第一話・勇者召喚
何となく、おっさんものが書きたくなって書いてみました。
「イテテ...ここはどこなんだ?」
俺は痛む身体を無理矢理起こして、回りを見渡す。
ん...あれは、穴か?
俺の目線が向いた先、そこに映るは大きな穴の空いた天井だった。
「なるほど、俺はあの穴から落ちたと言う事か...」
ハァ、参ったな。
俺...『城川錬矢』が、洞窟を捜索中に見つけた宝箱。
見るからに怪しい宝箱っぽかったのに、俺は欲に目が眩んでしまった。
そして宝箱ヤッホーッとダッシュした結果、床が崩れて下に落ちた。
クッ!なんたる不覚っ!
欲に走った末路がこれかっ!
ハァ...思えば、あの召喚が俺の不幸の始まりでもあったな。
◇◇◇◇◇◇
「我らが願いを聞き入れ、よくぞこの世界に参られました。我らの救世主、
勇者達様よっ!」
魔法陣の中心に立つ、コバルトブルーの髪色がよく似合う顔立ちの整った
美しい女性が、勇者と呼んだ人物達に向けて笑顔を振りまく。
「え...?オ、オレ達が勇者...ですか...!?」
勇者と呼ばれ、戸惑いつつもまず最初に口を開いたのが、如何にも
真面目さんと言わんばかりの黒髪の少年だ。
「な、何なのよ、その勇者っていうのはさぁ~!?」
次に、それに続く様にポニーテールの少女が疑問の声をあげる。
「そんな事より...ここは......どこ?」
そのポニーテールの少女の横にいた、小柄な身丈の少女も動揺を
見せない声でボソリとそう呟く。
「.........」
そして最後は俺だが、ここは黙って静観し、周りの出方を見る事にする。
「そ、そうですよね。いきなりの事で混乱してしまいますよね。では不肖ながら、
このギガン城の第一王女『リコット・コンパーク』が、あなた方の措かれている
今現在の状況をご説明させてもらいますね!」
困惑して動揺を見せる勇者達へ、リコット王女が神妙な面持ちに変わると、
今に至るまでの経緯を詳しく話してくれた。
◇◇◇◇◇◇◇
「なるほど。貴女の...リコット王女様の話が正しければ、ここはオレ達の
いた世界とは全く異なる世界、そういう事なんですね?」
「つまりこれってさ、あれだよねぇ~!よくある異世界の転移物語ものでさ、
その物語の主人公があたしら勇者で、そしてそれを伐つべき敵ってのが、
リコット王女の言う魔王っ!そういう事だよねぇ♪」
黒髪の少年が今の状況を素直に受け入れ、その横にいたポニーテールの少女も
今の状況を自分達のいた世界のマンガやアニメと一緒だと、心をワクワクさせて
いる。
「おお!流石は勇者様です!把握する思考が早くて、とても助かりますわ♪」
黒髪の少年とポニーテールの少女が理解を示す態度に、リコット王女がホッと
胸を撫で下ろしている。
「でも...ボク達にその魔王を倒せるの......?どう見ても...こんな普通人の
ボク達では無理だと...思うのだけど......?」
小柄な身丈の少女が他に召喚された三人をチラッと見て、リコット王女に
そう告げる。
「ふふ。その心配はご無用ですわ!何故なら、あなた方は『勇者』の称号を
持っておられるのですからっ!」
このメンバーでどうやって勝つんだと問うてくる小柄な身丈の少女に対し、
リコット王女が自信満々の表情でニコッと微笑むのだった。