第百三十九話・魔石とは?
それから俺とギルマスでしばらく歩く事、数分後...
ギルマスの隠れ家があるという場所近くまで辿り着いた。
「おお。こ、こいつはスゴいな...」
赤や青、そして黄色等々のド派手な光の入り混ざった色んな看板が
あっちこっちに見える。
でもあの看板たち、何で電光色みたいにピカピカと光っているんだ?
確かこの世界に電気的な設備は無かったと思うんだけど?
あの城やこの町のどこにも、そういった類いの電気を使った道具や
場所を見なかったよな?
...と、俺が思考していると、
「ん?どうした、レンヤ?何か気になる店でもあったのか?」
ギルマスが俺の目線先に自分の目線を同様に向けながら、そう問うてくる。
そんなギルマスに、
「いや...店が気になるって訳じゃないんだがよ。ただ、何であの看板たちは
あんなにもピカピカ光ってるのかなと不思議に思ってさ?」
俺は首を軽く横に振って、ギルマスの問いを否定すると、さっきから気に
なっていた看板たちに指を差す。
「あの看板の光が気になる?ああ、はいはい!あの看板がどうやって光って
いるのか、その仕組みが気になるって事か?あの看板が光っているのはな、
【魔石】を使っているんからだよ!」
「......魔石?なんだ、その魔石っていうのは?」
「へ!?お、お前、魔石を知らないのか?お前んとこにも魔石を使った
道具や魔物はいただろう?」
はい?ま、魔物!?
「何でそこで魔物が出てくるんだ?あ、もしかして魔物とその魔石って、
何かしらの関連性があるのか?」
「関連性大有りだっ!魔石はな、魔物達が稀にドロップするアイテムだぞ?」
魔物のドロップするアイテム?
「へぇ...魔石って、魔物がドロップするアイテムなんだ?」
「おいおい、その表情...マジで知らないのか?魔物が魔石をドロップするのは、
一般人でも知っている情報なんだが...?」
ギルマスが「嘘だろ!何で知らないんだよ!?」...といった目線で、俺の顔を
ジィィーッとガン見してくる。
し、しくじったぁぁぁあ―――っ!
ギルマスの言動を聞くに、その事は知っていて当然という感じじゃん!?
今さら...
「う、嘘だよん!お前をちょいとからかってみたかっただけさ...あはは♪」
...って、誤魔化すには、些か流れが不自然過ぎる!
だ、だがしかし...
ここで何とか上手く誤魔化しに成功しないと、これが原因で俺が異世界の
召喚者だという事がバレてしまうやもしれん!
も、もしそんな事にでもなろうものなら、あの城に俺の報告が速攻で
伝達されてしまい...
「永遠の牢獄暮らしへ、ようこそ♪」
...と、なってしまうじゃないかぁぁぁぅぅぅっ!
俺は考えなしに迂闊な質問をしてしまった事を、激しく後悔してしまう。
と、とにかく、思い付く限りの適当な言い訳を並び立てて、な、何とか
失態を誤魔化さないとっ!
「あは、あははは...お、俺が魔石の事を知らないのはな、俺がいた村ってさ、
かなり自然を大事にする村でよ、だからあんまり道具には頼らない、そんな
暮らしをしていたからなんだよ。そ、それに俺、一度も魔物から魔石を
ドロップした事が無かったんだ。だ、だから、魔石の事をまったく
知らなかったって訳なのさ!」
「...............」
ど、どうだ......!?
ちょっと苦しい言い訳だったのは否めないけど、は、果たして上手く
誤魔化す事はできた......か?
ドキドキ...ドキドキ...
「ガハハハッハッ!そっか、そっか...自然を大事にしているかぁ~♪それに
一度も魔石をドロップした事がないってか!それはマジで運が無いなぁ~♪」
俺の言い訳と誤魔化しが上手く成功したようで、ギルマスが俺の背中を
バンバンと強く叩くと、大声で笑いながら慰めの言葉を投げかけてくる。




