戦いの終了
ある暗闇でフクロウの目から映し出される映像を見ながら、頭にサングラスをかけた男は言った。
「まさか『無に還し』をに加え、『聖女』が現れるとはね。君はこれも予想していたのかな?」
彼のいる空間には、彼以外には誰もいないのだが、どこからか声が聞こえた。
『さあな。まあ、全て計画通りではあるが』
男とも女とも聞こえる微妙な高さの声が、男の質問に答えた。
状況から考えるに、聞こえてくる性別不明の声は『通信魔法』を使っているのだろう。
「『世界樹』が出現した時点で怪しいと思っていたが、やっぱり生きていたんだね」
『やはりお前にはばれたか。まあ、いつかは広まるからばれてもいいんだがな。しかし、まさかお前までもが『無に還し』を狙っているとは思わなかったが』
「なんのことかな?」
『気づかないとでも思ったか?『無に還し』とオスカ・ヘンリーの戦い後に、オスカ・ヘンリーを回収した仮面の男はお前の部下だろう?『グレア・バーリン』?』
突然名を呼ばれた男、グレア・バーリンはニヤリと笑った。
「お互いに動向は筒抜けじゃないか。いやはや腹の探り合いはよした方がいいようだね?『カウスター・クーベル』?」
性別不明の声の正体、カウスター・クーベルは、そうだな、と返した。
腹の探り合いというのは、何も生まない。今のようなやり取りを多くしてきた者ほど熟知していることだ。
カウスター・クーベルはただし、と付け足した。
『私の計画を邪魔するのであるならば、貴様も消すぞ』
***
『白い爆発』は今までよりかは威力が低くなっているものの、小規模とは言い難かった。
当然、近くにいたエミリー達も巻き込まれたはずだが、
「間一髪ですね」
ノンが即座に空間防御を展開したおかげで無傷にすんだ。
まあ、隆二が手加減せず拳で殴っていたらその空間防御も、紙くずのように拭き飛んだだろうが。
「ごめんな。手加減をするのが難しくて」
そう言いながら、吹き飛んだルイスに向かって歩き出す隆二。
ルイスの体は爆発前に存在していた位置から、何十メートルも移動していた。
ルイスまであと数メートル、というところまで来たとき。
カッ!と眩い光が出現した。
突然の事に、隆二の目が眩む。
「やっぱり、お前か」
光が消えて後に立っていた男を見て、隆二は言った。
「彼も回収しなければいけないんでね。倒す必要がなくなって助かったよ」
仮面の男はそう言った。
「ソイツもさっきの狼男と同じように、仲間の元へ返すのか?」
「いや、彼はそこまで重要じゃないから、こちらで預かるよ。『肉体再生』のエクストラスキルは結構希少だから研究もしたいしね」
それを聞いた隆二は、
「そうか、それは…」
残念だったな、と言った。
―通知。
―ルイス・ハーンのステータス及びスキルを入手しました。
―『消滅の創生』の《現在使用可能ステータス》に追加しますか?
「ソイツのスキルは今、俺が持っている」
仮面の男は一瞬、仮面の奥で表情を消した気配がした。
「そうか…それは確かに残念だ。まあ、彼は回収するよ」
「どうぞ。俺はソイツに用は無いからな。あ、ちょっと待て」
「なんだい?」
隆二はルイスの手に握られているものを指さす。
「その短剣みたいなやつは置いていってくれないか?丁度そういうのを探していたとこだったんだ」
「いいよ。ほら」
ホイッとルイスの手から奪い取ったハルパーを隆二に投げる。
隆二が受け止めたのを見た仮面の男は、再びカッ!と光を発生させ、消えた。
「さっきの人は誰なんですか?」
「今のところ敵でも味方でもない微妙な立ち位置のヤツかな」
隆二はノンの質問に答えたあと、さて、と付け足す。
「俺は先に宿屋に行くから。宿屋の場所は、ノンと泊まった場所ね」
「え。ワープで私達も宿屋に送ってください!」
「残念。それは無理だ」
「?」
エミリー達は怪訝な顔をしている。
「今、多分この国の騎士団のような人達がここに向かっている」
隆二は自分の視界にあるマップの赤い点を見ながら言った。
「え!?なんで騎士団なんかが来るんですか!?」
「そりゃあ、あんなド派手に戦闘したら騎士団も駆けつけてくるだろう。というわけで、俺にも話を聞くってんなら宿屋に来てくれって伝えてくれ」
「ちょ!?1人だけ抜け駆けなんてズルいですよ!!」
「理由は後で説明するから」
エミリー達が止めようとするも、隆二はワープを使って消えてしまった。




