第百四十八話・おっさんの爽やか笑顔
「イヤ~でもホント、お久しぶりだよねぇ~ギルマスさん♪あ。女将さん、
はいこれ。女将さんに頼まれていた品です!」
「そしてこっちの袋が、鍛冶のダンナさんに頼んでおいた包丁です!」
シルビアとオリビアが女将の所に近づいていくと、お使いで頼まれていた
品々を女将に手渡す。
「ねぇねぇ。そういえばさ、ギルマスさん。積んドコしているとか言っていた
書類の方はもう片付けて終わったの?」
「おう、何とか...な。飲まず食わずで作業すること、一週間...あくせくと
必死に頑張り抜いて、やっと終わらせる事が出来たぜ!」
ギルマスはニガ笑いをこぼしつつ、仕事の完了を告げると、
「おお、それはおめでとうございます!」
それを聞いたシルビアは、お疲れ様とパチパチと手を叩く。
「これでしばらくは絶っ対に徹夜なんてしねぇぞぉ!......って、誓った
ばっかりだというのによぉ......ハァ」
「......ん?どったの、ギルマスさん?その目に見えてわかる落胆ぶりは?
もしかして、また書類の貯まるような厄介ごとでも舞い込んできちゃった?」
「はは...まあな。書類整理がやっと完了したって喜び勇んでいた矢先、
俺の下に徹夜決定ごとの案件が再び起きやがってな......」
ハテナ顔で首を傾げているシルビアに対し、浮かない表情のギルマスが
愚痴とため息を吐いて嘆きをこぼす。
「わお!そ、それはなんと言いますか、お気の毒様ですねぇ......」
余計な事を聞いちゃったとシルビアは苦笑を洩らし、ギルマスを慰める。
「あはは♪心中お察しするぜ、ギルマス!まぁ、しっかり頑張りたまえ♪」
そんな悄然した姿を見せるギルマスの肩を、レンヤが軽く数回パンパンと
叩くと、屈託ない笑顔を浮かべ、ギルマスを激励してくる。
「ぐぬぬ...元はといえば、お前の持ってきた案件だろうがぁぁ!」
だが、この他人事の様に語るレンヤの軽い同情が堪に障ったのか、ギルマスは
眉をピクピクとさせ、イラッとした顔でレンヤを睨む。
俺とギルマスがそんなやり取りをしていると、
「と、ところで、その...ギルマスさん?そ、そちらのいらっしゃる、
おじさまは一体誰なの...かな?」
俺がいる事に気づいたシルビアさんが、マジマジと俺の顔を見てきて、
「えっと...記憶にないから、多分初めまして......だよね?」
...という表情で挨拶してくるので、
「はい。その認識で合っていますよ、お嬢さん。こちらの居酒屋には、
ここに居られるハッピーさんのご厚意で連れて来てもらいました。
あ、申し遅れました、私の名前はレンヤと申します」
俺は爽やか全開の笑顔で微笑み、シルビアの疑問に丁寧な口調でこう返す。
「へぇ~レンヤさんって言うんだ。わたしはシルビア!で、そっちの子が
オリビアって名前です!」
俺から自己紹介を受けたシルビアさんは、自分達の自己紹介を返してくる。
「シルビアさんにオリビアさんですね。お二人ともとても素敵なお名前です♪
ここで会ったのも何かのご縁。見た目通りの中年ではございますが、良ければ
お見知りおきを下さると大変嬉しいです♪」
「はい!勿論ですよ!」
「こ、こちらこそよろしくお願いしますね、レンヤさん!」
レンヤから紳士的な挨拶を受けたシルビアとオリビアが、にこやかな笑顔で
頭をバッと下げると、レンヤに改めて挨拶を交わしていく。




