージュとアンナリッタが心底呆れた
表情と口調でそれぞれ愚痴をこぼす。
「なぁ―――っ!?ど、どんな粗相や悪さをやらかそうが、それを許して
ランスに付き従っていたお前らが、そのランスの野郎を卑下し、蔑んで
いやがるだとおぉぉおっ!?」
ランスへの不満をこぼしているネージュとアンナリッタに、ギルマスが
信じられないものを見たという喫驚な表情で、大きく口をアングリと
させてしまう。
そんな中、未だにルコールからアイアンクローを食らっていたレンヤが、
「あ、あの~ルコールさん。そ、そろそろ、こ、この手を離してはいただ
けませんでしょか?な、なんかさ、俺の頭蓋骨全体にメリメリという音が
響き渡ってきているんですけど?」
...と、ルコールに嘆願&懇願をすると、ニコリと笑っているが瞳の奥が
まったく笑っていないルコールから「―――本当に反省したの?」と
問われたので、
「は、はいっ!心の底から猛烈な反省をいたしましたぁぁぁあっ!!」
レンヤは頭蓋骨がメリメリと軋む音を脳裏で聞きながら、必死な口調で
謝罪を口からこぼしていく。
「ったく......次はないからね、わかった?」
「へへええ!お任せ下さいな、ルコール様っ!その期待、今後は絶対に
裏切りやしませ―――はぎゃっ!?」
もう一度レンヤに反省の言葉を促すルコールに、レンヤは拙い敬語で反省の
意を口にするが、その敬語にイラッときたのか、ルコールは掴んでいる手に
少し力をグイッと込め、そしてレンヤの顔からアイアンクローを解くのだった。




