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第百十話・ガマン耐性まるで無し


......ほう。


今度の奴は、腰を低くした丁寧な口調での嘆願か。


「......それでその頼み事というのは、一体何なんだ?」


こいつはどんな感じでくるのか、それを確かめべく、俺は声を少し

真面目なトーンに変えて、黄色いズキンの青年が述べようとする嘆願は

何か、それを尋ねてみた。


すると、


「おお!俺達の頼みを聞いてくれるんですね!ありがとうございます!」


俺の真面目に聞くという姿勢を見て、黄色いズキンの青年が先程まで

見せていた緊張の顔とは打って代わった安堵の表情でホッとし、俺に

深々と頭を垂れてくる。


「感謝の世辞はまだいい。お前達の嘆願を聞く聞かないは、今から

お前達の話す内容次第で決める。だから取り敢えず、その嘆願とやらを

俺に話してみるんだな......」


俺はジロッと睨みを効かせた表情と挑発する口調にて、相手の出方と

反応を試してみる。


「うぐぅ...そ、そんなに難しい頼み事じゃないんですよ!ほら、あそこの

森に草場が見えるでしょう?あの近くに俺達の仲間が魔物から襲われた

怪我で動けなくなっていて...だ、だから、そのケガした仲間を町まで

運ぶのを手伝ってもらえないでしょうか?」


「ふぅ~ん、動けない仲間をねぇ......」


......あの方角。


さっきルコールが俺に話していた、気配を消して隠れている連中が

いるって場所じゃないか。


それにこいつ、


今の俺の態度と言葉に、一瞬イラッとした表情を見せたな。


......やれやれ。


ポーカーフェイスがちっとも出来てないじゃん。


やるならやるで、最後までしっかり演技を頑張りなよ、青年。


俺は相手に見えない角度で深い嘆息を吐くと、


ズキンをかぶった青年三人の見せる、あまりにも不出来で、あまりにも

バレバレな誘導に対し、俺は思わず叱咤を送りたくなる気持ちへと

なってくる。


「で、どうなんだ、おっさん?俺達の仲間を助けてくれるのか?」


「マジで頼むぜ、おっさん!そいつの言う通り、俺達の仲間が大ピンチ

なんだよ!だからさ、どうか俺達の頼みを聞いてくれ、お願いだっ!」


黄色いズキンの青年の嘆願に続けとばかりに、黒いズキンの青年と

青いズキンの青年も必死な顔を見せてつつ、レンヤに嘆願してくる。


......が、


正直俺はもうこれ以上、こいつらとの三文芝居に付き合っている

暇はないので、


「......悪いが断わらせてもらう!」


「「「――――――はあっ!!?」」」


ズキンをかぶった青年三人の嘆願に対し、嫌だと返事を返す。


「だって、若者が三人もいるんだぞ?別にこんなおっさんと小娘の

手伝いなんて、たかが知れているだろうに?それによ、俺達は今日中に

やらなきゃいけない事があってな。なのでスマンがお前達だけで

その頼みたかった事を頑張ってくれ!」


俺はワザとらしく『おっさん』と『小娘』という言葉ワードを強調し、

頭を軽く下げると、ルコールと一緒にその場を離れて移動を始める。


「ク、クソガァァアッ!ちょっと待ってや、おっさんよぉぉおっ!!」


「こっちが下手に出ていたら調子に乗りやがってぇぇえっ!!」


「そんな態度を取られて、俺達がハイそうですかと、引くわけがない

だろうがぁぁあっ!!」


ズキンをかぶった青年三人組が顔を真っ赤にして激化し、レンヤ達の

進行方向に素早く回り込むと、その進行を邪魔してくる。


......あらま。


もう正体を表にしていやがるのか?


こいつら、ガマン耐性がめちゃくちゃ低過ぎじゃね?


「おい!こらぁぁあっ!聞いてんのかよ、おっさんっ!!」


はいはい、聞いてますよ。


ただ、それに返事を返したくないだけ。


「お、己!舐めやがってぇぇえっ!てめえがこっちに来ないって

いうのなら、その横にいるクソガキを人質にしてでも、てめえを

無理矢理こっちに来させてやるぜぇぇええっ!!」


我慢の限界にきたズキンをかぶった青年三人のひとりが、レンヤの横に

いるルコールを人質にせんと、こちらに向かって猛ダッシュしてきた。



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