役に立つ
その後も、世間話のようなことをしながら歩いていたらいつの間にか、隆二のいる宿屋に辿り着いた。
宿屋のおばさんに隆二のいる部屋を聞き出し、その部屋に向かう。
トントンとドアをノックするが、中から反応がない。
何度かしてみたが、やはり反応がなかったので、部屋に突入する。
そこには、スヤスヤという言葉が合うほど安らかに眠っている隆二の姿があった。
隆二も流石に疲れたのであろう。
普段は飄々とした態度だが、寝ている姿はあどけないもので、3人の顔が思わず緩む。
「起こすのも悪いし、このまま起きるのを待っとこうか?」
エミリーの小さい声の提案に他の2人が頷く。
そこで。
「んんん…!」
隆二が唸ったと思ったら、パッ!と目を見開いた。
「んあ?…ああ、エミリーさん達か。どうだった?騎士団は」
寝起きとは思えないほどはっきりとした言葉で質問してくる隆二に、ノンは、
「起こしちゃいました?結構コソコソしていたと思っていたんですが」
「俺、結構眠りが浅い方なんだよ」
本当は前の世界の仕事の関係で、ずっと襲撃対象を見張っていたときに、仲間に見張りを任せて何かアクションがあったら即座に起きれるように訓練したからなのである。
「騎士団団長からの伝言です。明日ストラスフォード国城内で開かれる集会みたいなものが開かれるときに、城に来てほしいそうです」
「あーやっぱそんな感じ?まあ、あんな盛大に爆破したらそうなるか」
「あ、そう言えば。師匠なんですか?あの『白い爆発』を引き起こした人は」
「そうだよ。俺のエクストラスキルだよ。詳しくは俺もわかんないから説明できないけど」
そこで、テミスは異変に気付いた。
「リュウジさん。何で体を動かさないんですか?」
「エクストラスキルを使用した後は、何かペナルティみたいのがあって動けなくなるんだよ。ちなみに今回は4時間くらい動けない」
ほら、と言って体に力を入れる素振りをエミリー達に見せる。
「本当ですね…。じゃあ師匠はこの状態で4時間動けないっていうことは、城下町にお出かけもできないんですね」
「そゆこと」
エミリーは傍から見ても落ち込んでいるとわかるほど、肩を落としていた。
多分、隆二と一緒に城下町の観光をしたかったんだろう。
「俺のことは気にしなくてもいいから、城下町を見ておいでよ。ノンはあんまり見てないから一緒に連れってってやってくれてもいいか?」
「いいですよ。じゃあもう行きますか?」
「はい。特に準備するものもないので」
エミリーはテミスの返事とノンが頷いたのを見て、部屋を後にする。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
隆二が言ったあと、テミスとノンもエミリーの後に続いて出ていった。
いや、ノンだけはドアノブを持ったまま停止した。
「どうした?ノン」
「…ねえ、リュウジさん。私は役に立ちましたか?」
「突然どうした?」
ドアノブを放して真正面から隆二を見るノンは、
「事の発端は私がリュウジさんに依頼したことから始まりました。それでリュウジさんを巻き込んだのに、何もできていない感じがしていまして…」
「いや、多分ノンが俺に依頼を出さなくても、俺は否応なく巻き込まれていたよ。それに、ノンは十分役に立っていたぞ」
「どこらへんがですか?」
「ノンは俺が知らない魔法とか、モンスターとかもいっぱい知っているし、多分エミリーさん達も助かったと思うよ」
それを聞いたノンは、パァァ!という表現が似合うほど喜んだ。
「本当ですか!!役に立ったんですね!?」
「ああ。胸を張っていい。十分ノンは凄いよ」
「ありがとうございます!」
そう言うと、ノンは上機嫌のままドアを開いて、いってきます、と言ってから部屋を後にした。




