第百三十七話・秘密の隠れ家
ズキン三馬鹿トリオ達による、新人殺しの案件と、ランカさんの
罰の内容を何とか片づけ終わり、宿屋へと帰路したその深夜。
「.........」
「.........ZZZ」
「.........」
「.........ZZZ」
「......うっし。ルコールの奴、やっと眠ったみたいだな。それじゃ行くと
しますかね♪」
俺はルコールが寝静まったのを確認した後、ベッドからゆっくりと
降りて床に足をつける。
「しっかし、ギルマスめぇ~。粋な真似をしやがって......ぐふふ♪」
そう...俺がギルドから出ようとしたその時、ギルマスが手振りによる
ジェスチャーと口パクを駆使して、ルコールに気づかれないよう、
俺に何かを伝えようとしている事に気づく。
そして、その内容は...
『今夜、町の中央にある大広場。その街灯の下まで来られたし』
...だった。
俺はルコールに気づかれない様、ギルマスに『了解』と言わんばかりの
サムズアップを静かにスッと突き出す。
よっしゃい!
夜のリタイの町をタップリと堪能させていもらいますぜぃっ!
...って、意気込んでいたのに、まさかルコールの奴がいつまで経っても
全く眠りやしないとは!
ホント、計算外もいい所だぜ!
もしや俺とギルマスの約束に気づいての行動かと思い、慎重にルコールに
気を集中し、嘘寝かどうかを確認していたが...
あの寝息を聞くに、その考えは杞憂だったようだ。
「さぁて...ここで気づかれては木阿弥だ。外に出るまで油断せず......
音を立てずにゆっくり、ゆっくり......」
俺は音を立てない様、ドアに向かって抜き足、差し足、忍び足で
歩いて行き、そしてドアの前に辿り着くと、ドアノブを静かに静かに
ゆっくりと回してドアをソッと開けていく。
「ふう...何とか開いたな......」
ドアが音もなく無事に開いた事を確認した俺は、グーグーと寝ている
ルコールに顔を向け、
「じゃ、ルコール♪朝までグッスリとお休みしててねぇ~♪」
...と、にこやかな笑顔俺はそう述べると、再び音が出ない様にドアノブを
静かに回していき、ドアをパタンと閉めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おお、やっときたか、レンヤッ!」
「待たせちまったな、ギルマスッ!」
大広場の街灯下で待っていたギルマスが俺に気付いて手を挙げてくる。
俺はそのギルマスに向かって、駆け足で走って近づいて行く。
「随分遅かったじゃねぇか、レンヤ。あまりに遅いからよ、ひょっと
したら俺のジェスチャーが通じていなかったのかと思っちまったぜ♪」
「ホント待たせてすまなかったな、ギルマス。ルコールの奴がさ、中々
寝てくれなくてさ、部屋から出るのにひと苦労してしまったよ!」
ニカッとした表情でギルマスが愚痴っぽい文句を洩らすので、俺は謝罪を
口にし、遅れた理由をギルマスに話す。
「ん?ルコールが寝てくれなくて?部屋から出るのに...ルコールの眠りが
関係す......ああ、はい、はい。そういう事ねぇ~♪そっか、そっか~。
お前達って、やっぱりそういう関係だったんだな♪」
レンヤの遅れた理由を聞いたギルマスは、首を傾げてハテナ顔をするが、
何か感づいてピンッときたのか、手のひらをポンッと相槌を打った後、
「ガハハ♪」と笑いながらそう述べ、俺の肩をパンパン叩いてくる。
「ちょ、ギルマス!へ、変な勘繰りをしている所を申し訳ないんだが、
別に俺とルコールはそんな仲じゃないからな!ち、違うからなっ!」
ど偉い誤解をして豪快に笑っているギルマスに、俺は目を大きく見開いて
叫声を上げて、それは勘違いだと否定をする。




