異世界転移
いつもより気持ちよく目覚めた
今日は祝日だ
のはずが、何かが違う
見慣れた茶色の布団からでるのに
妙に力がいる
「重い」
必死で布団からでると
何もかもがとても大きい
コンパクトな部屋に住んでいてよかった
イスもテーブルも届きそうもない高さにある
iPhoneの画面が点滅している
「財布を持て」
そう書いてある
昨日座椅子に置いたまま寝たカバンから
財布を取り出そうとして気付いた
「私が縮んだ」
仕方がないiPhoneの指示に従って
なんとか財布を取り出した
iPhoneのそばまでひきずっていく
画面が歪んだと思ったら
見たこともない場所にいる
フカフカの地面に
私の大きさに合ったきらびやかな調度品
と 目の前に人力車がとまった
かわいい男の子が言う
「案内してやる」
両替所のようなところに連れていかれた
キレイな女の人が言う
「千円を10枚綴りの券に交換致します」
意味がわからない
「俺の車に乗るのに一枚券がいる」
これが現実か夢かまだわからない
「一万円を千円に両替して五千円分を券に交換してください」
一枚の券を彼に渡すと
飛ぶように走り出した
ディズニーランドのような建物だ
どこもかしこもフカフカして見える
「ホテルだ」直感した時に
ある部屋の前で車が停まった
「ここがお前の部屋だ 自由に動いていい
ただ この建物に外はない
俺を呼ぶときは部屋の入り口のボタンを押せ
お前のような奴らがたまにこの世界に来る
券さえあれば俺はお前の言うことを聞こう」
それだけ言うと彼は凄いスピードで消えていった
部屋に入る
ガシャンと鍵のかかる音がする
ディズニーランドのような世界観に
ワクワクしつつ でかい財布を確認する
《五万七千円と49枚の券》
これが夢だろうと現実だろうと
混乱した頭を整理するには
一眠りするに限る
正直自分の小さな部屋より
ずっと快適なこの部屋を気に入りそうになりつつ
私はフカッフカのベッドに入り
すぐに寝付いてしまった