第百三十四話・勇者召喚を問われて
「でもまぁ、そんな目に合っても文句は言えませんか。だってキサリ皇后に
言い寄ってきた男連中どもって、大概がキサリ皇后の王族の地位を理由して
その実権や主権を掌握したい、只それだけの欲にかられた連中ばっかり
だったんでしょう?」
「うん、リコットの言う通り。そのせいでお母様ってば、男性に対して
疑心暗鬼の心を持って接するようになったしまったんだよねぇ......」
「「はあ...ホント、貴族の男性って、ロクデナシばっかりだよねっ!!」」
リコットもアリアも身に覚えがある案件なので、そんなキサリ皇后の
気持ちに同調を感じ、思わず本音が口からこぼれてしまう。
「でもそんな中、レンヤおじ様は誰もが助ける事に躊躇するだろう、
あの危機的状況に颯爽と現れて自分の窮地を救ってくれたんだよ!
あれはさ、お母様じゃなくとも乙女に変わるのは当然の話だよ~♪」
勿論、私も含めてね......キャッ♪
その状況を思い出したアリアは両手を頬に持っていくと、その頬を
ポッと赤く染めていく。
「そっか~。あのキサリ皇后が乙女にねぇ~。あなたとキサリ皇后を
そこまでに惚れさせてしまうだなんて、とても魅力ある御方だったんで
しょうね?そのレンヤ様という御方は?」
「ふふ、まぁねぇ~♪」
リコットの羨望なキラキラ眼差しでの問いに対し、アリアが満面のニカッと
したお日様笑顔で即答する。
「くうぅぅ。その屈託のない表情!ハア~私もますますそのレンヤ様って
御方にお会いしたいですわぁ~~っ!」
即答した後にアリアの見せる恍惚な表情を見て、リコットが羨ましさと
嫉妬の入り混じった笑顔で悔しがってしまう。
「あ、でもこんな色話。もしあなたのお父様...ザルジ皇帝のお耳に入りでも
したらまずくない?」
「あはは...多分、それは大丈夫だと思う。あんまりこんな事を言いたくは
ないんだけど、うちのお父様ってさ、王位にや実権に全く興味がなくってさ。
それらを全部お母様任せにし、外で遊び回っているかなりのチャラくて
ナンパ野郎さんでさぁ~だからもしお母様をそんな事で怒ろうものなら、
逆に怒涛なる説教と強烈ビンタを食らうのが関の山だよ。ったく、一国の
王の癖にホントだらしがないんだから!この間だって......ぶつぶつ」
アリアが眉をピクピクとさせて苦笑しながら、毎日の様に城のメイドや
お付き人にちょっかいをかけたり、果てには貴族の娘や平民の娘にナンパを
しまくっている情けない父親の姿を思い出すと、溜まった鬱憤を晴らすかの
如く、愚痴や文句を次々とこぼしていく。
「ふう。あんなクソでチャラチャラ父の話はここまでにして、それよりも
リコット。聞いたよ~!あんた、ついに勇者の召喚を成功させたんだって!
いや~本当におめでとう♪これであんたも晴れて聖女様の仲間入りじゃん♪」
アリアは情けない自分の父の話題を強引に打ち切り、先程城内で聞いた勇者
召喚の話題へと切り替える。
「えへへ。ありがとう、アリア♪おかげさまで無事に勇者様を召喚する事が...
でき...ま...あはは......はは............ハアアアア~~~~っっ!!!」
アリアの賛辞にリコットが笑みを浮かべて喜ぼうとしたその瞬間、リコットは
勇者召喚での失態をふと思い出し、その表情をガクッと暗くしていき、言葉の
トーンがドンドン下がっていく。
「ちょ!?い、いきなり、どうしたのよ、リコット!?突然そんな浮かない
顔に変わって溜め息を吐いちゃってさ!?ゆ、勇者召喚は無事に成功した...
...んだよね?そうなんだよねぇ??」
そんな見た目でわかるくらいの落ち込みを見せるリコットに、アリアが
動揺したハテナ顔でそう問うと、
「ええ。成功はしましたよ。成功はねぇ......あはは......あははは......
ハァァァアアア~~~~~っっ!!!」
アリアの問いに力のない口調でそう答えた後、リコットの表情が更にドンと
落ち込んでいき、さっきよりも更に深い溜め息を口からこぼすのだった。




