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Doubt  作者: ほた
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CARD 2


 朝、携帯端末のアラーム音で目が覚める。タイマーは毎日同じ時間に鳴るようセットしてある。

 俺はベッドの中を手で弄ると、端末を探す。昨晩始まったばかりのゲームイベントを走っていてそのまま寝落ちしたので、おそらく端末はベッドの中だ。

「んー」

 二往復目で手に柔らかくて温かい物が当たる。

「ああ?」

 俺は、驚いて飛び起きた。

「またかよ、リズ!」

 広いリビングの片隅に置かれた簡易ベッドが俺の寝床だ。ベッドの周辺に俺の数少ない私物が段ボール箱に詰め込まれて置かれている。申し訳程度の仕切りを立てて、俺の部屋として使っている。

 大して大きなベッドでも、ましてや寝心地がいいわけでもない。

 しかし俺のベッドで、このアパートメントの家主リズことエリザベスが、気持ちよさそうに寝息を立てて寝ているではないか。

 俺の寝間着はTシャツに短パン。リズはというと……黒いレースの下着一枚。これをあられもない姿というのだろう。

 言っておくが十三歳にして、エリザベス相手に初体験を終わらせたとか、そういう関係じゃない。その前にこの辺りの青少年条例は厳しいので、エリザベスがお縄になる。

 酔って帰ってきたエリザベスは、大概こうだ。最初は広くて立派な自分の部屋のベッドで寝るのだが、夜中水を飲みに起きたかトイレだかの後、部屋に帰る途中にある俺のベッドに潜りこんで寝こけてしまう。問いただすと、覚えていない、たぶん近くにあったから。と言い訳をする。

 最初のうちは驚いたが、こう何度もあると慣れてしまった。もう目のやり場にも困らない。

 俺は掛布団にしているブランケットをリズの身体に掛けてやる。半分は優しさ。そしてもう半分は……俺はブランケットの上からリズを足の裏で踏みつける。さすがに布一枚境界を設けないと何かと気まずい。

「起きろ、リズ!」

「……んー、あと五分」

「今日は大切なプレゼンがあるんだろう! 起きろって」

 昨日酔って帰ってきたエリザベスは、「明日の朝、何をしてもいいから絶対起こして欲しい」と俺に依頼していた。今日の午前中に職場で大切なプレゼンがあるそうだ。頼まれた時から、いや酔ったエリザベスを出迎えた時点で嫌な予感がしていたんだ。

 案の定これだよ。

「レオ、あと五分よ、五分……」

 エリザベスは、それしか言わない。

「知らないからな!」

 俺はベッドの中から携帯端末を見つけ出した後、寝間着のTシャツと短パンを脱ぐ。

 こちらも仕度をして、学校に行かないといけない。

 服装はお出かけ用の綺麗なTシャツとパーカー、そして下はジーンズ。それに教材を入れたバックパック。贔屓の野球チームの帽子も忘れずに。

 俺はトイレ洗面を一通り済ませた後、部屋のブラインドを開けながら、一周部屋を回って戸締りの確認をする。最後に冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを一つ取り出して、リズが潜りこんでいるベッドに戻って来た。端末の時計で時間を確認する。

 ハイ、五分三回で、十五分経過。

「起きろよ、マジで遅刻するぞ」

 今度はエリザベスの肩を優しく揺すって起こしてみる。

「……」

……返事がない。

「ダメか……」

 俺はエリザベスの枕元に彼女の携帯端末を置くと、野球帽を目深にかぶり一人アパートを後にした。


 +


 俺は数か月前、家なき子になり、身から出た錆のせいでリンチに遭っていたところを、エリザベスに助けられた。

 それから怪我の療養もあり、養護施設入りは見送られ、話の流れで彼女としばらく暮らすことになった。金属バットで殴られた肋骨は案の定折れていた。一カ月ほどでほぼ治ったが、その後も彼女の家にお世話になっている。どういう手続きをしたのだろうか。エリザベスは俺の保護者になってくれた。おかげで以前通っていた学校を転校せずそのまま通えることになった。

 こんな良い待遇に何か裏を感じるが……。

――いや、これにはしっかり裏があるんだ。

 エリザベスが俺を助けるために使ってしまった三千ドル、あれは彼女にとって大切なお金だった。そして母親が死んで、無保険状態の俺の医療費。数千ドル上乗せされた。

 俺は札束で首根っこ押さえられ、体で借金を返済している最中なのだ。


 俺はアパートメントの一階にあるカフェの戸を潜る。

 扉に着いた鈴が、チリリンと涼やかな音を鳴らす。その音に気づいて、この店のマスターがカウンターから顔を出した。室内は挽き立てのコーヒーの香りと、パンの焼けた香ばしい香りが充満している。この戸を潜ると寝起きで鈍っていた食欲がむくむくと目を覚ます。

「レオいらっしゃい、おはよう」

 顔見知りになったマスターが、挨拶をしてくれる。

「マスターおはよう」

「あれ一人か、お姉さんは?」

「まだ寝ているよ」

 エリザベスは周囲に、俺達の関係を姉と弟と説明した。ずいぶん似ていない姉と弟だが、エリザベスは自己紹介の後、「ここだけの話、両親に訳ありなの」と小声で嘘をつく。面白いことに、その魔法の言葉を聞くと、疑う者もいなくなる。詮索されそうになると、悲しそうな顔をして芝居を打つ。嘘も方便。そのおかげで、俺はするりとエリザベスの弟のポジションに入り込めた。

「じゃあ、朝食は一人前でいいのかな?」

「うん、俺のだけでいいよ。その代わり……」

 俺はカフェのメニューをスタンドから取り上げると、マスターに写真を指差しオーダーをする。

「了解了解、すぐ用意するよ。これ飲んで待っていな」

 マスターはミルクがたっぷり入ったマグカップを俺に差し出す。

「ありがとう、お願いします」

 マグカップを受け取ると、カウンター席にカップを置く。椅子にバックパックと帽子をひっかけると、ジーンズの後ろポケットから端末を取り出して席につく。俺とエリザベスは、毎日このカフェで朝食を取っている。お洒落で人気があり、程よく繁盛している。常連さんには、日替わりのモーニングを提供してくれる。リクエストをすれば、好きなものを作ってくれるので大変ありがたいお店だ。俺は朝食が来るまでの間、ミルクを飲みながら、端末をいじくるのが日課になっていた。


 エリザベスは、二年ほど前に実家から独立してこのビルに入っているアパートを借りたそうだ。この場所を選んだのは、ドラマに出てくるようなお洒落な地区に住みたかったからだとか、意外とミーハーだ。職業は大手薬剤企業の研究員。しかも主任。そして年齢は二十五歳。俺から見たらすごく年上に感じるが、世の中基準でいうと異例の若さの出世をしている。飛び級だかなんだかをして十代で大学院を出たらしい。都会の一等地に住めるので、サラリーも悪くない。キャリアウーマンというやつだ。肩書きは実に立派。

 しかし、俺は家でのだらしのないエリザベスの姿を見ているので、あれで本当に社会人が務まるのか、半分疑いの目を向けている。

 噂をすれば影。

 遠くからヒールを踏み鳴らすけたたましい音、これはドラム音。そしてドアのチャイムは鐘のように鳴り響く。ボスキャラの登場だ。

 このクエストを受けますか?

 【YES】【→NO】と押して逃げたいところだが……。

「レオ! どうして起こしてくれなかったのよ!」

 ハイ来た、開口一番の雄叫び。俺は携帯端末の画面から視線を離すとため息を一つ。

「おはよう、起きなかったリズが悪いんでしょ」

 気怠そうに挨拶の後、攻撃「真実の言葉」を吐く。

 エリザベスは仕事服にしている、黒のパンツスーツ姿で現れた。そして髪もセミロングの黒髪。黒づくしの彼女だが、なぜかその容姿は艶やかさがある。短時間でよく仕度が出来たものだ。

 黒を身に着けていることが、そのシルエットを美しく惹き立てているのかもしれない。

 黒が似合うのは若いうちだと、母が言っていた。この事を言っていたのだろうか?

 女という生き物は、身近にいてもよく分からない。

 最近、美人のお姉さんと一緒に住めて羨ましいと言われることが増えた。いやいやいやいや、全力で否定しよう。エリザベスという女性は完璧だと思うが……外面だけさ。

「誰に言っているのよ!」

「はいはい、お姉さま」

 おや、通常攻撃が効かないようだ。

「あれだけ念を押して頼んだのに!」

 仕方がない。この辺りで必殺技を出すとしようか。

 俺は今まで見ていた自分の端末をひっくり返すと、液晶画面をエリザベスの鼻先に押し付けた。画面には、発信履歴が表示されている。画面の項目には、「リズ」の名前と電話番号がディスプレイ一面に並んでいるだろう。

 俺は、端末のアプリを使って、三十秒ごとにエリザベスの番号に発信を繰り返していた。

「揺すっても蹴っても起きない大女を見捨てず、電話を鳴らし続けた俺の労力も認めてくれる?」

「……もうっ!」

 エリザベスは息を飲むと、高そうなバッグの中から自分の端末を取り出し。着信履歴を確認している。赤いネイルを施した指先で画面を次々にフリックしていく。

「うああっ」

 一分に二回×二十分の威力を見よ。着信歴四十件。

 この携帯端末はエリザベスが、持っていた方がいいと買ってくれたものだが、今日ほど俺に端末を持たせて良かったと思う日はないだろう。日頃ゲーム中毒ネット依存と馬鹿にするが、意見をあらためていただきたいものだ。

「そろそろ俺を目覚ましに利用するの、やめてくれる? あと寝ぼけて人のベッドに入り込まない。ちゃんと服を着て寝ろよな。俺じゃなかったら襲われているぞ? 全くみっともない」

「……ご、ごめんなさい、以後気を付けます」

 コンボ技が決まったようなので、これで攻撃はおしまいにしてやろうか。

 これが、体で返している仕事のうちの一つ。エリザベスは頭も外見も良いが、人として何かネジがぶっ飛んでいる。まあ俺も人のことを言える立場ではないのは分かっているが、社会人になってもなお、日々この有様らしい。よく会社を首にならなかったと思う。俺は自分の端末で時間を確認する。

 丁度その時、マスターが俺を呼んで、カウンターの内側を目配せしてみせた。

 俺は小走りにマスターの元に行くと、注文したものを受け取った。

 受け取ったのは、このカフェのマークが入ったテイクアウト用の紙袋だ。触れるとまだ仄かに温かい。

 ふと見ると、カウンターの内側にある注文をメモする付箋とサインペンが目に入ってきた。俺はマスターに一言断って、付箋メモを一枚もらい走り書きをする。そして袋の中にこっそり忍ばせる。

 俺は紙袋の蓋をきっちり閉め直すと、エリザベスに差し出す。

「なら、これ持ってさっさと会社に行く!」

「何よこれ?」

「キャラメルマキアートとドーナッツでいいんだよね? テイクアウトしておいたから」

 エリザベスは目を見開いて俺の顔を凝視している。急いで塗ったマスカラが、瞼に張り付かないか心配になる。

 今日絶対起こせと俺に命令していた理由。実は少しだけ気づいていた。

 彼女は勝負をかける日の朝、必ず甘いコーヒーとドーナッツを朝食にするのを何度か見て来た。きっと今日もそうしようと思ったのだろう。だからカフェに来たとき注文しておいた。降りてくる頃合いに持っていけるようにと。

――なんて過保護なんだろう。

 お世話になっているとはいえ、エリザベスを甘やかしている自分に呆れる。

「……きゃー、レオありがとう。何この出来るイケメン、愛してる!」

 エリザベスは俺に体当たりをするように抱き付いて頬にキスをする。赤いルージュがべったり付いた。

「あああ! もうやめてよ」

 俺は大慌てでカウンターに備えつけられたナプキンを数枚掴むと、硝子窓を鏡代わりに、頬の赤いキスマークを拭き取る。

 以前同じことをされ、気づかずに学校に行ってしまい、クラスメートに盛大にからかわれた。二の舞になるわけにはいかない。いくら拭き取っても取れやしない。

 謝意と好意のつもりだろうけど、これは大迷惑だ。

「……さっさと行かないと、遅刻するよ」

 俺は邪険にエリザベスを追い払う。

「分かったわ、いってきます。あんたはちゃんと学校に行くのよ」

「はいはい、いってらっしゃい」

 空いている手をヒラヒラと振り、エリザベスを見送った。カフェを小走りに出て行く後姿を確認した。はてさて間に合うか。

 そうしていると、マスターが俺の朝食を運んできてくれた。

「ハイ、モーニング一人前お待ち! ところでさっきのメモ何て書いたんだい?」

「秘密」

 口で言うのは恥ずかしいので、激励のメモを忍ばせた。

「……秘密か、しっかり食べてから、慌てずに学校いけよ」

 マスターはクスクス笑いながら去ってゆく。

「はーい」


 プレートに乗ったホットサンドを口に運んでいると、隣に座っていた男に声を掛けられた。

「綺麗なお姉さんだね」

「あ、うるさくてすいません」

 出禁にされることはないと思うが、親切にしてくれるこの店の印象を悪くしてはいけない。この場はお利口かつ丁寧な言葉を選ぶ、それが処世術だ。

「いやいや、微笑ましい光景だったよ。気にしなくていいよ」

「ありがとうございます」

「しかしおかしな話だな。リード家の御嬢さんは一人娘で、ご兄弟は他にいないと聞いたけど、……君、本当に弟さん?」

――っ!? なんだって?

 リードは、確かにエリザベスの姓だ。

 俺は、隣の席にいるスーツ姿の男を注意深く観察した。

 ビジネスマンだろうか? いや違う。

 ビジネスマンにしては、スーツの色柄が派手すぎる。腕に光る煌びやかな時計は、ダイヤがギラギラしている。世の中を知らない俺がみても高級品なのがわかる。そしてそれが一介のビジネスマンのサラリーでは到底手が届くものではないということも。

 テーブルの上には、注文したコーヒーの横に、経済新聞と週刊誌が置かれている。持ち物は他に見受けられない。経営者だろうか? ブロンドの髪を綺麗にセットして、執拗に真っ白な歯を見せて笑みを作る。ピカピカの肌に目鼻立ちが整った外見は、女性受けしそうだが、整い過ぎていて人工造形臭い。そして俺が何より気になるのは、動きの全てにこちらを侮蔑するような嫌味が混ざっていることだ。

 もしかしたらエリザベスの知り合いか? いや、それならエリザベスがカフェに入った時点で、隣の席にいる人物に気づくはずだ。それならば、俺がするべき返答は……。

「ええ、弟ですよ」

 これでいい。下手に事情を話すべきではないと判断した。

「本当かな? エリザベス=リード、大富豪リード家の一人娘。最近家を飛び出したとか」

 大富豪だって? エリザベスの家が?

 俺はそんなこと一言も聞かされていなかった。いやエリザベスが自分の家のことをあまり語ろうとしなかったのが正解だ。家には自分の居場所がないので、早く独立したくて猛勉強をしたと言っていた。もしかしてそれが原因なのか?

 俺は大げさに驚いて見せる。

「うちの姉が? それ同姓同名の人違いじゃないですか?」

 俺も知らない事実、どう会話を続けたらいいのか正直迷った。しかし知らないのだから、素直な反応としてはぐらかすのが妥当だろうか。

「……そっか、君は知らないのか」

 男はスーツのポケットから名刺入れを取り出すと、中から一枚名刺を取り出し、俺に差し出した。

「自己紹介が遅れたね、僕はこういう者だよ」

 俺は注意を払いながら、名刺を受け取る。

 名刺にはこう書かれていた。

『俳優・コンサルタント ダグラス・キング』

――俳優でコンサルタント? おかしな組み合わせだ。

 俺は、思わずダグラスの顔を見た。彼はごく自然にウインクをして見せる。

「怪しい者じゃないのが分かってもらえたかな、んー、これでも少しは顔が売れていると思っているんだけどな。最近新しいCMも始まったんだけど」

 ダグラスは何かポーズをして見せる。もしやCMの決めポーズか何かだろうか。

「すいません、テレビあまりみないので」

 エリザベスの家には、テレビはあるが一人の時は大概ゲームをしている。エリザベスがいるときはニュースか映画がついている。

 CMに出演しているということは、本格的な俳優なのだろう。知らなかったのはこちらに非があるので、謝るしかない。

「俳優業の他にいくつか事業を持っていてね。まあこれは親から預かった事業なんだけどね、俺の代で大きく……」

「その有名人のダグラスさんが、何の御用ですか?」

 自慢話が始まりそうだったので、俺は質問で会話の腰を折った。

「……ああ、実は、近々お姉さんと会食することになってね、失礼かと思ったけど、どんな方か確かめておこうと思って。でもまさかこんな収穫があるとは」

 ダグラスは、テーブルに頬杖をついて俺の方をみている。

「……はあ」

 会食? エリザベスの顔も知らなかったのに?

 そして言葉の端にしめされた『収穫』とはおそらく俺のことだろう。

 エリザベスとの会食に俺が何かマイナス要素になるのだろうか。いやなるな。得体も知れない子供と暮らしているなんて、気持ちが悪いだろう。

「それで、君は彼女とどういう関係なの?」

 ダグラスはさらに質問で踏み込んできた。弟だと言ったのにそれに合わせてこない。

 エリザベスのような芝居を打つべきか。いや、彼はエリザベスの素性を知っているようだから、それは得策ではない。俺はサンドイッチを口に運ぶのが忙しい素振りをして、質問を無視した。

「……彼女はそういう趣味があるのかな? 意外だな。あの体付きとか、絶対男好きな感じなのに勿体ないなぁ」

 鼻の奥がひくつく嫌な感覚。数分前出会った初対面の子供にそういう話を振ってくるか。母が付き合っていた男たちを見てきたが、ここまであからさまではなかった。まあ訪ねて行ったら、消しに来るゲスはいたか……

 この人、天才だわ。初対面で人の気分を逆撫でするチャンピオン。

 よく人気商売の俳優なんて出来るな。ブラボーブラボー拍手をしたいよ。ブーイングなんて勿体ない。それがダグラスに抱いた素直な感想だった。

 俺は口に残っていたパンをミルクで流し込み、残っていたサンドイッチと付け合わせのハッシュポテトを紙ナプキンで包み、パーカーのポケットに突っ込むと席を立った。

「学校に遅刻するので、これで失礼します」

 もうこれ以上この男に関わってはいけないと、直感が判断した。

 マスターに朝ご飯とテイクアウトの御代を払って、そそくさとカフェを出た。後ろを振り向かないようにして出たが、ダグラスの視線を感じる。

「また会えるといいな」

 いや、出来れば会いたくない。勝手にしてください。

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