第百三十話・ギガン城に来訪せし者
ここは王座の間...
その床一面には磨かれたピカピカと光る大理石が広がり、その中央には金の
刺繍で細工された、いかにも高級感あふれる赤い絨毯が敷かれており、
その奥には二つの王座が見え、
そこにはこのギガン城の王であるトーヴァス陛下と、その妻であるイオナ王妃の
お二人がそれぞれ座っていた。
「おお!よくぞ遠路遥々、我がギガン城へ参られた。キサリ皇后とその娘
アリア皇女よ!我が妻と娘は勿論のこと、城の者全員、そして町中の皆全ても
そなた達の来訪を熱烈に歓迎するぞ!」
「恐悦至極なお言葉。誠にありがたくございます、トーヴァス陛下!」
トーヴァス陛下の世辞に対し、キサリ皇后が笑顔を浮かべて礼を返す。
「トーヴァス陛下。私もこの城に来訪できる日を今か今かと心待ちにして
いました。それが叶い、感が極めてございます!」
キサリ皇后のとなりにいたアリア皇女も、笑顔満天でトーヴァス陛下の
世辞に返事を返す。
「ほほ...美しい淑女二人にそこまで言われると、流石にわしも照れてしまうが、
まぁ、嬉しくもあるのう♪」
トーヴァス陛下は美女の笑顔に弱いのか、少し目尻をさげて頬を赤く染め上げ
デレてしまう。
それを横で見ていたイオナ王妃が、
「コホン...トーヴァス陛下。少しばかりニヤケ過ぎではございませんか?」
ニコッとした笑顔...然れど、瞳の奥はちっとも笑っていない笑顔にて、
トーヴァス陛下の顔をジト目で睨む。
「コ、コホン...で、では、リコットよ。わしらは今からキサリ皇后と少々
込み入った話をする為、しばらく時間を取られる。であるから、アリア皇女の
お相手はお前に頼んだぞ、リコット!」
イオナ王妃から睨まれ、動揺してしまうトーヴァス陛下は、その場の空気感を
変えるべく軽い咳払いをした後、用事がある事を王座の横に立っていた娘、
リコット王女へと伝えると、アリア姫の相手をするよう、リコットへ命を出す。
「うふふ。お任せ下さい、お父様。その任、キッチリと果たしてみせます!
ではアリア皇女。休憩室に参りましょうか♪」
トーヴァス陛下から命を受けたリコット王女は、ニコリと微笑んでアリア皇女の
手をソッと取ると、休憩室のある場所に誘って行く。
「うふふ。わかりましたわ、リコット王女。では休憩室への御案内、お願い
いたしますわね♪それではトーヴァス陛下、イオナ王妃、ごきげんよう。お母様も
また後程お会いいたしましょう♪」
トーヴァス陛下とイオナ王妃...そしてキサリ皇后に向けて、アリア皇女が
スカートの左端と右端を軽く摘まんで頭をちょこんと小さく垂れると、身体を
クルッとリコット王女に向け、一緒に休憩室のある場所へと去って行った。
「しかし、あれから三年ですか...。リコット王女は凄く優雅でおキレイな
レディになられましたね。それに引き換え、うちのアリアときたら......」
「いやいや、何を言うキサリ皇后。そちらのアリア皇女こそ、見違える程の
美女になっておるではないか!あんな美しい娘がいて本当に羨ましい限りぞ♪」
「あらあら。そのお言葉...後でキッチリ、リコットに伝えておきますわね♪」
「ちょっ!イオナ!?そ、それはホント勘弁してくれぇぇ!リコットから
嫌われるのは、死ぬよりも辛い事なんじゃからぁぁぁあっ!!」
デレデレな表情でアリア皇女の事を誉めちぎるトーヴァス陛下に、イオナ王妃は
眉をピクピクとピクつかせ、この事をリコットに告げると宣言すると、
トーヴァス陛下は誰が見てもわかるくらいの動揺で慌てふためき、絶叫を
荒らげながら、これでもかといわんばかりに頭を深々と下げるのだった。




