美容院
次の日
普段と変わらず学校へ行った。一応報復が怖いためムダ毛の処理だけはやり、少しドキドキしながらも教室に入ると、莉奈達はいつも通り談笑していた。
しかし特に話しかけられることなく、その日は終わった。
遥斗は昨日誓約書を思い出し、またとんでもないことをされると思っていたが、何もされず少し拍子抜けした。
そうして何もなく一ヶ月が過ぎ、遥斗はもうあの誓約書は冗談で、遊びだったのだと思うようになった頃、急に莉奈に話しかけられた。
「遥香!ちゃんとあの誓約守ってる?? そのうち抜き打ちチェックするから! それと、まだ何も命令してないけど、忘れてる訳じゃないから安心してね!」
クソ!やっぱりまだ続いてたんだ! と思い、落胆し、同時に教室の中で遥香と呼ばれた事にヒヤヒヤした。
そうして半年が過ぎた。
その間、莉奈達からの接触は一度もなく、忘れた訳ではないが、只々不気味に時が過ぎて行った。
たださすがに髪の毛を半年も放置しているので、ボサボサに伸びきって、肩にかかる程度になり、鬱陶しい。
元々クラスでは目立たない存在だったが、ここまでくると変なやつだと思われると思い、莉奈達に髪を切らせてもらうようお願いしたかったが、結局言い出せなかった。
そんな中、明日から冬休みだと言う日の昼休み、莉奈に呼び止められ、放課後チア部の部室に来いと言われた。
正直、誓約書を書いた日のことを忘れかけていたが、チア部の部室と聞きトラウマが蘇ってきた。
そして放課後
ノックをして部室に入ると、すかさず莉奈がやってきて
莉奈「遥香ーー!この半年寂しかったでしょ?? 誓約書まで書かせて、私達の仲間になったのに全然話さなくて、あげくこんなボサボサの頭になっちゃって!!ホントゴメンね!」
美結と香織もなぜか抱きついてきた。
遥斗はできればそのまま話しかけずに卒業したかったが、愛想笑いで誤魔化した。
莉奈「なんでこの半年、何もしなかったかわかる??笑」
「いやわかりません」
遥斗は自然と敬語で話すようになっていた。
美結「正解は…… 遥香ちゃんの髪の毛が短かったからでーす!!キャハ♡」
「え!?」
香織「だってー髪の毛が短いまま女の子にしても、遥香が可哀想だと思ってー ロングになるのを待ってましたー♡」
莉奈「おかげでこんなに長くなったけど、お手入れも何もしてないからボサボサね!w」
遥斗は盛り上がってる3人をみてあの時のトラウマが一気に蘇ってきた。
そういうことだったのか!!しかし遥斗は歯を食いしばり俯くことしかできない。
莉奈「というわけで、これから遥香の髪を女の子にしていきます!! じゃあとりあえずこれに着替えて!」
と言い、女性用の下着とぴっちりとしたジーパンとパーカーを渡された。
美結「本当はもっと女の子らしい服にしてあげたいんだけど、ちょっと我慢してね!」
遥斗は何も言わずに着替えるしかなかった。
莉奈「お!今回は聞き分けがいいねー! まぁしょうがないっか!笑 ついでに軽くメイクもしようね 美結!」
美結「了解〜 今日は軽めにしといてあげるわ」
遥斗は髪型以外を前回と同じにされ、立たされた。
莉奈「じゃあ行こっか!」
「え?どこに??」
莉奈「美容院に決まってるじゃん♡ もう予約もしてるから安心して! じゃあ行こー!」
遥斗と莉奈達は莉奈が予約したという美容院にみんなで行った。途中人とすれ違うたび顔をうつ向け、長くなった髪で顔を隠しながらなんとか到着した。
莉奈「はい着いたー!」
遥斗が顔をあげると、なんとも可愛らしい店構えで、男では絶対一人で入れないような所だった!
遥斗が入るのを躊躇してると美結に手を引っ張られ、入店してしまった。
莉奈「予約していた七海ですがー 」
「はいお待ちしておりました。 こちらへどうぞ」
遥斗は美結に連れられて着いて行くとそこは個室だった。
莉奈「個室でよかったでしょ? あとここ私のお姉ちゃんが働いてるお店で、遥香の事は女の子になりたい男の子って事にしてるから、安心してね! 」
というと莉奈に似てるけど莉奈よりか少し身長も高く、スタイルの良いお姉さんがやってきた。
加奈「あなたが遥香ちゃん? 今日担当する七海加奈よ よろしく で今日はどんな感じにするの?」
遥斗はすかさず、なるべく短くしてもらおうと思い、声を出そうとした時
莉奈「えーとー まず縮毛かけてー 全体的に軽くしてー 前髪はぱっつんでー うんと可愛い髪型で! 」
加奈「あらあら本当にいいのー? かなり女の子に近いづいちゃうけど、遥香ちゃんの希望はないの?」
遥斗は女の髪型にされても短ければ、誤魔化せると思っていたので、短くしてくれと言おうとが、莉奈達がメチャクチャ睨んでいるのに気がつき、怖気付いてしまった。
遥斗「特にないです…」
その答えに莉奈達は満足そうにして、後ろのソファに座りに行った。
加奈「そう! それじゃあさっき莉奈が言ってた通りにするわ! 」
と言い遥斗の髪をブラッシングしだした。
加奈「それにしてもアナタ、女の子のくせにこの髪は何? 毎日トリートメントしてちゃんとブラッシングしてるの? 髪は女の命なんだから大切にしなさい」
「はい… すみません」
遥斗は好きでやってるんじゃないんだよと思いながら謝った
加奈「それじゃあまずは縮毛矯正からやるわ これをやると例え男でも女の子の髪質みたいになるから、楽しみにしててね」
というと加奈さんは何やらいろんな事をやりだした。
遥斗には何をしてるかわからなかったが、いよいよ女の髪型にされると思い、ふと屈辱感が押し寄せ、また泣きそうになっていた。
そのままただ時間が過ぎるのを待ち、縮毛矯正がやっと終わった。
出来栄えを見ると、今まで広がって鬱陶しかった髪がストンと纏まり、目で見ただけでサラサラだとわかるような髪質にされてしまった。
遥斗はこんな女みたいな頭になってしまった自分にショックを受けていた
加奈「どーおー? 新しい髪は?? ほらよく見て 女の子みたいな髪質よ! 嬉しい??」
泣きそうになってる遥斗の横で嬉しそうに聞いてくる
「…はぃ」
声にならない声で答えると
加奈「ならよかった! じゃあ次はカットしていくからね! なるべく長さは残して、色んなアレンジができる髪型にしてあげるわ」
遥斗はもう涙を流す寸前だったが、どんどん切り進められていく。
一時間もするともう誰が見ても女の子の髪型にしか見えない、綺麗なロングヘアーに変えられていた。
加奈「じゃあ最後に莉奈ご要望の前髪をぱっつんにしちゃうね♡ ハッキリ言ってぱっつんにするともういくら誤魔化しても、男には見えなくなっちゃうけど、遥香ちゃんは女の子だもんね♡」
というと一気に前髪をジョキっと一直線に切られてしまった。
自分の前髪がサラッと下に落ち、顔が見えた時、自然と遥斗の目から涙が落ちてきた。
加奈「はい完成!! うんと可愛くしたからもう男に見える事はないよ!」
加奈が嬉しそうにしてると、後ろから莉奈達もやってきて、
「えーー!!かわいーいー!」
「メチャクチャ女の子になっちゃったじゃん!!」
「やっぱりここまで伸ばした甲斐があったわ」
莉奈「え?なになに? また泣いてんの?? いい加減受け入れろよ! 女々しいやつだなー! あっ!女の子だから泣くのは仕方ないか!ww」
香織「ほら自分の髪の毛見てごらんw 憧れのサラサラロングだよー! 」
美結「黙ってないで何か言いなよ!」
莉奈は遥斗の涙をハンカチで拭きながら「じゃあ、ちゃんとお姉ちゃんにお礼言おうね こんなに可愛くしてくれてありがとうございますって」
遥斗は涙を堪えながら「 可愛くしてくれて… ありがとうございます…」となんとか言った。
加奈「どういたしまして でも最初にも言った通り、毎日ちゃんと髪のお手入れはやるのよ! 詳しい事は莉奈に聞いてね」
と言って加奈さんは部屋から出て行き、そのまま遥斗達も店を後にした。