謎の文字
その後、行動不能から復活したときにはもう夕暮れ時だったので、そのまま休むことにした隆二は、城に帰るエミリーとノンと別れの挨拶をして、ノンと部屋で話していた。
「そういえば、『限界突破』は結局手に入れたんですか?」
「ああ。言ってなかったな」
隆二は説明を始める。
オスカ・ヘンリーを倒し、仮面の男と別れた隆二は、そのまま部屋内を探し回った。
怪しい部分はすぐに見つかったが、これまでに見つからなかったのがおかしいほど目立っていたので、ある意味不気味だった。
怪しい部分というのは、壁に文字が彫られていたのである。
この部分はノンには伏せて話したが、その文字は『日本語』だったのである。
何故わかったのかというと、文字を見たらその横に、《言語》『日本語』と表示されたからである。
書かれていた文字は、これもまた一部分ノンに伏せて話したが、こう書かれていた。
『いつの日か来る神先家の者へ。限界突破は無に還しをこの文字へ叩き込めば手に入る。必ず、誰にも渡すな。それだけがヤツに勝つための希望だ』
これを書いた人物が誰か、という疑問については一度置いておくことにしよう。
隆二が気になったのは、何故この文を彫った人物は『無に還し』を知っていたのか。
『ヤツ』とは一体誰を、何を指すのか?
そして、『神先家』とは何か。
自分は『神崎』だ。『神先家』とは文字が違うがなぜか自分と関わりのあるようなものが感じられた。
疑問に思うことはあるが、その場にはそれ以上の情報はなく、結局『無に還し《ノンイレーズ》』を文字に叩き込んだ。
単なる物理的な破壊で壊れたのか、あるいは『無に還し』の不思議な力が張られていたかもしれない結界を破壊したのかはわからないが、砂煙がなくなったときには奥に続く通路があった。
先に進むと、祭壇のような場所に祀るかのように置かれている、『黄金の林檎』みたいなものがあった。
観察しても、黄金という他にはイレギュラーな部分がない林檎を、とりあえずストレージに入れ、ダンジョンを後にした。
これが、隆二が『限界突破』を手に入れた流れである。
「とまあ…そんなこんなで手に入れたのが、これだ」
ストレージから『黄金の林檎』を出す。
「ほほお……まさしく『黄金の林檎』ですね。食べるんですか?」
少し考える素振りを見せた隆二は、
「いや、今は食べないとくよ。本当に困ったときに食べようかな」
そう言ってまたストレージに収納する。
「さあ、そろそろ寝ようか」
「そうですね」
「…ノンさん。何故あなたは普通に俺のベットに入って来ているんですか?」
隆二の入っている布団に、頭を潜り込ませようとしていたノンは、
「だってこの宿屋、もう空き部屋がないんですよ。まさか、女の子を床に寝させようなんてことはしないですよね?」
意地悪そうなをして、こちらを見て笑ってくるノンに、考え考え抜いた隆二は、ノンに提案する。
「じゃあ、俺が床で布団敷いて寝るよ」
「もんどうむよう」
ぬっ!と出てきたノンの腕が隆二の腕を捕らえ、そのまま拘束する。
「一緒に寝ましょうね~!今日は疲れましたし」
「ああ…もう、これでいいよ」
何を言ってもダメそうだったので諦めた隆二が、甘んじて受けた。
多分お兄ちゃんに甘えているようなもんなんだろうな、と思って目を瞑った。




