第百話・おっさん、レベルアップに馴れない
「......ふう」
俺は、さっきまでいた上空を見上げる。
やっぱりあの高さからの急降下は、おっさんの身体的に多少
キツイものがあるなぁ。
「だが、この身体に当たってくる重力の感覚......嫌いではないけどな!」
―――って、なにを言ってんだ、俺!?
なんか、俺はまだまだ若いんだっていう、おっさん特有の見苦しい
言い訳みたいじゃんかっ!
「イヤン、恥ずかしぃぃぃいっ!」
実の所、未だ恐怖に駆られて心臓が速い鼓動を打っている癖に、
それを認めようとしない自分の思考回路に恥ずかしくなり、
両手を顔を覆っていると、
パラパラ、パッパァァ~~ンッ♪
「のうわぁぁぁああっ!?」
『レンヤのレベルがひとつ上がりました。』
『レンヤの『瞬歩』レベルがひとつ上がりました。』
俺の頭の中で、突如レベルアップを通達するアナウンスが響く。
「ひやぁ、ビックリした!ど、どうやら、今の戦闘でレベルと『瞬歩』の
レベルが上がったみたいだ!」
しっかし、このレベルアップを知らせるアナウンス、未だに馴れないな。
と、とにかく、久しぶりにステータスの確認でもしてみるか。
「このステータスを確認するアイテムの残りがもう数個しかないから、
後でストックを買っておかなきゃいけないな......」
俺は久しぶりに自分のステータスを見る為、ルコールから貰ったステータスを
チェックできるアイテムを使用する。
――――――――――――
レンヤ・シロカワ
LV28
ジョブ【勇者】
HP【600/600】
MP【360/380】
力【A+】
防【B-】
素【B】
魔【A-】
幸【C-】
≪ギフト≫
『瞬歩』...LV3
『気合い』...LV2
『採取察知』...LV3
『識別』...LV1
≪レアギフト≫
『怒髪天』LV...2
『アイテムボックス』
『超・成長』
『錬金』LV...1
『絶対ドロップ』LV...3
≪状態耐性≫
毒【D】痺【D】石【D】
幻【D】魅【D】即【D】
―――――――――――
「おお!レベルが三つ上がってるじゃん!まぁ、レベルの方はレベルアップの
アナウンスで分かってはいたんけどね。でもステータスをチェックするのは、
ルコールの所で見た時以来か......」
しかし、なんだこれ?
『超・成長』がある割には、ステータスの上がり具合が全く以てヒドイな!
見た所、力と防以外が全く上がってないじゃん!
「ハァ......」
おっさんというものは、こんなとこにも影響が出てくるのかねぇ。
「まぁいいさ。別に強敵とかと闘えっていうわけでもないんだし、のんびり
やっていきますかね......」
――ん?
俺は自分のステータスの成長具合をある程度確認し終えた後、頭の中に
『ドロップアイテムを獲得しますか?』とアナウンスが流れてきた。
そして目の前に『はい/いいえ』という文字が表示された。
「あ、なるほど。厳ついおっさん達からのドロップアイテムのお知らせか。
そういえば『絶対ドロップ』を手動に切り替えていたっけか?」
俺は手動に切り替えていた事を思い出すと、『絶対ドロップ』の『はい』を
選択し、厳つい顔の男達からのドロップアイテムから欲しい物だけを
チョイスしてアイテムボックスへとしまい込んだ。
「......まさかこんな朝っぱら絡まれてしまうとはな......」
俺のついてない連鎖って、一体いつまで続くんだろう。
「......ハァ」
俺はこの世界に召喚されてからの不幸続きに嘆き、思わずため息が
口から洩れてしまう。
「さてっと。こいつらどうしようか?このままここに放って置く
わけにはいかないしな?」
取り敢えず、落ち込んだ気持ちを切り直した俺は、目の前で転がっている
二人をどうするかべきかと頭を悩ます。
「この酔っぱらい達、どうやら冒険者みたいだしさ、冒険ギルドに引き
渡せばいいんじゃない?ひょっとしたら、昨日引き渡したあの強盗犯の時
みたいに、また謝礼金が貰えるかもしれないよ♪」
「......ふむ、そうだな。どっちにしろ、ここに放って置いたら市民に迷惑が
かかるかもしれないし、それに強盗犯の時にも言ったけど、後から報復行為を
されるのは面倒くさい」
ハァ...しゃあない。
ギルドへ連れて行きますか。
俺はもう何度吐いたか分からない嘆息を吐いた後と、アイテムボックスから
錬金術で作り出したローブを取り出し、そのロープで厳つい顔の男二人組を
グルグルに巻いていく。
そして二人を引きずりながら、ルコールと冒険ギルドに歩いて行くのだった。