第百三十一話・リコット王女とアリア皇女
「うふふ。相も変わらない、良い家族みたいですね。本当にとても
羨ましい限りですわ♪」
「おっと...すまん。そちらの事情はあまり芳しくないんだったな...」
表情の曇るキサリ皇后に気づいたトーヴァス陛下が、空気を読めずに
申し訳なかったと謝罪する。
「いえ...こちらこそ陛下に気を使わせてしまいました。こんな状況下に
陥ったのも、全ては愚かな義兄様のせいで......」
キサリ皇女が愚かな義兄、ヴィレンの事を思い出すと、その表情が困惑と
怒りの入り混じった表情へと変わり、口から無念の言葉をこぼす。
「ふむ。その表情を見るに、どうやら色々と込み入った事情があるみたいだな。
オッホン。ではそこら辺の詳しい事情を知りたいので、あそこに見える部屋で
その事情を聞かせてもらっても良いかな、キサリ皇后?」
「勿論です、トーヴァス陛下。私はその為にここ...ギガン城へと参ったの
ですから......」
トーヴァス陛下が王座の後ろ側に見えるドアを指差し、そこでキサリ皇后達に
起こっている事情を聞きたいと告げると、キサリ皇后女は勿論ですと小さく頭を
縦に下げる。
そしてキサリ皇后は、イオナ王妃と共にトーヴァス陛下とそのドアの奥にある
部屋へと移動して行くのだった。
その頃、リコット王女とアリア皇女は。
「ではアリア皇女。お父様達のお話が終わるまで、私達はしばらくこの部屋で
待機していましょうね♪」
「はい。そうですね、リコット王女!」
謁見の間から少し離れた場所にある、王族専用の大きな部屋...
そこで休憩するべく、リコット王女とアリア皇女の二人が中に入っていく。
「しかし...本当にお久しぶりですね、リコット王女。確か...貴女にお会い
したのは、三年前ですか...本当にキレイになりましたわ♪」
「あらあら。それを言うならアリア皇女こそ、三年前に会いしました頃より、
一段と...いえいえ、数段とお美しくなられているではございませんか♪
うふふ、とても羨ましい限りですわ!」
「いえいえいえ。私が数段なら、リコット王女は数十段はお美しいですわ♪」
「いえいえいえいえ。私が数十段でしたら、アリア皇女はその上...数百段を
越えてお美しいですわ♪」
「いえいえいえいえいえ。私如きが数百段ならば、リコット王女は、その遥か上...
数千段...いいえ、数万段はお美しいですわっ!」
「いえいえいえいえいえいえ。アリア皇女こそ―――――」
「いえいえいえいえいえいえいえ。リコット王女こそ――――」
アリア皇女がリコット王女に含みの見え隠れする誉め方をすると、リコット
王女もまたアリア皇女同様、含みの見え隠れする誉め言葉をアリア皇女へ
返していく。
それをしばらく続けると...
「「ぷっ!」」
「「あははは♪」」
貴族独特の誉め合戦を繰り返す、自分達の姿が可笑しくなってしまったのか、
リコット王女とアリア皇女は思わずプッと吹き出しまい、そしてお互いの顔を
見合わせると、満面の笑みでこぼして笑い合う。
「うふふ。ではアリア。ここら辺で下手な勘繰りと敬語はお開きとして
おこうか♪」
「オッケー、リコット♪私もそろそろ敬語が限界だったから助かるよ~♪」
リコットの案により、アリアとリコットは敬語をやめると、いつもの普段通りの
喋り方へと戻すのだった。




