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ネコのネネ

作者: 白野 円

ある日、家の前に黒い毛をした小さなネコがいるのを、マヒトくんは見つけました。


そのネコはお腹が空いているのか、マヒトくんの足にからだを何度もすりよせ、力なくなきました。


マヒトくんは、むやみに動物にエサをやってはいけない、とお母さんに言われていました。


そのりゆうはネコが家にいついてしまい、近所の人のめいわくになってしまからだそうです。


だけど、小さなネコがお腹を空かせているのは、かわいそうです。


それにネコのことはお母さんに知られなければ、問題ありません。


マヒトくんはネコにエサをあげることにしました。


ネコはエサを見ると、ものすごいいきおいでそれを食べはじめました。


お腹いっぱいに食べたネコはうれしそうにニャーとなきます。


その声をきくと、マヒトくんも何だかいいことをしたような気がして、幸せなきもちになるのでした。


マヒトくんはネコの頭をなでてやり、お母さんにみつからないように道の向こうへネコを放してやりました。


次の日、マヒトくんが学校からかえってみると、昨日エサをあげたネコが家の前にいました。


ネコはマヒトくんを見ると、うれしそうにマヒトくんの足元にかけよってきました。


どうやら今日もネコはお腹を空かせているようです。


マヒトくんは昨日と同じようにネコにエサをあげました。


それからネコは毎日マヒトくんのところにやってくるようになりました。


そんな風にネコと過ごしていたある日、マヒトくんはネコに名前をつけいないことに気がつきました。


もうマヒトくんとネコは大のなかよしです。それなのにいつまでもネコをネコと呼んでいては、友達とはいえません。


マヒトくんはネコに名前をつけてあげることにしました。


「よし、今日からお前の名前はネネだ」


「にゃー」


マヒトくんに名前をよばれると、ネネはうれしそうになきました。


だけど、そんなある日のことです。ネネはお母さんに見つかってしまいました。


マヒトくんはネコにエサをあげていたことを怒られ、もう二度とエサをやらないように約束させられてしまいました。


そんなことを知らないネネはいつものようにマヒトくんの家にやってきます。


ネネはマヒトくんに呼びかけるように何度もくりかえしてなきました。


それを耳にしたマヒトくんは窓からネネを見つめました。


ネネはきっとお腹を空かせているんだろうな。そう思うと、マヒトくんはネネがかわいそうになってきました。


だけど、マヒトくんはネコにエサをやらないと、お母さんと約束してしまいました。


その約束をやぶったら、マヒトくんはまたお母さんに怒られてしまいます。


結局、マヒトくんはネネにエサをやることはしませんでした。


次の日、ネネはまたマヒトくんの家にやってきました。


「にゃー」


昨日とは違って、ネネの声には元気がありません。


ひょっとしたらネネは昨日から何も食べてないのかもしれません。


そのことをかんがえると、マヒトくんは何だかかなしい気持ちになりました。


マヒトくんはお母さんとの約束を思い出しながら、ネコにエサをあげようか必死になやみました。


だけど、そうこうしているうちに天気はわるくなり、雨がふりだしてきました。


先が見えなくなるくらいのはげしい雨です。


これならネネもエサをあきらめて、すぐに自分の家にかえってくれるだろう。


マヒトくんはそう思い、ネネのことを頭の中からほうりだすと、自分の部屋でゲームをすることにしました。


その次の日、雨はやみました。


マヒトくんはネネがまたやってきているかどうかを見るために外へ出ました。


ネネはどこにもいません。


マヒトくんはそれをさみしく思いながらも、しかたのないことだとあきらめました。


そうして家の中にもどろうとしたときです。


マヒトくんは庭のすみに小さな黒いネコがいることに気がつきました。


マヒトくんはそれにびっくりして、思わず声をあげてしまいました。


「ネネ!」


マヒトくんはネネに呼びかけます。


だけど、ネネはぐったりと横にたおれたままピクリともうごきません。


それを不思議に思ったマヒトくんはゆっくりとネネのもとに近づきました。


「ネネ?」


そこでマヒトくんは、はじめて気がつきました。ネネは死んでいたのです。


マヒトくんは声をだして泣きました。


いったいどうしてネネは死んでしまったのでしょうか。


マヒトくんはその理由をいっしょうけんめいかんがえました。


昨日の雨のせいでしょうか、エサをあげなかったからでしょうか、それともいちばんはじめにお母さんのいいつけをやぶってしまったからでしょうか。


マヒトくんには、そのこたえは分かりませんでした。


でも、マヒトくんはいつでもネネをたすけてあげることができました。


それなのにマヒトくんはなにもしてやりませんでした。


マヒトくんはネネにエサをあげましたが、それはさいしょだけのことだったのです。


「ネネ、ごめんね」


マヒトくんはネネの死体をまえに、せいいっぱいあやまりました。

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