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第百二十六話・寄付のお断り


ギルマスとサオリナから懸命なる嘆願を受けた後、幾ばくかの沈黙が

その場を包んで流れていく。


そして、


「............安心して下さい、わかってますから。この事件はランカさんの

意志で行われたんじゃないって事くらいは。ですからそんなに許しを

乞わないで下さい、ランカさん。それにサオリナさんとギルマスもです!」


ミュミュは静かに口を開くと、ギルマスとサオリナの嘆願を聞き入れるように

首を小さく左右に振って、ランカが主犯じゃないのは理解していると告げる。


「それにですね。罪というのならば、私だってランカさんと同罪ですよ。

私がもっと注意深く冒険者さん達の動きや会話を観察してさえいれば、

もしかしたら、私が担当した皆さんは死なずに済んだやもしれないの

ですから.........」


そう述べるミュミュの表情は悲しく曇り、身体をブルブル震わせながら

無念と後悔の念をこぼす。


「ち、違う!それは違うよ、ミュミュ!?わ、わたしがみっともない嫉妬を

してしまったからであって――――うぐ!?」


「おっと。もうそこまでしましょうよ、ランカさん。これ以上の「たられば」は

きっと、お互いを苦しめるだけですよ......」


ミュミュの言葉を聞いたランカは、慌てて自分こそが悪いんだと反論しようと

するが、二人の間に割って入ったレンヤがランカの口元前にスッと手を突き出して

その反論の言葉をとめる。


「今さらどう足掻いても、どう後悔しても、過去には戻れる事は叶わないし、

変える事も出来やしないんですから......」


「......レンヤさん」


「それにミュミュも、新人(ルーキー)殺しをやらかしていたあの連中はそれに

応じた罰をキッチリと食らうだろうし。その罰を以て、亡くなったみんなには

贖罪としてもらおうよ......ね!」


「うう...レ、レンヤ様......」


そしてレンヤは悲しく顔を地面に傾けているミュミュに近づくと、頭の上に

手のひらをポンッと乗せ、ニコッとした微笑みを浮かべながらミュミュの頭を

優しく撫でていく。




しばらくレンヤから頭を撫でられる事により、悲しい気持ちに陥っていた心が

少し回復していき、ミュミュは落ち着きを戻す。


そしてミュミュは顔をゆっくりと上げ、何か意を決した表情へと変わり、


「あ、あのランカさん!わ、私も...その......い、良いですか?」


ランカの顔をジッと見据え、少し大きめの声でそう述べる。


「え、えっと...それって、どういう意味なのかな?」


主語を飛ばすミュミュの問いにハテナ顔となるランカが、もう一度その問いを

ミュミュに聞き直す。


「そ、それはですね!わ、私もランカさんのお詫び金に幾分かの寄付をしても良い

ですかって事です!私にはレンヤ様が出品なされた竜の素材で得られるマージンが

この後に入ってきます!だから、それをランカさんに寄付にしたいと思いましてっ!」


自分の問いに再確認してくるランカに、ミュミュが少し興奮気味の言葉で自分も

ランカの為に寄付がしたいと申し出る。


が、


「気持ちは大変嬉しいけど、それは駄目だよ、ミュミュ。被害者の立場にある

あなたからその様な施しを受けてしまったら、お詫びの意味がなくなってしまうから。

でもね、あなたのその気持ちはありがたく受け取っておくね!本当にありがとう、

ミュミュ!」


ランカが静かに首を左右に振ると、ミュミュの寄付の申し出にお断りをしてくる。


「そ、そんな事を言わず、寄付をさせて下さい、ランカさん!だって...だって、

ランカさんにはギルド就任時に、色々とお世話になりました!だからその恩を

返したいんですよっ!」


だがしかし、それでもミュミュはランカの断りの言葉に一歩も引かず、ランカへ

寄付をしたいと言葉を続けるが、


「いいや。お前は駄目だ、ミュミュ!」


側にいたギルマスがミュミュを見据え、真面目な顔でキッパリとそう述べる。


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