警備
「絶対に見合いなんかしたくない…」
部屋にあるソファーに座りながらエミリーの愚痴を聞く隆二達。
「大体!今までも見合いは早いと父上には言っていたはずなのに!」
「ま、まあ落ち着きなって。軽ーい気持ちで参加すればいいんだよ。一応名目上はパーティーなんだから」
隆二がなだめるも、エミリーはまだまだ怒り心頭のご様子だった。
「それでも!嫌なんです!さっき説明聞きました!?」
「お、おう」
「私とユリアちゃんの女2人に対して、各国から王子が10人以上来るんですよ!?」
エミリーは隆二に鼻の先がくっつくほど顔を近づけながら言う。
「ユリアちゃんって誰?」
鬼気迫ってくる表情で向かってくるエミリーから華麗に距離を取りながら、隆二はテミスに質問する。
「ユリア・ファング。ストラスフォード国王女です。今までも何度かお会いしたことがありますが、優しく落ち着いたご様子でした」
「落ち着いた様子ねえー……?」
「ですねー……?」
ノンと隆二は揃って、エミリーを見つめる。
「ジーーー……」
「な、何ですか?」
「いや、ステルダム国の王女とは大違いだなと思っただけだよ」
ノンはうんうんと頷き、テミスは止めるか止めまいかとオロオロしているが止めない所を見ると、隆二の発言を否定できないと彼女も思っているのだろう。
「私も頑張ればお淑やかになれま…」
「リュウジ殿達もこちらへ来てくれ。もう少しでユリア殿が来るようだ」
雑談?のようなエミリーの愚痴会をしていた隆二達に話しかけたのはマクルスだった。
それを聞いた隆二達はソファーから立ち部屋のドア付近へ移動する。
ガチャ!とドアが開く。
「お久しぶりでございます」
1度お辞儀をしてから部屋に入ってきた少女、ユリア・ファング。
白を基調としたドレスに、肘下まである白い手袋をしている。普段からこんなものを着ていたら疲れるので、後少しでパーティーが開かれるからこの服装なのだろう。
「あれ?ご存知ない方が2人いらっしゃるのですが…」
「ユリアちゃん!!」
エミリーがユリアに話しかける。
「エミリーちゃん!久しぶりですわね!」
「久しぶり!」
手を握り合って喜ぶ2人。
それを見たノンは、
「素晴らしい友情ですね?」
「友達いなかったのか?ぼっち?」
「違う」
隆二とノンがぼっちについて話している間にもパーティーの話はとんとん拍子に進んでいく。
話をまとめると、経済力のある国々から次期国王になる王子がパーティーに来るので、そこから料理を食べながら将来の相手を選ぶ、ということである。
「そこでリュウジさんとノンさんには我々の警護隊に参加願いたいということです」
オルリナは隆二とノンに警護配置図を渡す。
部屋の中央を囲うように配置された厳重警備は、これからくる者がいかに重要な者たちかがうかがえる。
「なんで私達まで巻き込まれるんですか?」
「ノン…。お前って結構ドライだよな」
「あの…リュウジさんとノンさんはエミリー様達の御付きみたいな感じですし、客人ですのでバイキング形式なので料理を食べてもいいですよ」
「します。警護します」
「おいぃ!?」
最初は警護に乗り気ではなかったノンは料理が食えると聞いて、警護を受け入れた。
こうして、王子アンドエミリー達を守るための警備が完成した。