第百五十二話・あれ?思っていたのと違う?
「ゴオラアァァァァッ!レンヤァァァァァァッ!!」
「はう!?ル、ルコール!?な、何でお前がここ――――アギャ!!」
いきなり引き戸が大きな音を立てて、ガラッと開いたかと思った瞬間、
勢いよく店に突入してきたルコールから、レンヤは思いっきり顔を
鷲掴みにされる。
「おい!ドスケベ中年野郎!あれ程如何わしい場所には行くなと何度も
注意しただろうがぁぁぁぁあいっ!」
「いででででででででででででぇぇえぇぇっ!!?」
「この覚えの悪い頭、粉々に砕いて粉砕してやろかああぁぁぁ...あ...ぁ...
.........ん?あ、あれ!?!?」
ルコールは鷲掴みにしたレンヤを天につく勢いで上に持ち上げ、怒りを
露にしながら文句を叫声しようとしたその瞬間、ふと周囲に顔を向けると
そこには表にある繁華街の様な派手さの一切ない店の内装、その中央には
割烹着を着た女性...
そしてお互いを抱き合いながら、ブルブルとその身を震わせ怯えている
エプロン姿の少女二人が目線に映った。
「どういう事?こ、このお店エロさの欠片もない......寧ろ、質素?」
自分の思っていたものとは全く違う風景を目の前に、ルコールが「はい?」と
首を傾げていると、
レンヤの横にいたギルマスが、
「あ、当たり前だろうが!ここは居酒屋なんだぞ。あんな表にある様な
ド派手な店と一緒にするんじゃない!ここはな、のんびり静かにお酒を
嗜む場所なんだ。それによ、もうちょっと静かに入ってこれないのか?
見てみろ、そのせいで女将さん達がスッカリ怯えているじゃねぇかっ!」
ルコールの破天荒な行動に対し、額から冷や汗を落とつつも、冷静な口調で
注意と説教を口にする。
...がしかし、
「グチグチ、グチグチとうっさいわね!あんた一体誰なのよ?他人のあんたが
あたしとこいつのやり取りに口を挟むんじゃな.......はて?このしゃがら声?
どこかで聞いた事があるような??」
自分の制裁に口を出してくるギルマスに対し、ルコールが文句を言おうと顔を
ギルマスのいる方に向けて、キッと睨もうとした瞬間、
「ああぁっ!そ、そのツルツル頭!あんた、冒険ギルドのギルマスじゃんっ!」
「人の頭を見て俺だと気づくんじゃねぇ!レンヤといい、お前といい、ツルツル
ツルツル連呼しやがってぇぇえ!これは剃っているだけと何度も何度も何度も、
なぁぁぁあんども、繰り返し言っているだろうがぁぁぁあぁぁいっ!!」
ギルマスが何度もハゲ呼ばわりされる事に、マジ怒りで顔中を真っ赤しながら
叫声を荒らげる。
ぷっ!茹でタコみたいだな♪
鷲掴みにされている隙間から見えるギルマスの真っ赤な顔を見て、レンヤは
思わずそう呟き、吹き出しそうになるが、更に怒りを買うのは目に見えて
いるので、レンヤはその言葉を口にはせず、口の中でグッと抑え飲み込んだ。
「やれやれ...そこまで否定するほどのもんかなぁ~。それよりもここはさ、
のんびり静かにお酒を嗜む場所なんだよ?そんなお店が壊れそうな大声を
出すのは厳禁じゃないかな~♪」
「―――はぐ!?」
ルコールが軽い嘆息を吐きつつ、大声を荒らげるギルマスに先程のお返しと
いわんばかりの意趣返しをすると、それに気づき自覚したのか、ギルマスは、
怒りで真っ赤になっていた表情を一瞬で元に戻していく。
「ゴ、ゴホンッ!と、ところでよ。さ、さっきから気になっていたんだが、
そ、そこの二人の女。言うまでもなくネージュとアンナリッタ......だよな?」
ルコールの意趣返しを誤魔化す様にギルマスが大きく咳払いをして話を切り
替えると、ルコールの左右にふんぞり立っている二人の女性...
ネージュとアンナリッタに顔を向け、さっきから思っていた疑問を投げる。
「ええ。そうですけど、それがどうかなさいましたか?」
「はん、見りゃわかんだろが!てめえの目は節穴かよ、ギルマス?」
そんなギルマスの疑問に、アンナリッタとネージュがやれやれといった口調で
それぞれ返答を返していく。




