『魔の軍勢』
「レベルはどのくらいなの、坊や?」
「その呼び方……ムズムズするな。『LEVEL400』くらいだ」
「『LEVEL400』!?何をしたらそんなレベルになるのかしら。っていうかそれ本当?」
「本当だとも。何なら自慢の攻撃力を見せようか?」
そう言って隆二は拳を握る。
「いや、いいわ。本当だった場合この店が吹っ飛ぶからね」
「いい判断だ。そのくらいのレベルで使える魔法が載っている魔導書を教えてくれ」
隆二の注文に少し悩む素振りを見せたシェーネだが、店内のどこからか傷が多くある書物を持ってきた。
「他にも色々とあるけどめぼしい物はこれくらいかしらね。『LEVEL400』以上で使える魔導書が1つあるけど、欲しい?」
「ああ。頼む」
もう1つの魔導書は新品のように綺麗だった。
この対称的な2つの魔導書に共通していることは、字が読めないということだ。
隆二は読めない字があると自動的にその字の翻訳が視界に表示されるのだが、古代の書物や魔導書は読めたためしがない。
「値段は?」
「なしでいいわ。そこまでレベルが高い人がいなくて、誰も買わないから処理に困ってたのよ。存分に使ってあげて」
「ありがとう」
隆二が魔導書を受け取ったと同時に、ノンがシェーネを指差して言った。
「シェーネさんは『古代文字の解読』ができる一族なんですよ」
「え!?じゃあ、こういう魔導書の文字もわかるのか?」
「ふふん。できるわよ。あなたの魔導書を解読してあげましょうか?」
隆二が魔導書を渡す。
別に魔導書は読んだら魔法を使えるようになるので、解読してもらわなくてもいいのだが少し気になるので渡した。
「そうね、例えばこれ。『魔法名、《衝撃波》。攻撃の際、衝撃波が出る。魔法製作者カウスター・クーベル』だね」
「衝撃波か……。いいな、攻撃力が増しそうだ」
シェーネに魔導書を返してもらい、隆二はそれをストレージに閉まった。
その時。
隆二の視界に文字が表示された。
―イベント発生!
―イベント名『魔の軍勢』!
―場所は『ステルダム国』北東100キロメートル!
―『ステルダム国』到達予想時間は、およそ30分後!
(なんだ?確かこれはマップのイベントお知らせ機能だったけ?イベント名『魔の軍勢』って見るからにヤバイやつじゃないか)
隆二はマップを開き、北東に向かってマップをスライドさせた。
すると、マップ上におびただしい量の赤い点が現れた。
試しに、1つの赤い点をタップすると、
モンスター名『ゴーレム』
(つまり『魔の軍勢』ってのはモンスターの軍団ってトコか。見た感じだと、すげえ量がいるな)
そう考えた後に、隆二はさっき貰ったばっかりの魔導書をストレージから出した。
その魔導書をひたすら読んでいく。
「どうしたんですか?そんなに魔法が取得したかったんですか?」
ノンが横で聞いてくるのを、まあな、の一言で返した隆二はすごいスピードで魔法を取得していった。
『氷河』
大規模魔法。使用者のレベル・MPによって攻撃力増加。範囲内を瞬時に凍らす。
『風上』
支援魔法。風の力を利用し、使用者及び対象者を空中に浮かばせることができる。
『竜巻』
大規模魔法。竜巻を起こし、敵を殲滅する。操ることはほぼ不可能。
『メテオ』
超大規模殲滅魔法。落下地点の操作可能。
『LEVEL400』以上で使える魔法だと、どうしても大規模で攻撃力高めになるようだ。
火属性魔法から光魔法まで、短時間で訳の分からない文字を読みまくり、使用できる魔法も増えた時。
隆二の体内時計では20分ほどかかった感覚があった。隆二はストレージに魔導書を閉まった後、立ち上がった。
「ノン、お前はここにいろ。俺は東門に行ってくる」
「え?突然なんですか?それなら私も付いていきま……あっ!ちょっと!」
ノンが言い終わる前に隆二は魔導書屋を飛び出した。
「ああ!もう!あの人は!目的も言わずに行っちゃって!」
「あら~苦労しているのね」
シェーネが呑気に言ってくるが、それを聞き流しノンも後を追う。
「また来ます!」
「はいよ。行ってらっしゃいな」
***
隆二は飛んでいた。
しかし背に羽が生えたわけではなく、跳躍している時間が長いために飛んでいるように見えるのだ。
民家の屋根を足場にして跳躍しているため、町中に歩いている人達には迷惑はかけていない。
(『魔の軍勢』ってのは知らねえが、要は大量のモンスターの大群ってことだ。騎士団辺りが討伐に向かうだろうが、あいつらだけじゃ心もとないな。さっき魔法も覚えたし、奴らには実験台になってもらおう)
ステータスをフルに活かし、風が起こるほどの速さで隆二は走った。
時間はほんの数分もかからなかっただろう。
目的地が見えてきた。




