第百二十四話・あれも駄目!これも駄目ってさぁっ!
「くふふ♪どう?中々の良いアイディアでしょ?そのオッパイお化けならさ、
奴隷商人達にも分のある言い値で買ってくれると思うんだ♪」
「い、いや。いやいや...さ、流石に借金奴隷はやり過ぎなんじゃねぇか!?
なぁ、サオリナ。お、お前もそう思うよなっ!」
「え、ええ、そうですね!借金奴隷に落ちてしまいますと、規約上受付嬢に
復帰する事ができなくなってしまいますから......」
ドヤ顔で述べるルコールの意見に対し、ギルマスとサオリナが慌てた
表情と苦笑をこぼし、全力でルコールの意見に待ったをかけてくる。
「はあぁぁ...ったく!もう、なんなのさ!斬首も駄目!借金奴隷も
駄目ってさぁ!犯罪者の片棒を担いでいた分際で、ちょいとばっかし、
我儘が過ぎやしませんかねぇっ!」
そんなギルマスやサオリナの言い分に、ルコールが嘆息を深く吐いて椅子
からバッと立ち上がって呆れ口調でそう述べ終えると、ギルマスと
サオリナをジロリと睨む。
「う、うぐ......お、おい、レンヤ!お、お前はどうなんだよ?お、お前も
ルコールと同意見なのか?違うよな!違うと言ってくれぇぇっ!」
「ち、違うと言って下さい、レンヤ様っ!」
ルコールの少しだけ正論の入った愚痴に対し、思いっきり動揺している
ギルマスとサオリナが、救いの手を求めるような目線で俺に顔を勢い良く
バッと向けると、激おこ中のルコールに「俺はお前の意見には反対だぞ!」
...そう言ってくれと言わんばかりの表情でこっちを二人が見てくる。
なので、
「あ、ああ。うん、そ、そうだなぁ...お、俺もギルマスとサオリナさんが
言う様に、ランカさんの借金奴隷落ちには、ちと反対...かな?」
俺はニガ笑いを浮かべつつ、ルコールの意見に反対しておく。
「ほ、ほぉれ、見ろ!レンヤの奴もランカの奴隷落ちには反対だと言って
いるんだ!だ、だからよ、ルコール。ランカを借金奴隷落ちにするっていう
アイディアは却下!それでいいよなっ!」
「い、いいですよね、ルコール様!」
「ハァ、やれやれ~。その方が面倒もなく話が終わるっていうのにさぁ。
ホォンット、レンヤはお人好しだよねぇ......」
みんなに諭され、ルコールが嘆息と呆れ口調をこぼし、肩を竦めると、
さっき座っていた椅子に再びゆっくり腰を落とす。
そして椅子に座ったルコールが、背もたれに身体を預けるように寄り
かかって足を組むと、
「でもさぁ~実際問題、どうするつもりなのよ?そこのオッパイお化けの
足りないお金の件はさぁ~?」
ジト目でジィィーッとギルマスを睨みながらそう問う。
「うぐぅ!そ、それは.........そうだな。責任って言うんだったら、
俺もここの最高責任者なんだ。俺も何かしらの責を取らないといけねぇか。
よし!こうなったら、可愛い部下の為だ!俺の大事なヘソクリの全財産、
金貨二十枚を全てランカの詫び金に寄付してやろうじゃないかっ!」
ギルマスは頭をポリポリ掻いて、意を決めた表情に変わると、ギルマスは
自分のヘソクリをランカのお詫び金に寄付してやると告げる。
「駄目ですよ、ギルマス!そのヘソクリはコツコツと頑張って貯めて
いたじゃないですか!それを――」
だがランカは、ギルマスがそのヘソクリを地道に地道に貯めていた事を
知ってたので、慌てて辞退を口にしようとするが、
「二言を言わせるな、ランカ。可愛い部下の為に使うんだ。何を勿体なく
思うものか!」
しかしギルドは手を前にバッと突き出すと、ランカの言葉をとめる。
「ギ、ギルマス。ありがとう...ございますっ!」
そんなギルマスの心意気に、ランカは感嘆の表情を見せてギルマスに深々と
頭を下げると、瞳に溜まった涙が頬を流れて落ちていく。




