第百三十五話・リコット王女の失態
「い、いやいや、リコットさん!その絶望とも言える表情と口調は
成功した者の態度じゃ全然ないからね!もう、一体全体なにがあったって
いうのよ!?話を聞いてあげるから、私に全部話しなさいなっ!」
「あ、ありがと、アリア。じ、実はね.........」
リコットはあの勇者召喚時に起こった、ことの経緯をアリアに話していく。
「ふええぇえぇぇえっ!?て、手違いでその勇者のおじ様を怒らせて
しまった挙げ句、ゴミの様に城から追い出す結果を作ってしまった
ですってえぇぇぇえぇええ―――っ!!?」
リコットから告げられた、勇者召喚での経緯を全て聞き終えたアリアは、
想像していた以上の衝撃事実に、目を見開いて喫驚してしまう心からの
叫声を荒らげてしまう。
「ちょ!?人の話をちゃんと聞いていた!?ち、違うからね!け、決して
ゴミの様に追い出してなんかいませんからねぇぇえっ!」
「でも、あんたの態度が露骨な程に酷かったせいでその勇者のおじ様は城を
出て行く羽目になったんでしょう?じゃあ、あんたが追い出した様なもの
じゃないのさっ!」
「はう!?はううううぅぅぅううっ!!?」
勘違いだ、誤解だと必死に言い訳をするリコットだったが、アリアから
思いっきり、正論を叩きつけられると「やっぱり、そうですよねぇ...」と
声にならない声で落ち込んだ後、ショック顔でフラフラと千鳥足の如く
後退りをしていく。
そして両手と両膝を床に突いて、思いっきり頭をガクッと下げて項垂れる
リコットだった。
......なるほどね。
えらくリコットが落ち込みを見せると思ったら、そういう事だったのね。
いくら自分好みのストライクが現れたからって、そんなテンパり行動を
取っちゃうだなんて、
ホントおじ様が好みなんだねぇ、リコットってば......はは。
「でもさぁ、あれだけの悪態を私についておきながら、まさか私以上の
酷い仕打ちをしていただなんて、ホントビックリ仰天だよねぇ~♪」
「はうぅぅぅぅっ!?」
先程言われたリコットの嫌味を少しだけ根に持っていたアリアは、
ここぞと言わんばかりの意趣返しをすると、リコットが目を丸くし、
さっきより更にショックを受けて両手と両膝を床に突きつけると、
頭が床につくような勢いで物凄くガクリと項垂れ崩れてしまう。
「それでリコット。その勇者のおじ様の捜索はしているの?」
「うう...それがですねぇ。あの御方を捜索したいのは山々なんだけどさ、
あの御方の情報が乏しいのよ。なにせ、あの御方とは殆ど会話をして
いなかったし、名前さえ聞いていないだもん......」
リコットが呟くようにアリアの問いにそう答えると、自分の行動不足に
無念とばかりに顔色を哀しく変えて両手の人差し指の先をチョンチョンと
突つきながら、両の瞳にウルウルと涙を溜めていく。
「ありゃりゃ。その勇者のおじ様の名前も聞かずに城から追い出し
ちゃったんだ?私もあんま人の事は言えないけどさぁ、あんたも結構な
手痛いミスをやらかしちゃってるねぇ......あはは」
目の前で全開で後悔に念に苛まれているリコットを見て、アリアが
ニガ笑いをこぼしながら同情の念をこぼす。
捜索したくても情報が......か。
......あっ!
そうだ!良いこと思いついちゃったっ!
「ねぇ、リコット!私、良いアイデアを思いついちゃったよっ!」
「ほえ?い、良いアイデア......ですか?」
「うん。その勇者のおじ様の顔は一応覚えているんでしょう?」
「勿論ですよ!一応どころか、あの御方のお姿は脳裏の隅々にクッキリ、
ハッキリと焼きつけていますわよっ!」
アリアの言葉に、リコットが自信満々のドヤ顔で胸をドンと叩く。




